中共の脅威に対応 日本の国防の転換が多国間の連携防衛網を後押し

2026/06/01
更新: 2026/06/01

5月23日、台湾国家安全会議(国安会)秘書長のウー・チャオシェ氏はSNSのXに投稿し、「米中首脳会談」後、中共が第一列島線周辺に100隻以上の艦船を展開していると指摘した。投稿に添付された図には、中共が南シナ海・東シナ海および台湾・フィリピン近海に大量の艦船を配備している様子が示されており、その位置は韓国・日本・台湾・フィリピンの排他的経済水域(EEZ)を著しく侵犯しているという。

一方、中共は日本の防衛・軍備強化計画を批判し、日本がいわゆる軍国主義の復活を企てているとして、アジア太平洋各国に対し日本の「新たな軍国主義的行動」への共同抵制を呼びかけた。

専門家は、日本の軍備強化加速はあくまで対応的なものであり、中共の外交・軍事的威圧への回応だと指摘する。日本のこうした変化は、地域全体の平和と安定にとって非常に肯定的な意味を持つとされる。

日本、防衛力強化の加速で中共の脅威に対応

新唐人テレビ「ニュース大解析」において、台湾大学政治学科名誉教授の明居正氏は、中共が陸海空・ロケット軍を大規模に増強し、台湾海峡で軍事的圧力をかけていることが、日本の国防転換の主要因だと述べた。具体的には以下の点が挙げられる。

第一に、中共は従来の接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略から遠洋への戦力投射へと転換しており、これは米国と覇権を争う戦略的思考への移行を意味する。

第二に、中共の軍事予算は1兆9千億人民元(約2600億ドル超)に達し、米国に次ぐ世界第2位であり、毎年前年比7%増で拡大を続けている。隠れた軍事費はこの2〜4倍に上るとみられる。

第三に、中共は宇宙軍・サイバー軍・電磁空間作戦・無人領域を積極的に整備し、陸海空・ロケット軍の総合的な作戦能力を高めている。

第四に、中共による台湾への包囲的軍事演習、定期的な戦備警巡、ロシア軍との合同演習、最近の軍民船混成による数百キロに及ぶ展開、海底ケーブルの切断、戦狼外交による口頭での恫喝、そして台湾や各国への統一戦線工作と浸透活動が続いている。

明居正氏は、中共の軍事拡張、とりわけ台湾海峡への軍事的威圧が域内各国に現実の軍事的圧力として重くのしかかっており、各国は否応なく防衛力の強化と安全保障の模索を迫られていると分析する。こうした状況を背景に、高市早苗首相就任後の日本は防衛力の強化・増強を加速させ、専守防衛から敵基地攻撃へと転換した。

具体的には以下の通りだ。

まず、GDP比2%を目標に防衛予算を増額し、反撃能力を強化する。

次に、「台湾有事は日本有事」の方針を実践し、台湾の北東部に位置する日本の南西諸島の防衛部隊および装備を強化する。

さらに、主要装備・戦力の整備を推進する。国産の12式陸上発射型対艦誘導弾の射程を従来の200キロから1千キロに延伸し、初期配備は熊本近傍で行われた。航空宇宙自衛隊(宇宙軍)の創設も進む。出雲型護衛艦の「いずも」と「かが」は軽空母への改装を完了し、F-35Bの発着艦訓練も実施済みだ。2028年には空中・水上・水中の無人機・無人艇(UAV・USV・UUV)などの無人機による海上防衛網の整備も予定されている。

加えて、統合作戦司令部を創設し、陸海空三自衛隊を一元指揮するとともに、米軍との効果的な連接を図る。

また、日本は国家情報局の設立も計画している。開南大学副学長の陳文甲氏によると、7月ごろ、高市首相が直接主導する国家レベルの情報機関が発足する見通しであり、定員700人規模で、米国の中央情報局(CIA)に相当するという。陳氏は、日本はもともと情報を国家の基盤に据えており、外務省・防衛省・警察庁・公安調査庁など各省庁がそれぞれ情報機関を持ち、シンクタンクへの委託や研究所も擁していると説明する。国家情報局の設立は、長年にわたる中央情報統合機能の欠如を補うことが目的だ。

陳文甲氏は、日本が今回、国家情報機関を創設する理由として4点を挙げた。

第一は中共の影響力への対抗、軍事的脅威に加え、統一戦線工作や浸透、あらゆる手段を駆使したグレーゾーン作戦への対処が求められる。

第二は経済安全保障と技術保護であり、情報は軍事情報にとどまらず、科学技術・商業情報も極めて重要だ。

第三は台湾海峡と第一列島線における潜在的危険因子の早期発見で、中共の軍事・グレーゾーン作戦情報のリアルタイム把握は、台湾・米国・日本・フィリピンにとってきわめて重要な意味を持つ。

