6日、自由民主党の高市総裁は岩手県北上市を訪れ、同党公認候補である藤原たかし氏の応援演説を行った。雪が降りしきる中、高市氏は集まった聴衆に対し、自身の掲げる「責任ある積極財政」への理解と、地域産業の活性化を通じた「強く豊かな日本列島」の実現を強く訴えた。
地方からの成長と積極財政
高市氏は演説の中で、岩手県が抱える被災地の記憶に触れつつ、復興大臣政務官や財務大臣政務官を歴任した藤原氏の実績を評価した。その上で、岩手県内におけるスマート農業や、同県第3区における半導体関連企業の集積を挙げ、地方にこそ「希望の種」や日本の競争力の源泉があると強調した。
特に政策面で高市氏が力説したのは、従来の「縮み志向」からの脱却である。高市氏は、長年続いたデフレマインドや投資不足が日本の潜在成長率を押し下げていると指摘。企業の国内回帰と設備投資を促すため、大幅な設備投資減税や、予見可能性を高めるための長期(10年規模)の基金運用の必要性を説いた。
また、来年度予算において28年ぶりにプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を達成したことに触れ、財政の持続可能性を維持しつつ、成長のための投資を行う「責任ある積極財政」への転換をアピールした。

少数与党での政権運営と信を問う覚悟
今回の解散総選挙の背景には、高市内閣発足直後の厳しい国会運営がある。演説の中で高市氏は、総裁選勝利時には衆参ともに過半数割れの状態であり、物価高対策などの補正予算を通すために他党への協力要請に奔走した苦しい状況を吐露した。
高市氏は、経済財政政策の抜本的な大転換を行うにあたり、現在の不安定な政治基盤のまま政策を進めることは「卑怯」であるとし、納税者である国民に信を問うために解散に踏み切ったと説明している。総理就任からわずか3ヶ月あまりでの解散は、来年度予算案や重要法案の成立を確実なものにするための勝負手であったといえる。
高市路線の定着と課題
選挙戦は最終盤を迎えており、この岩手での演説は、地方票の掘り起こしと無党派層への最後のアピールを意図したものだ。
選挙の結果、自民党を中心とする与党が過半数を確保できれば、高市氏が掲げる「積極財政」路線は強力に推進されることになる。具体的には、演説でも言及された食料・エネルギー安全保障、国土強靭化、サイバーセキュリティ分野への重点投資が加速し、国内サプライチェーンの再構築が進むと予測される。特に、岩手のような半導体拠点や先進的な農畜産業を持つ地域は、高市内閣の「戦略的クラスター」構想の恩恵を受ける可能性が高い。
一方で、高市氏は「あと2回足りない」「高市バージョンだと5回」と述べ、藤原氏の当選回数(実績)と自身の政治キャリアを重ね合わせながら、経験ある政治家の必要性を訴えた。これは、野党勢力との対決において、即戦力となる議員の確保が政権安定に不可欠であるという危機感の表れでもある。
選挙後の国会では、今回示された「成長のための投資」と「財政規律」のバランスを実際にどう舵取りしていくかが焦点となる。28年ぶりのPB黒字化を維持しつつ、積極的な財政出動を行うという高市氏の公約が実現できるか、その手腕が問われることになるだろう。
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