医学分野において世界最高峰の権威を誇る米「ラスカー賞」の今年度の受賞者が9日発表され、基礎医学研究部門で脳内の覚醒物質を発見した筑波大の柳沢正史教授(66)、臨床医学研究部門で革新的な血友病治療薬を開発した服部有宏さん(66)、北沢剛久さん(57)、井川智之さん(49)の日本人4人が選ばれた。日本人の受賞は2014年の森和俊氏以来、12年ぶりの快挙となる。
睡眠の本質に迫る基礎研究の金字塔
基礎医学部門で受賞を果たした柳沢氏は、脳内で覚醒状態を維持する神経伝達物質「オレキシン」を発見。マウスを用いた研究を通じ、オレキシンの欠乏が、突然の強烈な眠気に襲われる難治性の睡眠障害「ナルコレプシー」を引き起こす病因であることを世界に先駆けて解明した。
イヌの遺伝学解析から同物質の受容体構造を突き止めた米スタンフォード大のエマニュエル・ミニョー教授との共同受賞となる。
柳沢氏らの発見は、解明が進んでいなかった睡眠と覚醒の調節メカニズムに分子レベルでの知見をもたらした。この成果は睡眠科学の発展を促しただけでなく、従来の睡眠薬とは異なる作用機序を持つ「オレキシン受容体拮抗薬」の開発へとつながり、不眠症治療に新たな選択肢を提供するなど、臨床現場にも実質的な影響を与えている。
日本の創薬科学が誇る臨床成果
一方、臨床医学部門では、中外製薬の元シニアフェロー服部有宏さん、同社研究本部の北沢剛久副本部長、井川智之本部長は、血が止まりにくい病気である血友病の治療薬の開発が高く評価された。患者のQOL(生活の質)を著しく向上させ、負担を飛躍的に軽減したこの技術は、日本の産業界・創薬科学が世界に誇る研究開発力の真価を証明するものとなった。
ノーベル賞へ高まる期待
ラスカー賞は「アメリカのノーベル賞」とも称され、将来のノーベル生理学・医学賞を占う最も重要な登竜門として知られる。過去には山中伸弥氏や利根川進氏をはじめ、医学界に歴史的足跡を残した日本の偉人たちが名を連ねてきた。
基礎・臨床の両輪で同時に提示された今回の日本人4人の快挙は、日本の科学技術と創薬研究が持つ底力を改めて世界へと強く印象付けることとなった。
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