中国における国家ぐるみの臓器収奪をめぐり制裁を科す法案が先月28日、米上院を通過し、下院に送られることになった。
法案は「法輪功および臓器収奪被害者保護法案(S.4009)」。共和、民主両党の議員12人が共同提案者となっており、上院では全会一致で可決された。
臓器の「オンデマンドシステム」
臓器収奪とは、本人の同意なく臓器を強制的に摘出する行為を指し、場合によっては被害者が死亡することもある。
中国での臓器収奪をめぐっては、2006年の段階から内部告発者らが警鐘を鳴らしてきた。2019年、英ロンドンを拠点とする民間団体「中国法廷(China Tribunal)」は1年にわたる調査を終え、中国で臓器収奪が長年にわたり「相当な規模」で行われてきたと裁定を下した。
同法廷は、臓器収奪の主な被害者として法輪功学習者を挙げた。また、中国・新疆ウイグル自治区の強制労働所に拘束されたウイグル人についても、臓器収奪の対象となる危険性があると指摘している。
法輪功は「真善忍」を基本理念とし、ヨガや太極拳に似た心身修養法で、1992年に中国で一般に紹介された。1990年代末までには、中国国内で7000万〜1億人が愛好していたとされる。
中国共産党政権は、法輪功の人気ぶりを政権への「脅威」とみなし、1999年に当時の共産党トップ・江沢民が法輪功への迫害政策を開始した。それ以降、中国国内にいる法輪功学習者は残酷な迫害を受けている。
迫害を受けた生存者らは、恣意的な拘束や強制労働、拘束中に受けた残酷な拷問などについて証言している。
一方、以降中国の臓器移植産業は拡大を続けている。移植までの待機期間が数日程度にとどまる場合もあり、国際社会では数年かかる可能性があることと対照的となっている。
医療専門家による非政府団体「臓器の強制摘出に反対する医師会 (DAFOH)」のトルステン・トレイ事務局長は、こうした仕組みを「オンデマンドシステム」と表現している。
トレイ氏によれば、特定の臓器を求める依頼が入ると、血液型や組織適合性などが一致する「ドナー」を探す仕組みが存在するという。同氏は、「ドナー」には「良心の囚人」が含まれている可能性があると指摘している。
海外の「加担」が懸念される
トレイ氏は、今回の法案が重要なのは、米国民が中国で移植を受けるために渡航することで、結果的に臓器収奪に加担する可能性があるためだと指摘する。
同氏は、米国人が中国に渡航して移植を受ければ、「良心の囚人」とされる人物の殺害に関与することになりかねないと語った。そのため、米国民が中国での移植を受けるよう誘引されることを防ぐことにつながるとして、法整備を支持している。
法案は、共和党のテッド・クルーズ上院議員と民主党のジェフ・マークリー上院議員が主導した。
法案では、中国当局が臓器収奪が行われているとの疑惑が長年存在していると指摘。一方、米政府は現時点で、この問題について正式な評価を行っていないとしている。
また、中共政権は国際社会から繰り返し説明を求められているにもかかわらず、「完全で信頼でき、独立して検証可能な回答」を示していないとしている。
法案は米政府に対し、「良心の囚人」からの臓器収奪を含む、違法、強制的、本人の同意を得ていない、あるいは不透明な臓器の調達・移植行為を非難するよう求めている。
関与者に制裁 国務省に調査要求
法案が成立すれば、臓器収奪に関与あるいは加担した人物に制裁を科す。制裁対象者の米国への入国を禁止するとともに、米国内での取引を制限する。
制裁に違反した場合、民事上は最高25万ドル(約3700万円)、刑事上は最高100万ドル(約1億5000万円)の罰金が科されるほか、最高20年の禁錮刑が科される可能性がある。
さらに法案は、国務省に調査を指示する。保健福祉省長官、国立衛生研究所(NIH)所長、情報機関の関係責任者らから意見を聴取することも求めている。
法案成立から1年以内に、国務長官は中国の臓器移植制度や政策について議会に報告する。報告では、中国当局が組織的な臓器収奪を行っているかどうかを検証するほか、摘出された臓器の出所や入手までの期間、その期間が中国の制度上、現実的に可能なのかについても調査する。
過去10年間に米政府が中国の臓器移植制度に対して支出した補助金についても、報告書に記載する。
さらに、臓器収奪が大規模に行われていると判断された場合、それが「残虐行為(atrocity)」に該当するかどうかについて、米当局が評価することになる。
クルーズ上院議員「信教の自由と基本的人権への攻撃」
クルーズ上院議員は、中国共産党が「国家ぐるみの残虐な臓器摘出産業を通じ、法輪功学習者を標的にし続けている」と指摘。「こうした残虐行為は、信教の自由と基本的人権に対する攻撃だ」と述べた。
ほかの法案支持議員からも、同様の発言が相次いだ。
共和党のトッド・ヤング上院議員は、法案の可決について「中共による継続的な人権侵害を前に、信教の自由と人間の尊厳を守るための重要な一歩だ」と述べた。
共和党のジェームズ・ランクフォード上院議員は、「良心の囚人」から臓器を摘出する行為を「邪悪である」と指弾。「米国は、これは間違っていると明確に表明し、その言葉を結果を伴う措置で裏付けるべきだ」と声明で述べた。
その上で、「中共が世界から無視させようとしている被害者のために声を上げたい」と強調した。
米国在住の法輪功学習者も署名活動
米国市民でメリーランド州在住の会計士、アリサ・ジョウさんは、6月から上院法案への支持を呼びかけてきた。9月までに、友人らとともに約1万2000人の署名を集めた。
ジョウさんによると、署名活動を通じて初めてこの問題を知った人も多く、反応は「圧倒的に肯定的」だったという。
4月には、中国当局が数カ月にわたって監視していた法輪功学習者らへの捜査の後、ジョウさんの母親、ワン・ヨウメイさんが中国当局に拘束された。
署名した人の中には、連絡先を残し、母親の状況について今後も知らせてほしいとジョウさんに伝えた人もいたという。
ジョウさんはまた、勤務先の上司が公表した書簡を紹介した。その書簡で上司は、中国当局による迫害について「これまで聞いたことも、想像したこともないほど卑劣な行為」と指摘し、米国がこうした行為を非難する先頭に立つよう求めた。
上司は、米国民を対象に調査を行えば、「100%が賛成するだろう」と述べたという。
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