JPモルガン(総合金融サービス会社)の最高経営責任者(CEO)ジェイミー・ダイモン氏は、AIが多くの産業で採用の構図を変える可能性があるとしつつ、適切な能力を身につければ仕事の機会はむしろ広がると指摘した。
ダイモン氏は12月7日、米FOXニュースのインタビューで「AIは一部の職を奪うが、だからといって人々が働く場所を失うわけではない」と述べた。その上「次の仕事は今より良いものになる可能性もある。ただし、その仕事をこなすための力を学ばなければならない」と付け加えた。
同氏は、専門的なスキルを持つ人材の価値は今後も揺らがないと強調する。AIによる職への影響を懸念する人々に対しては、「批判的思考を鍛えること、スキルを学ぶこと、情緒的知性(EQ)を高めることだ。会議での振る舞い方、伝え方、書き方を学べば、仕事の機会はいくらでもある」と提案した。
この見方には他の専門家も同意している。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEOマット・ガーマン氏は、8月のCNBC番組で「情報を分析し、結論を導く批判的思考こそ、AI時代に成功する鍵だ」と述べた。
研究でも、AIが広範な事務作業や技能業務はこなせても、細やかな判断はまだできないことが示されている。
ガーマン氏は「創造性、批判的思考、柔軟性が求められる。新しいことを学び、適応する力は、どんな専門スキルにも匹敵すると思っている」と指摘した。
また、コミュニケーション能力やEQは現代の職場で成功するうえで重要な要素とされる。自分の考えをわかりやすく伝え、同僚と良好な関係を築ける人は、職場で自然と影響力を持つようになる。
AIの進化に伴い、人間の仕事が奪われるのではないかとの懸念も高まっている。若年層の失業率上昇の一因にAIを挙げる専門家もいる。AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏は5月、AIが今後5年間でホワイトカラーの業務の半数を置き換える可能性があると警告した。
マッキンゼー・グローバル研究所が11月に発表した分析では、AIとAIを搭載したロボットはすでにアメリカの仕事の約57%を実行できる状態にある。大規模な自動化の時代に入り、人間のスキルの使われ方は大きく変わると予測している。
報告書によると、AIで代替可能な業務には、パラリーガル(法律に関する専門的なサポート)、事務サポート、オフィス職、そして一部のプログラミング作業などが含まれる。これらはAIソフトウェアによる自動化が進みやすい領域である。
ダイモン氏は、AIには適切な規制が必要だと述べた。AIも航空機、医薬品、自動車と同じで、利点がある一方で欠点もある。あらゆる技術は悪用されうると強調した。
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