取材を受ける松原仁衆議院議員。26日、衆議院議員会館にて撮影(黎奈/大紀元)

<独占インタビュー>松原仁議員 菅総理訪米までに人権決議案の成立を

菅総理訪米を間近に控え、国会では人権外交を推進しようとする動きが党派を超えて広がっている。超党派の11議員からなる日本版マグニツキー法成立を目指す「人権外交を超党派で考える議員連盟」副会長を務める立憲民主党・松原仁衆議院議員は、長年、北朝鮮による拉致問題に取り組み、中国の人権活動を支持してきた。人権外交を進めるうえで、意見やイデオロギーが異なる会派は意見をどう一致させていくのか。そして、松原議員はどのような信念でこの問題に取り組んでいるのか。大紀元記者は26日、議員会館で松原議員から直接意見を伺った。

―人権問題に取り組むきっかけとは。

私は北朝鮮による日本人拉致の問題とともに、ウイグルの人権問題についても10年以上前から関心を持っており、チベットの問題にもかねてから注視していた。今から13年ほど前にインドに行き、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王に会見し、翌年、ダライ・ラマ法王の来日時には、中国によるチベットの人権抑圧の問題について話し合っている。私は、物質的な豊かさも重要だが、政治の最終的な局面においては、人権を護ることはそれ以上に重要であるという認識を持っている。

この度の香港の民主派弾圧の問題は大きなターンニングポイントとなったと思う。香港で人権抑圧が行われていることを誰もが目に見える形でメディアやSNSが発信し、国際社会に周知することとなった。周庭さんが収監される姿などから、香港にあった自由と人権が迫害されていることが映像で伝わってきた。香港はアジア三大金融マーケットの一つであったが、その香港で人権弾圧が起きていることは非常に衝撃的だった。

今ここにある人権弾圧を、われわれはまさに香港という国際都市で認識した。香港で起きていることは、ウイグルでも起こっていてもおかしくないと推測できる。人権を尊重するという、本来の政治家の本分からすると看過できない問題がある。そこが原点だ。

菅総理訪米に合わせて決議案を提出するのか。

新疆ウイグルにおける深刻な人権侵害に対して非難決議案を提出したいと思っている。日本の議会では、国会決議は多数決ではなく、全議員による全会一致ということが、衆議院や参議院での決議の基本的な合意事項になっている。だから反対する議員が一人、もしくは一会派でもいると国会決議ができないかもしれない。

また、決議案は、各政党の国会対策委員会が合意したものでないと出せないという慣例になっていて、国会対策委員会の委員長の思惑が大きく働く。しかし、今回は何としても決議案を提出したいと思う。

訪米に間に合うのか。

訪米前に何とか国会決議までこぎつけたい。全会派が了解するような決議案にもっていき、全会派が納得するようなものにしたい。そのような決議があれば菅総理も日米首脳会談の場で、民主主義国家の一員として「国会でこのような決議があった」と胸を張って言えるのではないだろうか。

ジェノサイド認定について。

ジェノサイド認定を行政が行ったのは米国だけ。カナダの議会では反対票ゼロでジェノサイド認定決議案が可決されたが、それは議会が可決したのであって、カナダは政府としてジェノサイド認定していない。ただし、認定していなくても、強制労働が上流工程で行われている企業の産品は買わないし使わない、というデューデリジェンス(企業倫理)の方針を打ち出している。

英国では上院はジェノサイド認定しようとしたが、下院では上院とは異なる部分があったようだ。しかし、英国政府は中国の新疆ウイグル自治区での強制労働が関与していると疑われる原材料についてはサプライチェーンから排除すると、外相が発表している。政府は手足を縛られたくないため、政府がジェノサイド認定しないで議会がするというのが西側諸国の流れになっている。

―議会の認定と政府の認定でどのような違いが出てくるのか。

国家が認定すると、様々な制裁措置の発動をするが、議会による決議の場合は、国がそれを受けてどのような政策を行うかの判断を行う。米国は政府が認定を行ったから、綿花などの輸入禁止措置をとった。

国民の代表である議会が国としての態度をしっかり表明すれば、政府も相応の対策を取らなければならない。議会の議決は政府が行動する際の一定の理由付けになる。一方で、政府には様々なアローワンスを残しておきたいという思惑もあろう。まず議会でジェノサイド認定を行う。政府が認定することは次のステップになる。

―政党間で意見の違いはあるか。

国会では、政党と政党の主張がぶつかり合い、どうしても合意に達することができない議論もあるが、われわれは、このような人権の問題については与党も野党もないと考えている。与党・自由民主党も努力しているし、野党も奮闘しているので、協力して決議案をまとめていこうという動きになっている。

―人権抑圧国家について。

世界で最も人権を抑圧する国家について、まず現状把握が重要である。民族的、宗教的抑圧型の人権弾圧と、権力維持型のものがある。様々な形態の抑圧があるなか、幅広く対処していくことが必要だ。具体的には言えないが、宗教的抑圧についても人権問題として極めて重要であると考えている。

中国国内で(外国企業に対する)ボイコットが起こるという懸念もある。

最近、中国国内で欧米ブランドのH&Mやナイキに対する不買運動が起きている。巨大なマーケットをもっていることは大きなバーゲニング・パワー(国際間の取引における交渉能力)につながる。いっぽう、ブランドにどうしてもその企業の商品がほしいと多くの消費者が思うほどの魅力があれば力関係は逆になる。例えば、中国はレアメタルを他国との交渉材料にしている。しかし、中国で採れないものがあればそれは逆になる。

政治と経済の絡み合いは極めて重要だ。例えば、高度なITやAI開発技術はアメリカにある。特定の国でしか生産できない製品や資源は強力な交渉のカードになりうる。昔は中近東の石油がカードになっていた。バーゲニング・パワーをもっている側が不買運動をすることは一つの戦術だが、逆のこともありうる。

―日本でも対策はあるのか。

日本では経済産業省がデューデリジェンスに関する行動指針を発表しており、外務省には「ビジネスと人権」の行動計画というものがある。強制労働で作られた産品はダメですよ、というもの。人権を重視しない生産プロセスには反対すべきである、ということが今、盛んに言われている。

これからは、強制労働の関与が疑われる産品を使用する企業はブランドイメージが落ちていく。強制労働を伴う製品を排除すると、結果として売上が減少することを懸念する企業があったとしても、「そのような企業の製品は買わない」という人も増えると思う。どちらが将来的に良い結果につながるのかという判断を、長期的な視点で見ていく必要がある。産業界も、利益ばかり追求するのではなく、人類の持続的な繁栄という観点から、人権を尊重する製造プロセスについて考えていかなければならないと思う。

(聞き手・王文亮)