中国経済の低迷と失業率の高止まりが続くなか、アメリカ駐武漢総領事館が年収8万2439元(約169万円)の清掃員を募集したところ、明快な給与条件と低めの学歴要件が中国SNSで大きな反響を呼んだ。求人の透明性や待遇水準は、キヤノン工場の手厚い退職補償とも重ね合わされ、外資企業と中国内資企業の賃金・補償格差をめぐる議論を再燃させている。
アメリカ駐武漢総領事館は12月22日午後、公式微博で投稿し、現在5人の清掃員を募集していると発表した。関連職種の年収は8万2439元(約169万円)である。
清掃員の職務内容は、床、ドア、ガラス面、トイレ、オフィス家具の清掃および維持管理などである。オフィス内のすべての区域を整理整頓し、ゴミや不要物のない状態を保つことが求められる。清掃用品や機器を安全に使用し、必要に応じてウォーターサーバーのボトルウォーターを補充し、ゴミを適切に回収・処理する業務も含まれる。
アメリカ駐武漢総領事館によると、応募資格として、小学校卒業以上の学歴を有し、少なくとも6か月以上の清掃または家事労働の経験があることが条件とされている。さらに、基本的な英語の「話す・読む・書く」能力が求められる。
この募集告知は、中国のSNS上で大きな話題となった。ネット上では冗談交じりの投稿が相次いだ。
「私、学校の大掃除で何年も窓拭きしてきましたが、応募できますか?」
「1年だけ清掃員として働くので、アメリカのビザをもらえますか?」
「新卒でも応募できますか? 今すぐ働けます!」
「もう何も言わない、清掃の仕事がしたい、行きたい!」
ある微博の有名ユーザー(大V)はこうコメントした。
「アメリカ駐武漢総領事館が清掃員を募集し、年収8万元超。ネットユーザーが驚いたのは、給与額が個位まで正確に示されている点である。しかも学歴は小学校卒業で十分とある。一方、中国企業の募集では給与は『3K~10K』のように曖昧で、実際の支給額は低めに傾くことが多い。学歴要件も『大卒以上』がほとんどである。普遍的価値観に基づく実用主義と契約主義の姿勢が、こうした対比からうかがえる。」
ネットユーザーの中には給与を試算する者もいた。
「“per annum”は“年収”を意味する。週40時間勤務と書かれているので、12で割れば税引き前の月給はおよそ6800元(約14万円)。社会保険と住宅積立金を差し引くと手取りは約5300元(約11万円)、公積金が1600元(約3万3千円)程度。可処分所得は月7千元(約14万4千円)前後だろう」
外資企業と中国企業における従業員待遇の差は、以前からたびたび注目された
日本のキヤノンが広東省中山市に設立した全額出資子会社であるキヤノンプリンター組立工場は、11月21日に正式に生産を停止した。中国人従業員への補償は手厚く、その内容は「2.5N+1」(N=勤続年数、法定基準のN+1を上回る水準)であった。一部の従業員は数十万元(数百万円)に及ぶ退職補償金を受け取ったという。
あるブロガーは次のように指摘した。
「一方では、日本企業キヤノンの従業員が一時金で63万元(約1290万円)の退職補償を受け取り、工場側は就業支援まで提供した。だが他方、仏山(広東省)のある中国企業の古参社員は絶望の淵にあった。工場は長期休業の末に解散し、会社は債務超過。従業員は1年以上訴訟を続けたが、最終的に売却された車1台分の代金9万元余り(約180万円程度)を分け合う結果に。1人あたり699.4元(約1万4千円)にしかならず、1か月分の給与にも満たなかった。」
そのブロガーはさらにこう述べた。
「外資企業は労働法を最低ラインとして尊重し、さらに上乗せして補償し、経営が厳しくても社員に不利益を与えない姿勢を示す。一方、内資企業は値引きした補償すら支払えず、10年の勤続がわずか数百元にしかならない。キヤノンの社員は補償金を手に今後の生活設計を立てられるのに、仏山の社員はわずか699元の賠償金のために1年も奔走し、結局、生活の安定を得ることができなかった。同じ労働者でありながら、なぜこれほどまでに境遇が異なるのか」
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