これは2026年4月30日に配信されたポッドキャスト「Victor Davis Hanson: In His Own Words」の内容を一部編集した書き起こしである。
いわゆるイラン戦争は60日近くに達しようとしているが、いまだに「ドナルド・トランプは失敗した」「戦況はうまくいっていない」といった大きな声が聞こえてくる。
だが、そうした主張には客観的な根拠が全くない。現実のデータを見れば、事実は正反対である。
現時点で60日が経過し、イランは1日あたり約5億ドルの損失を出している。石油の貯蔵能力は1〜2週間で限界に達し、日々の産出分を保管できなくなる。その場合、採掘を止めるか、止めなければ油井が崩壊する恐れがある。
つまり、採掘を停止するか、急いで貯蔵施設を建設する必要があるが、そうなれば我々に察知され、破壊されるだけだ。
したがって、経済的には瀬戸際にあり、軍事能力も失っている。戦争の行方は完全にアメリカ次第である。無条件降伏を求めてさらに1〜2か月の経済封鎖を続けるか、それとも空軍力で橋などを破壊するかの選択にかかっている。
言いたいのは、これはアフガニスタンのヘルマンド州やイラクのファルージャに海兵隊が突入しなければならなかったような軍事的問題ではないということだ。完全に政治の問題であり、軍事的にはすでに決着がついている。あとはトランプ大統領がどれだけの政治的リスクを取って無条件降伏や体制転換を求めるかという問題である。
だが、トランプ氏がそこまで徹底した決着を強いる必要はない。 そもそも政権排除は、彼の開戦当初の目的ではなかったからである。戦前の目的は、イランの核開発を無力化し、ミサイルやドローン能力を削ぎ、軍事力を弱体化させ、テロ組織への資金供給を止め、47年間続いてきた米国や同盟国への攻撃を止めさせることだった。これらは完全ではないが、ほぼ達成されている。
では、この戦争の戦略的な波及効果はどうだろうか。
最近、OPECに関して動きがあった。アラブ首長国連邦やオマーンが脱退を検討しているという。OPECは1973年に設立され、石油価格を引き上げるために生産量を制限することを目的としていた。
現在、各国には生産枠があり、実際には最大能力の70〜80%しか生産していない。一方、アメリカは現在最大限の生産を行っている。ロシアやベネズエラも同様になるだろう。
UAEだけでも200万バレルの増産余地がある。サウジアラビアが脱退すればさらに20%増産できる可能性がある。つまり、各国が高価格を見てOPECから離脱すれば、一斉に増産に走るだろう。
その結果、石油価格は下落し、ホルムズ海峡の戦略的重要性は低下する。これはイランにとって非常に不利である。
もう一つ重要なのは中国である。誰もが「中国、中国、中国」と口にする。
だが、中国にとって事態は芳しくない。バイデン政権の間、彼らずっと台湾侵攻をちらつかせてきた。日本を爆撃する動画を流し、台湾奪取を脅し、「口出しするな」と説教し、強硬姿勢を取ってきた。
評論家たちは、中国がロシアの動きに勢いづいていると言ったが、私には理解できなかった。ロシアはスターリングラードのような泥沼にはまっているではないか。
しかし、今回の湾岸での航空戦を目にしたとき、中国は考えたはずだ。
もし台湾侵攻を行うなら、30万人規模の兵力を110マイル(約180km)の海を越えて輸送しなければならない。だが今回の戦争で見たように、アメリカやイスラエルはドローンやミサイル、洗練された防空システム、潜水・水上ドローンで一帯を埋め尽くす凄まじい能力がある。台湾自身の防衛力も考慮すれば、それは悪夢以外の何物でもない。
つまり、費用対効果の観点から見て、アメリカの軍事力は依然として圧倒的であり、中国は抑止されるだろうというメッセージが伝わった。
さらに、中国はベネズエラやイランでの影響力も失った。中国はロシアと共にマドゥロ政権を操り、制裁下の石油を安く買い、武器を売り、ラテンアメリカ(パナマ運河が好例だ)で影響力を拡大しようとしてきた。
イランに対しても同様だ。安価な石油を買い、代わりに高度な兵器を送り込み、それを使ってイランがイスラエルを弱体化させ、シリアやイラクにある米軍施設を攻撃することを期待していた。
