中国の著名経済学者・高善文氏が55歳で死去。GDP統計への疑問表明後、習近平の指示で調査対象となり発言機会が制限されたと米紙が報道。実質成長率「約2%」発言の背景と波紋を整理する。
中国の著名な経済学者で、国投証券の元チーフエコノミストである高善文氏が死去した。55歳だった。
アメリカの有力紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、高氏が中国の公式な経済成長データに疑問を呈した後、中国共産党(中共)党首習近平の指示で調査の対象となっていたと報じた。
報道によると、高氏は2024年、中共が発表するGDP成長率について公の場で疑問を示した。この発言が習近平の怒りを買い、調査を指示したとされる。調査は、中共中央弁公庁主任の蔡奇が担当したという。
高氏はその後、公の場での発言を控えるよう求められ、講演の中止なども相次ぎ、晩年は公の場への露出が大きく減っていた。
高氏は7月7日、T細胞リンパ腫のため死去した。
GDP統計への疑問と「実質2%」発言
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は7月15日付のコラムで、高氏について、中国経済の実態について率直な発言をしてきた人物だとしたうえで、晩年は発言の機会が制限されていたと指摘している。
高氏は2024年12月、アメリカ・ワシントンにあるピーターソン国際経済研究所のフォーラムで、「ここ2〜3年の中国の実際の経済成長率は平均でおよそ2%程度にとどまる」と述べた。そのうえで、外部からは中国の経済統計の実態を把握するのは難しいと指摘した。
中共当局は毎年おおむね5%前後の成長目標を掲げ、発表する統計もこれに近い水準となっている。このため、高氏の発言は公式見解と異なるものと受け止められたとみられる。
「習近平が激怒 蔡奇に調査指示」
報道では、習近平がこの問題について調査を指示し、蔡奇が対応にあたった。その後、高氏が大学で予定していた講演は中止となり、当局は理由を「日程の都合」としている。
また、高氏は2019年のインタビューで国有企業について、「共産党にとって不可欠な存在である」との認識を示していた。そのうえで、国有企業と民間企業の境界が不明確になりつつあり、企業活動へ党の関与が広がっていると示していた。
さらに、過去30年にわたり、中国経済に関する高氏の分析は政府の公式見解に先行するケースであったと評価され、資産価格の動向や国有企業の位置づけについても指摘を重ねていた。
発言制限と講演中止の経緯
一方で、GDP統計に対する疑問の表明が、結果として発言機会の制限につながったと報じられている。
報道によると、高氏は調査を受けていた時期に体調の悪化を自覚していたが、その状況は限られた関係者のみが把握していたという。その後、公の場への登場は限定的となり、2025年9月に北京大学のフォーラムへオンラインで短時間参加したことが、数少ない公的な露出の一例とされる。
高氏は2025年11月に国投証券のチーフエコノミストを辞任した。同年12月にステージ4のがんと診断された。
高氏は近年、中国経済の現状について複数回発言しており、2024年12月には、パンデミック後の社会状況について「高齢者は比較的活発だが、若者や中年層の活力が低下している」との認識を示し、関心を集めた。
その後も、高氏は中国の実質的なGDP成長率が約2%程度にとどまると述べており、これらの発言を受けて、SNSのアカウントが利用できなくなった。
学界・SNSの反応と評価
高氏の死去を受け、中国のSNSでは追悼の投稿が相次いだ。発言内容について評価する声の一方で、現在の経済学界の状況を懸念する意見も見られた。
また、経済学者の林采宜氏は、高氏が過去に当局から発言内容について注意を受けていたと明らかにしている。2018年には、政府関係者が会議の場で高氏の発言に言及し、管理の強化が必要だと指摘していたという。
香港メディアによると、高氏の追悼式は7月11日、北京の八宝山葬儀場で行われ、数百人が参列した。
『経済観察報』は、告別式で北京大学校友会の関係者が高氏を「率直で節度ある人物」と評価したと伝えている。
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