「社会の戾気(リーチー・邪気)が強すぎる」近年、中国では、この言葉が現代社会を象徴する言葉の一つとして、人々の口から自然に語られるようになった。
リーチーとは、人としての思いやりや善意よりも、怒りや攻撃性が先に出てしまう、社会全体を覆う殺伐とした空気を指す。
その「リーチー」を象徴するような出来事が、また起きた。
中国・陝西省渭南市で7月2日、9歳の女の子が自宅マンションのエレベーター内で、同じマンションの女性住人が押していた赤い自転車を見て「きれいな自転車だね」と声をかけ、好奇心からハンドルに軽く触れた。
すると次の瞬間、女性は突然、女児の頬を平手打ちした。
防犯カメラ映像では、何が起きたのかわからないまま顔を押さえ、立ち尽くす女児の姿が映っている。
親族によると、女性の手には鍵が握られており、女児の頬は大きく腫れたという。しかし女児は怖さのあまり家族にも被害を打ち明けられず、帰宅後、顔の腫れに気づいた家族が事情を聞いて初めて事件が明らかになった。
家族は管理会社から防犯カメラ映像を確認して警察に通報したものの、警察は「事件として立件するには当たらない」として、双方で話し合うよう求めたという。
親族は「体の傷だけでなく、子供の心の傷は誰が責任を取るのか」と処分に強い不満を示している。
この出来事は7月5日、中国のSNSで大きな話題となり、「相手は9歳の子供なのに、なぜ平手打ちするのか」「注意すれば済む話ではないか」「未成年への暴力なのに立件されないのか」といった批判が相次いだ。
もちろん、自分の物を勝手に触られて気分を害する人はいるだろう。しかし、相手が好奇心いっぱいの9歳の子供であっても、まず怒りや暴力が飛び出してしまう。
華人圏のSNSでは近年、「そんな些細なことでキレるのか」と目を疑うような、取るに足らないきっかけから凶悪事件へ発展するケースが後を絶たない。人々はこうした事件が起きるたび、「社会全体が真っ黒な『戾気(リーチー・邪気)』に覆われている」と嘆きを漏らす。
今回の事件もまた、多くの中国人が語る「リーチー」が社会の隅々まで広がっている現実を、あらためて人々に突きつけた。中国がそんな社会になってしまったことに、国内外の華人はいま強い危機感を抱いている。

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