中国 中国社会を縛る「ブラックリスト」の現実

一度「陳情者」と見なされると終わり 北京の弁護士が直面した見えない監視

2026/04/08
更新: 2026/04/08

北京で働く一人の弁護士が、突然「陳情者」として扱われ、日常生活に深刻な支障をきたしている。本人は抗議活動や陳情を行った事実はない。それでも一度付けられたこのレッテルは、2年が過ぎても消えない。

この弁護士は、国営通信社や大手メディアで記者や編集を務めた経歴を持ち、現在は弁護士として活動している。それでも今回の問題から逃れることはできなかった。

中国では「陳情者」とは、本来は行政に不満を訴えるために役所へ足を運ぶ人を指す。しかし実際には、このラベルが付いた瞬間、その人は「要注意人物」として扱われる。駅や地下鉄、街中の検問で頻繁に呼び止められ、行動の自由が制限される。場合によっては移動そのものが難しくなることもある。

この弁護士の場合も同様だった。2024年冬ごろから、北京の地下鉄や各所の警備ポイントで繰り返し足止めされるようになった。地方での仕事を終えて北京に戻る際にも、必ず確認を受ける。自宅近くの駅ですら例外ではなく、日常の移動に毎回長時間を取られるようになった。

本人が公安に確認したところ、データ上では「ワクチン問題に関する陳情」と結び付けられていた。しかし本人には全く心当たりがない。さらに深刻なのは、誰が登録したのか分からず、どの部署も削除できないという点だった。

彼は行政の苦情窓口に何度も訴えた。だが、回答は決まって同じだった。窓口から公安へ、公安から地元の警察へ、そして最終的に本人へ「確認しました」という連絡が来るだけ。問題は何一つ解決されない。責任の所在が曖昧なまま、同じ手続きが繰り返されるだけだった。

追い詰められた彼は、最終的にネット上で助けを求めた。しかし、その投稿はすぐに削除され、アカウントも消えた。

この出来事が示しているのは、中国では一度「陳情者」と見なされると、その人の人生が静かに縛られていくという現実だ。

誰が登録したのか分からない。なぜ登録されたのかもはっきりしない。だが、その影響だけは確実に続く。見えないブラックリストに載るということは、説明も責任もないまま、自由だけが奪われるということに等しい。そして、その状態から抜け出す手段は、ほとんど存在しない。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!