日系企業の中国離れ加速 進出企業数は過去最低

2026/10/06
更新: 2026/10/06

中国経済の減速や関税リスクの高まり、人件費・製造コストの上昇に加え、中国企業との競争激化が日系企業の収益を圧迫している。中国で事業を展開する日系企業の数は過去最低となった。日中間の外交的な対立が続くなか、中国事業の縮小や撤退がさらに進むと見られる。

帝国データバンクによると、今年6月時点で中国に進出する日系企業は1万118社となり、前回調査の2024年6月から22%減少した。2012年のピーク時と比べると約30%減で、同社が2010年に調査を始めて以降、最も少ない水準となった。

相次ぐ日系企業の中国撤退

政治リスク専門コンサルティング会社ユーラシア・グループのアナリスト、ジェレミー・チャン氏は、一部の日系企業は以前から中国事業の縮小を計画していたが、日中関係の急速な悪化を受け、撤退計画を急ぐようになっていると指摘した。

帝国データバンクは先週公表した報告書で、日中間の外交摩擦が続けば、中国事業の縮小や撤退を迫られる日系企業がさらに増える可能性があると分析した。

関税リスクや人件費、製造コストの上昇に加え、中国企業との競争激化が日系企業の利益を大きく圧迫している。このため、一部企業は事業を縮小したり、中国での事業を終了したりしている。完全撤退には至らなくても、中国への依存度を引き下げる企業も増えている。

高市早苗首相が昨年11月、国会で台湾有事が武力行使を伴う場合には「存立危機事態」になり得るとの認識を示して以降、日中関係は緊張が続いている。中国共産党当局はその後、日本企業向けの重要鉱物の輸出を制限し、中国人に日本への渡航を控えるよう呼びかけた。

富士通総研の首席政策エコノミスト、マーティン・シュルツ氏は、米国の関税措置や中国製品に対する消費者の反発の高まりに加え、インド市場の拡大も、中国に偏っていた日系企業の事業や投資の分散を後押ししていると指摘した。

帝国データバンクによると、過去2年間で4137社の日系企業が中国市場から完全に撤退し、過去最多となった。一方、同じ期間に子会社や工場、駐在員事務所などを通じて中国市場に新規進出した企業は1221社にとどまり、過去最低だった。

中国での安全懸念 日系企業は米国市場へ

マネックスグループの専門役員、イェスパー・コール氏は、日系企業が米国市場への依存を強める一方、中国市場への依存度を徐々に下げていると指摘した。

コール氏の試算によると、年初から現在まで、東証株価指数採用企業が中国市場から得る利益の割合は15%未満に低下し、2020年の23%を大きく下回った。一方、米国市場から得る利益の割合は、2020年の25%から35%に上昇した。

コール氏は、米国が日本企業に再工業化への参加を積極的に働きかける一方、中共は国内生産を全面的に強化する「中国製造」モデルへ傾斜していると分析した。

また、中国で相次ぐ日本人の拘束も、日本企業が社員を現地に派遣する際の不安を強めている。報道によると、8月には日本の大手企業幹部を含む複数の日本人が中国で拘束された。拘束理由は、軍民両用物資の輸出管理規定に違反した疑いとされている。

チャン氏は、中国で歓迎されていないと感じる日系企業や社員が増え、安全面への不安も強まっていると述べた。

日本貿易振興機構(JETRO)が今年4月に発表した報告書でも、日本企業の間で、中国事業の拡大に慎重な姿勢が強まっていることが分かった。

帝国データバンクの報告書が公表された翌日、中共国務院副総理の何立峰は、日本企業の中国での事業展開を歓迎すると表明し、中国への投資を呼びかけるとともに、日中間の経済・貿易協力を進める考えを示した。

シンガポール南洋理工大学の古賀慶教授は、自動車メーカーや部品メーカー、輸出型の製造企業が中国事業を縮小する可能性が最も高いと分析した。一方、現地化が進み、中国企業と競争力のある企業、特に医療機器や精密機器メーカーは、中国市場に残る可能性が高いという。

中国から完全撤退・事業縮小した主な日系企業

近年、中国市場から完全に撤退した大手日系企業には、三菱自動車とスズキがある。

三菱自動車は2023年、中国での現地生産を終了し、広汽三菱の持ち分を広汽集団に譲渡した。2025年には瀋陽航天三菱汽車発動機製造の合弁事業も終了し、エンジン事業から撤退した。これにより、中国での自動車製造事業からほぼ全面的に撤退した。

スズキは2018年に中国での自動車生産から撤退し、長安汽車や昌河汽車との合弁関係を解消した。その後、海外事業の成長市場としてインドなどに重点を移している。

中国での一部事業から撤退した大手日系企業には、日本製鉄や三菱商事がある。

日本製鉄は2024年、宝鋼と20年間続けてきた自動車用鋼板の合弁事業から撤退し、保有していた50%の株式をすべて宝鋼に譲渡した。これにより、日本製鉄の中国での鉄鋼生産能力は約70%減少した。

三菱商事は2025年、中国で手掛けていた精製金属や鉱物資源の現物取引を停止し、関連事業を終了した。

このほか近年、中国事業の一部撤退や大幅な縮小を進め、中国のサプライチェーンへの依存を減らしている日系企業には、ホンダ、日産自動車、パナソニック エナジーなどがある。

李平