第四は同盟国との情報共有窓口の直接連接による日米同盟の情報協力の深化だ。

陳氏はさらに、今後は米国が主導し、日本が統合し、オーストラリアが協力し、台湾のリソースも加わる形の枠組みが生まれる可能性があると指摘し「台湾有事は日本有事」という言葉が真に実践される形となり、台湾はリソースを提供すると同時に、リソースの共有を受けることができるとした。

台湾も参与する、中共に対する多層的な「志同道合国」の構築

明居正氏は、日本は自国の軍備強化を進めると同時に、中共に対抗するための多層的な「同志国(like-minded states)」のネットワーク構築を推進していると述べた。同志国とは、共通の目標・価値観・利益の方向性を持ち、必ずしも同盟関係にはなくとも共通の敵に直面している国家群を指す。

現在構築が進められているのは、中共を共通の敵・最大の脅威と見なす国家間のネットワークだ。各国間の関係の形態にかかわらず、中共という共通の敵に対して協力する体制である。

多層構造の最上位には、米国・日本・インド・オーストラリアによる「クアッド(Quad=四か国安全保障対話)」、および米英豪による「AUKUS(オーカス)」が位置する。その下層には、日米比、日米韓といった多国間の枠組みが並ぶ。

明居正氏によれば、日本はすでに多層的な同志国の構築に着手している。

まず、相互アクセス協定(RAA)の締結だ。日本はすでに英国・オーストラリア・フィリピンと協定を締結しており、フランスとも交渉中だ。協定により、平時においても合意の下で相手国への部隊の派遣・駐留・訓練・合同演習が可能となる。

次に、政府による安全保障支援の強化だ。フィリピンやオーストラリアに対しては、海上保安装備の提供にとどまらず、防衛装備(武器システム)の直接供与や基地インフラ整備支援まで踏み込んでいる。東南アジア諸国のフィリピン・インドネシア・マレーシア等に対しては監視システムを提供している。

第三は経済安全保障、すなわち「脱中国依存」のサプライチェーン構築だ。

日比同盟が示す第一列島線多国間防衛網の形成

5月28日、フィリピンのマルコス大統領と日本の高市早苗首相が東京で首脳会談を行い、両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすると宣言した。両首脳は、志を同じくする海洋民主主義国家として、日比関係は「プラチナ時代」に入ったとの認識で一致した。マルコス大統領は同日、日本の参議院本会議でも演説し、フィリピンが世界平和の守護という責務を担うと強調。2026年のASEAN議長国として、自由で包摂的なインド太平洋の実現を推進すると約束した。

陳文甲氏は、日本とフィリピンは軍事機密保護の仕組みと相互アクセス協定(RAA)を始動させたと指摘する。RAAは非常に高い水準の協定であり、相互の物資・役務提供協定とともに、その枠組み全体がすでに軍事的運用段階に入ったとした。これは日比関係が従来の経済・貿易関係から防衛中心へと移行したことを示し、フィリピンをクアッドの枠組みと部分的に接続することにもなると述べた。

陳氏はさらに分析する。日本もフィリピンも米国と相互防衛条約を締結しており、フィリピンがクアッドと連携することで、実質的に多国間の集団防衛体制が形成される。第一列島線の北端に日本、南端にフィリピンが位置する。日本が宮古海峡を押さえ、台湾が台湾海峡を押さえ、フィリピンがバシー海峡を押さえれば、三つの海域で連動関係が生まれる。これは中共を第一列島線の内側に封じ込めることを明確に意図したものだ。

陳氏は続けて述べた。第一列島線には台湾・日本・フィリピンが位置し、第二列島線には米国のグアムがある。日米韓比の四か国の連携防衛、日本の基地、フィリピンの基地、さらに合同軍事演習、そして台湾を加えた「4+1」の力が連動することで、中共の覇権拡張を有効に抑止し、台湾海峡・東シナ海・南シナ海の平和と安定を維持する地域的な阻止力が構成されると分析した。

また陳氏は、真の勝敗を決するのはミサイルの数ではないとも述べた。台湾・日本・フィリピン等の国々にとって今やより重要なのは、軍事力だけでなく「認知的な連携防衛」であり、それによって初めて民主主義国家に対する中共の脅威や認知戦・浸透工作を突き破ることができると指摘した。

王淨純