中国はイランに対し、ハマスやヒズボラ、フーシ派に資金供給することを望んでいた。
それももう終わりだ。イランは破産した。国民が飢えているときに、アラブのテロリストに月5000万〜6000万ドルも貢いで混乱を引き起こすような愚行を、国民は許さないし、政府もそこまで愚かではないだろう。彼らは過去50年間にわたり軍事、産業、核開発に投じてきた、おそらく5千億ドル規模の投資を失ったのだ。
中国は負け組だ。ロシアもアサド政権という後ろ盾を失い、中東から追い出された。石油価格の一時的な上昇で一息ついているが、先述の通りOPECの崩壊とベネズエラ、米国の増産により、事態が沈静化すれば石油価格は暴落し、ロシアは大きな敗者となる。
さらに重要なのは、彼らが再び米国の空軍力を、そしてひいてはNATOの熟練度を思い知らされたことだ。ロシアは今の戦場に沿って可能な限り領土を確保し(おそらく非武装地帯と呼ぶだろうが)、戦争から手を引こうとするだろう。彼らにはもう兵士も資金もない。150万人の兵士を失ったのだ。ウクライナに縛り付けられている限り、他に戦略的選択肢はないという現実を、この戦争は突きつけた。
ヨーロッパは大きな敗者だった。
彼らはトランプ氏と関係を築き、国防費をGDP比2%にすることに合意し、それを達成した。5%にするという話さえ出ていた。NATOはトランプ氏を「ダディ」と呼び、トランプ氏も彼らをまともな同盟国だと見なしていた。
トランプ氏は今回の作戦において、米国の左派や議会、あるいはヨーロッパ諸国に手の内を明かしたくなかった。彼らが情報を漏らし、奇襲のメリットを台無しにするのを恐れたからだ。 だがそれ以上に、彼はスペイン、イタリア、イギリス、フランスといった国々が、せめて「ノーコメント」か「これは米国の取り組みであり、我々はNATOの同盟国を支持する」と言ってくれることを期待していた。そして裏で電話をかけ、「ドナルド、公にはしないが、我々の領空を使え、お前たちが金を払っているNATO基地を使え」と言うだろうと考えていた。
しかし、実際はどうだったか。彼らはイスラム系支持層や左派勢力に媚びを売った。スペインやイタリアのメローニ政権ですら、「シチリアに爆撃機は置かせない」「スペイン上空の飛行は許可しない」「フランス上空もダメだ」「ディエゴガルシア島は防御目的以外では使わせない」と言い出した。
「防御的攻撃」とは何だ? 基地が攻撃されたらミサイルで迎撃していいが、そこから離陸して誰かを攻撃するのは許さない、というのか?
実にお話にならない。ヨーロッパの対応は極めて無様だった。 さらに、彼らは「海峡をパトロールする」と言い出しながら、それが実戦(キネティック)になる可能性があり、米国から任務を引き継げば武力行使が必要になると気づいた途端、その能力がないことを露呈した。結局、口先だけであり、その根底にあるのは米国への嫉妬と怒りだ。
彼らは非常に危険なゲームをしている。いつの日か、米国がこう言う時が来るだろう。「君たちのことは愛しているし、ヨーロッパは素晴らしい場所だ。だが、自分たちの問題は自分で解決してくれ。セルビアの時のように『有志連合』でも作ればいい」と。 彼らはNATO加盟国ではないセルビアやコソボに介入した。リビアにも行った。チャドやフォークランド諸島でも、彼らは勝手に動き、米国は常にそれを助けてきた。それなのに、米国が動こうとすると、彼らは難色を示す。
ならば勝手にしろ、我々は降りる。トランプ氏はそう言うだろう。
最後に。アメリカの左派は「戦争に負けた、トランプが台無しにした」と言い続けてきた。 だが、彼を過小評価してはいけない。中間選挙まであと6か月ある。石油価格は暴落する可能性がある。トランプ氏が実行した大規模な法案、規制緩和、減税、そして莫大な対外投資――これらが7月や8月に効果を発揮し、安価なエネルギーに支えられた今よりも強い経済を実現する時間は十分にある。
さらに重要なことに、トランプ氏はこう主張できる。「自分の政権下で、ベネズエラの脅威を無力化した。南米、ラテンアメリカへの共産主義の波及を止めた。そして、過去7代の大統領が夢見ながら決して成し遂げられなかった方法で、中東を沈静化した」と。

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