中国 各業界で不満噴出 抗議の動き拡大

中国で賃金未払い広がる 各地で抗議続く

2026/04/19
更新: 2026/04/19

中国で賃金未払いや収入減への抗議が各地で続いている。2026年2月の旧正月後、タクシー、医療、建設、製造、飲食、配達など幅広い業界で、ストライキや抗議が絶えない状況となっている。

 

タクシー運転手の抗議

4月12日と13日、陝西省西安ではタクシー運転手数百人が管理当局の前に集まり、会社に支払う固定費の引き下げを求めて抗議した。配車アプリの普及などで客が減る一方、固定費は高いままで、働いても手元にほとんど残らない状況が続いている。現場では「生きていけない」「食べていけない」といった訴えが相次ぎ、運転手たちが一斉に抗議に踏み切った。

4月9日から10日にかけては、重慶市奉節県や遼寧省錦州市でもタクシー運転手がストライキを行い、収入減への不満を訴えた。

 

医療現場のストライキ

医療現場でも限界が表れている。4月8~9日、山東省臨沂市の病院で医師や看護師がストライキを行い、未払い賃金の支払いを求めた。この病院(河東区人民医院)は公立から民営に転じた施設で、給与は2年間支払われず、医療保険や社会保険も未納の状態が続いていた。職員はこれまで何度も訴えてきたが、改善されなかったという。

3月31日には、江西省楽平市の「天湖医院」が315人の職員を一斉解雇し、広東省汕頭市の「潮陽康泰医院」でも同様に全職員の解雇を発表した。後者では100人以上の約5か月分、計400万元(約1億円)の賃金が未払いだった。

さらに3月20日には、安徽省六安市の六安世立医院でも医師や看護師がストライキを行い、病院が滞納している給与と成果給(歩合給)の支払いを求めた。

未払い賃金や経営難が続く中、ついに閉鎖に追い込まれる病院も増えている。2022年ごろから始まったとするこの流れは拡大を続け、2025年だけでも民間病院1362院以上が閉鎖した。最近では公立病院にも影響が広がり、賃金未払いや経営難に直面する施設が増えている。

こうした医療機関の経営悪化の背景について、台湾の政府系シンクタンク「国防安全研究院」の王占璽副研究員は、地方財政の悪化を指摘する。中国の病院収入は公的医療保険に大きく依存しており、その財源は地方政府に支えられている。地方財政の悪化で医療費の支払いが滞り、病院の経営が圧迫される構図だ。

 

建設現場の未払い問題

建設業でも未払いは常態化している。4月12日には上海、4月9日には広州で作業員が現場をふさぎ、賃金の支払いを求めた。広州のこの建設工事では、工事完成から3年たっても支払いが行われていないという。3月25日には広東省清遠市でも同様の抗議が起きた。

建設現場で賃金未払いが相次いでいる背景について、中国の民主化を訴える海外団体「中国民主陣線」のドイツ副主席で、中国の社会問題に詳しい王守峰氏は、大型プロジェクトの資金が一部の関係者の利益に回るなど本来の用途に使われず、そのしわ寄せが下請け業者に回される構造だと指摘する。その結果、下請けが資金を立て替えて、最終的に労働者の賃金が未払いになるケースが多いという。

 

不動産不況の影響

不動産不況も影響している。中国の不動産開発企業の従業員数は、2019年の約294万人から2025年には約151万人へと減少し、約半分になった。市場の縮小と資金難が雇用と賃金に直撃している。

 

製造業で広がるストライキ

製造業でも動きが広がる。4月13日、台湾の電子機器受託生産大手、富士康(フォックスコン)の工場(山西省太原)では、100人以上の管理職がストライキを行い、管理職ポストの廃止に抗議した。同じ理由で、2025年3月26日にもストライキが行われたが、問題は解決されていなかったとされる。

こうした動きは他の工場にも広がっている。4月7日から8日にかけては、浙江省寧波市の自動車部品メーカーで数百人の労働者が2日連続でストライキを行い、工場移転に伴う補償が示されていないことに反発した。

さらに、3月27~30日にかけて、江蘇省常熟市の自動車部品メーカーで、数十人の労働者が連日抗議し、事実上の人員削減に反発した。労働者によると、受注減を理由に仕事を非正規の作業員に回し、正社員を自宅待機にして自主退職へ追い込むことで、補償を回避しているという。

 

飲食・配達現場の抗議

飲食や配達でも同様の動きがある。4月2日、広東省仏山市で閉店した飲食店「豬腰一家」の従業員が、店の前をふさいで未払い賃金の支払いを求めて抗議した。

3月31日から4月3日にかけて、重慶市奉節県でフードデリバリーの配達員が連日ストライキを行い、配達アプリの運営側に対し、度を越えた搾取や配達単価の引き下げに抗議したが、失敗に終わった。

3月26日には、湖南省邵陽市で80歳の清掃員が、鉄の鎖で自らの体を清掃車に縛り付けるなどして、未払い賃金の支払いを求めて抗議した。

 

抗議が示す経済の限界

ここ数年、中国では未払い賃金をめぐる抗議が、医師や看護師、教師、飲食業の従業員、清掃員、バス運転手、タクシー運転手、フードデリバリーの配達員、さらには税務局職員や銀行職員など、幅広い職種に広がっている。

本来、賃金未払いをめぐる抗議は年末に集中するのが一般的だったが、現在は3~4月にも新たなストライキや賃金請求の動きが起きている。この現象について、中国問題の専門家、李林一氏は本紙の取材に対し、「中国経済の土台そのものがすでに崩壊しており、問題はもはや解決の手立てがない」と指摘した。

中国の社会問題に詳しいメディア編集者で、深圳でNPOを創設した経験を持つ艾時誠氏も、賃金未払いをめぐる抗議の拡大は、社会全体の仕組みが崩れ始める前触れだと指摘する。さらに、経済の崩壊や社会の混乱は政治体制の揺らぎにつながり、連鎖的な崩壊がすでに始まっていると警鐘を鳴らした。 

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!