中国で進む「裸官」対応の強化とその背景

2026/02/02
更新: 2026/02/02

「裸官(家族や資産を海外に移して、政府に勤務する官僚)」と呼ばれる高官を対象とした粛清が、水面下で静かに進行している。その影響は、中共の政治構造そのものを揺るがしかねない深刻なものだ。米シンクタンク、ジャムズタウン財団は、北京による「裸官」粛清がすでに第3段階に入ったと指摘している。対象となる官僚には、「家族を即時帰国させる」か「辞職して職を退く」かという、二者択一が突き付けられているという。

2025年下半期に入って以降、北京の政界では異例ともいえる人事の動きが相次いでいる。副部長級以上の高官、全国政治協商会議(政協)常務委員、さらには重点大学の学長らが、相次いで「職を離れた」。

これらの人物はいずれも定年に達しておらず、公開された汚職調査の対象にもなっていない。しかし、共通点が一つある。配偶者や子供が長期間にわたり海外で生活している、いわゆる「裸官」であることだ。

ジャムズタウン財団は、これは単なる人事調整ではなく、「政治的安全」を核心に据えた体系的な粛清行動だと分析。中共はもはや「裸官」を「管理可能なリスク」とは見なさず、完全に排除すべき政治的な潜在危機と位置付けているという。

同財団の分析によれば、北京による「裸官」管理は、過去15年間でおおむね三つの段階に分けられる。

第1段階は、胡錦濤政権末期の2010~13年にかけてで、「登録・管理」が中心だった。国際的な経歴を持つ技術官僚(テクノクラート)に対しては、比較的寛容な姿勢が保たれていた。

第2段階は、習近平政権発足後の2014~24年にかけて裸官に対する「制限・禁止」が強化された。軍事、外交、国家安全などの敏感な職務への就任は認められなくなったが、非中核部門の一部の高級技術官僚については、例外的に容認する余地を残していた。

しかし2025年以降、北京は第3段階である「全面清理」に踏み切った。副部長級以上の官員に対し、「家族を即時帰国させる」か「辞職する」かの二択を迫り、もはや妥協案は認められない。

この方針転換を象徴する事例として挙げたのが、中国人民銀行(中央銀行)の易綱元総裁である。理性的かつ開放的な姿勢で知られ、専門性の高さから一定の柔軟性を許してきたが、「ゼロ容認」の新規定の下では、子供が海外に居住していることが政治的キャリアにおける越えられない一線となった。

財団は、この転換の重要な背景としてロシア・ウクライナ戦争を挙げる。西側諸国がロシアのエリート層に科した制裁が壊滅的な効果を持ったのは、家族や資産が西側の制度に大きく依存していたためだ。北京は、将来の重大な衝突において同様の事態を招くことを警戒し、こうした「戦略的な弱点」を事前に封じ込めようとしている。

記事は、この動きが、将来の台湾海峡危機やその他の地政学的衝突を見据えた、典型的な「戦前の準備」であると指摘する。行政官僚が、家族の安全や海外資産の凍結を恐れて動揺する事態を防ぐ狙いがあるという。

台湾のシンクタンク「中国問題研究センター」主任研究員の呉瑟致氏は、裸官の粛清は地政学的要因と無関係ではないものの、より切迫した理由は国内の安定にあると分析する。中国共産党(中共)高官の家族が海外に長期滞在していることは、忠誠心の問題だけでなく、政商癒着や資金の流れとも関係する。国内経済の減速や社会の問題が深まる中、海外にいる官僚家族が、汚職に対する民衆の不満の象徴となることを北京は警戒しているという。

呉氏は、「現時点で中共が最優先に考えているのは、いわゆる国内の安定だ。言い換えれば、習近平が直面している統治圧力の下では、政権の安定が最優先事項であり、こうした構造や人々を掌握することで、迅速に政権安定のための統制を行おうとしている」と指摘した。

一方、台湾のマクロ経済学者・呉嘉隆氏は、裸官の粛清を「目に見えない資金防衛戦」だと捉える。

呉氏は、「習近平は現在、外貨をめぐって深刻な圧力に直面している。公式には中国人民銀行の外貨準備高は約3兆3千億ドルとされているが、中国の対外債務は約2兆9千億ドルと推計する」と指摘。

「差し引き4千億ドルが実質的に中国自身の資金だが、これは大国が食糧、エネルギー、機械設備を輸入するには到底十分ではない。裸官を呼び戻すというのは、海外資産を売却させ、海外に隠された資金を国内に持ち帰らせるという意味であり、これこそが最も直接的かつ重要な目的だ」と語る。

分析では、今回における裸官の粛清によって、改革開放期に特徴的だった「技術官僚主導」の統治モデルが急速に終焉へ向かう。今後、意思決定を主導するのは、政治的には信頼できるが視野の狭い国内出身の官僚や、忠誠を示すために自ら対外的なつながりを断つ機会主義者(ご都合主義)になる可能性が高い。

新唐人