中国 監視映像が捉えた異様な暴走

中国でまた「社会報復」か 車が商業施設へ突入【動画あり】

2026/09/22
更新: 2026/09/22

中国では近年、何の関係もない市民を巻き込む凶悪事件が相次ぎ、「社会への報復」と呼ばれる現象が大きな不安を広げている。

今回も河北省保定市で、乗用車が人をはね、商業施設へ突っ込む事件が起きた。

本紙の取材に応じた現地住民は、動機は分からないものの「社会への報復だ」と断じた。一方、地元警察は「運転操作を誤った事故」と発表している。

本当に事故だったのか。それとも市民が疑う「社会への報復」だったのか。中国ではこれまでにも同様の事件が相次いできたが、その動機や背景の全容は明らかにされてこなかった。今回も真相が表に出るかは分からない。

相次ぐ無差別的な事件を目の当たりにしてきただけに、市民が今回も「またか」と疑うこと自体が、中国社会に漂う不安の深さを物語っている。

 

社会報復の暴走車事件現場に手向けられた花束。SUVが市民らを次々とはね、35人が死亡した(中国・広東省珠海市/2024年11月13日撮影、HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

 

暴走車

事件は9月20日午後5時22分ごろ、河北省保定市の商業施設「北国先天下」で起きた。

現場は地元でも比較的高級な商業施設として知られる。本紙の取材に応じた住民の小王さん(仮名)によると、政府機関が職員らに支給する商品券も、この施設での買い物に使われているという。

公開された監視カメラ映像には、車が商業施設へ突っ込むまでの一部始終が記録されていた。

後に暴走車へと変貌する白い乗用車は当初、商業施設の入口前に、車体前方を建物側へ向けて止まっていた。

午後5時22分ごろ、車は突然バックを始めた。後ろに止まっていた複数の電動バイクを次々となぎ倒し、そのうち1台に乗っていた女性も巻き込んだ。女性は直後に立ち上がり、慌ててその場から逃げた。

車はそのまま道路へ飛び出し、中央分離帯の柵と別の乗用車に衝突して、いったん停止した。

しかし、そこで終わらなかった。

しばらくすると車は再び来た方向へ走り始め、先ほど倒した電動バイクの上を再び通過。そのまま加速し、商業施設の入口を突き破って店内へ突っ込んだ。入口付近でも人が巻き込まれた可能性がある。

現場にいた男性は「バックした後、また加速して、そのまま中へ入っていった」と驚いた様子で話している。

事件後の映像には、破壊された入口や散乱するガラス、倒れた人の姿が映っている。車は入口を突破した後も施設内をかなりの距離走ったとみられ、最後は柱付近に激突して停止した。車体前部は原形をとどめないほど大きく壊れており、衝突の激しさを物語っている。

 

白い乗用車が道路へ飛び出した後、再び来た道を戻り、加速して商業施設に突っ込んだ(中国・河北省保定市、動画より/2026年9月20日)

 

市民は「社会への報復」 当局は「事故」

小王さんは、動機は分からないものの「社会への報復だ」とみている。

これに対し、現地警察は「運転操作を誤り、車が制御不能になった」と発表。2人が軽傷を負い、飲酒・薬物運転は否定された。

しかし、監視カメラには、車がバックして人や電動バイクを巻き込み、道路上で別の車などに衝突して一度停止した後、再び商業施設へ向かって加速する様子が映っている。

映像を見たネットユーザーからは「どう見ても操作ミスには見えない」「『操作ミス』の意味が広すぎる」と、当局発表を疑問視する声が相次いだ。

 

(乗用車が商業施設に突っ込んだ事件現場。中国・河北省保定市、2026年9月20日)

 

撮影を止め、画像削除も要求

事件後の対応にも疑問が出ている。

小王さんによると、現場には地元警察だけでなく、国家安全関係者や河北省政府の関係者も姿を見せたという。

その後、警察は集まった市民を現場から遠ざけ、撮影を制止。一部の市民は、スマートフォンに保存した写真や動画を削除するよう求められたという。

 

乗用車が商業施設に突っ込んだ事件現場(中国・河北省保定市、動画より/2026年9月20日)

 

相次ぐ「社会への報復」

中国では、無関係の市民を突然巻き込む凶悪事件が後を絶たない。過去2か月だけでも各地で相次いでいる。

8月17日、貴州省錦屏県の市場付近で48歳の男がSUVを暴走させ、複数の通行人が負傷した。ネット上では、運転手が以前から当局に陳情しており、意図的な報復だったとの情報も出た。

翌18日には広東省汕頭市で男が刃物を持って通行人を襲い、市民らに取り押さえられた。19日には青海省西寧市で男が刃物で複数の通行人を襲った。

25日には四川省宜賓市で、男が2本の刃物を手に人通りの多い場所を歩き回り、警察に取り押さえられた。

9月14日には広州市の大学城で、男が女性ばかりを刃物で襲い、少なくとも3人が負傷した。傷は目や顔に集中しており、負傷者は顔から大量の血を流した。目や顔を集中的に襲う異常な犯行に、現場は悲鳴と混乱に包まれた。

今回も当局の説明通り単なる「操作ミス」だったのか、それとも市民が疑う「社会への報復」だったのか。

同様の事件が繰り返されながら、その背景や動機の全容は明らかにされてこなかった。「また社会への報復ではないか」。いつ、どこで、何の関係もない人が突然巻き込まれるか分からない恐怖が、中国社会に重く漂っている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!