イラン情勢の緊迫化を受け、ホルムズ海峡を迂回し、アラビア砂漠を横断する陸上輸送網の整備が急速に進んでいる。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、かつて荷を積んだラクダの隊商は、アラビア商業の生命線だった。いま、その陸上輸送ルートが再び存在感を増している。ホルムズ海峡の航行に支障が出て、ペルシャ湾地域の生産業者や輸出業者が代替ルートの確保を迫られるなか、サウジアラビアの国有鉱業会社マーデン(Maaden)は、肥料を紅海の港へ運ぶため、トラック輸送業者を急きょ動員した。
マーデンのボブ・ウィルト最高経営責任者(CEO)は、紅海沿岸の港に幹部を派遣し、2週間で鉄道会社やトラック業者との調整を進め、サウジアラビアを横断する輸送網を構築したと述べた。同社が確保したトラックは当初の600台から3500台に増え、各車両には運転手2人が乗り込み、交代で運転している。多くの車両は24時間体制で、ペルシャ湾と紅海の間を往復しているという。
ウィルト氏は、5月末までに滞留している輸出貨物をさばくことを目標にしていると述べた。
同氏によると、この輸送ルートはコストが高く、多くのトラックは港に到着した後、空荷で戻らなければならない。ただ、商品価格の上昇が輸送コストの一部を吸収しているという。同社は輸送ルート沿いに仮設倉庫を設置し、輸送設備も調整した。リン酸塩の生産に欠かせない原料である硫酸を運ぶため、ステンレス製のタンクローリーも導入している。
陸上輸送を長期の代替ルートへ
ウィルト氏は、このトラック輸送ルートを一時的な緊急措置ではなく、長期的な予備ルートとして活用したい考えを示した。マーデンはこれまで、主にペルシャ湾岸の港からホルムズ海峡を経由して鉱産物を輸送してきた。
同氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、「私たちは対応力を示すことができた。このルートを強化し、紅海へ向かう輸送ルートを常に確保しておきたい」と語った。
こうした動きはマーデンに限らない。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンでは、港湾、鉄道、高速道路を結ぶ輸送網の再構築が進められ、ホルムズ海峡を迂回する輸送ルートの整備が進んでいる。世界最大級のコンテナ船会社であるMSCやマースクなども、アラビア半島を横断するトラック輸送を利用している。
UAEのスーパーマーケットチェーン、スピニーズ(Spinneys)は、ポテトチップス、オートミール、子供向け菓子などイギリス食品を積んだトラックを英ケント州から出発させた。車両は西欧、エジプト、サウジアラビアを経由し、16日かけてドバイに到着した。
また、エティハド鉄道貨物会社は最近、日産車数百台をUAE東海岸のフジャイラから、ペルシャ湾岸のアブダビへ輸送した。
ただ、同紙は、こうした陸上輸送は海運の代替にはなり得ないと指摘している。コストが高いだけでなく、エネルギー供給の不安を解消するものでもないためだ。それでも緊急時には、貿易の流れを維持し、供給への影響を和らげる効果がある。さらに、物価の安定にもつながり、世界的なインフレ圧力の抑制にも寄与するとみられている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。