中共はなぜ輸出を死守するのか 補助金・雇用・外貨の構造

2026/07/08
更新: 2026/07/08

2025年、中国の対外輸出額は26兆9900億元に達し、前年比6.1%増となった。ドル建てでは5.5%増である。さらに、2026年1〜5月の輸出額は累計で11兆9100億元に達し、前年同期比11.8%増と大きく伸びた。中国の輸出規模は、まさに驚異的だといえる。

しかし、その数字の背後には、政府による巨額の財政支援がある。

現在、中国の年間輸出税還付額は、およそ2兆元に上る。つまり、中国は輸出を支えるために、2兆元規模の財政支援を行っていることになる。この金額は、中国の年間財政総収入の10%以上に相当する。比較すると、中国全体の社会保障・雇用関連支出は4兆4千億元程度である。

貿易会社の経営者からは、こんな声もよく聞かれる。

「苦労して商品を売っても、利益は輸出税還付でようやく出ている」

中国共産党(中共)にとって、これほどの財政支援を行い、採算を度外視してまで輸出を支え続ける狙いは、目先のわずかな利益を得ることだけではない。中共が輸出を死守する背景には、少なくとも次の四つの目的がある。

一、雇用維持は政局安定の最低ライン

中共国家統計局のデータによれば、貿易業界の直接雇用者数は数千万人に上る。直接・間接的に支えている雇用は、約1億5千万〜1億8千万人に達する。中国では、数億人の労働者が貿易およびその川上・川下の産業チェーンに組み込まれている。貿易関連企業が倒産したら、それは単なる企業の損失にとどまらない。大規模な労働者や農民工の失業につながる。

輸出企業に税還付や補助を行うことは、採算面では割に合わなくても、何千万人もの雇用と収入を守ることにつながる。雇用が保たれれば、社会不安の拡大を防ぐことができる。中共政権にとって、政局の安定は最優先事項である。社会の動揺がもたらすコストは、輸出への財政支援よりもはるかに大きい。

二、世界市場で主導権を握り、規模の力で競争相手を退ける

太陽光発電、リチウム電池、EVなどの現代製造業は、規模の効果に大きく左右される。生産量が増えれば、研究開発費や生産コストを分散でき、単位あたりのコストを下げることができる。採算を度外視して製品を世界中に売り込めば、膨大な出荷量によって研究開発コストを回収しやすくなる。

中国の産業チェーンがコストを世界最低水準まで下げ、技術改良を重ねて先端水準に近づけば、市場規模が小さく、コストの高い欧米の同業企業は競争力を失っていく。最終的には、経営破綻に追い込まれる企業も出てくる。競争相手が倒れれば、中共は技術と生産能力の両面で圧倒的な優位を握ることができる。

過去20年以上にわたり、中共はこの手法によって、欧米諸国の多くの製造業を衰退に追い込んできた。

三、外貨と戦略資源を確保

ドルは、国際市場で資源や先端設備を調達するための基軸通貨である。人民元の国際決済に占める割合は上昇しているものの、原油、鉄鉱石、大豆、希少金属、一部の先端設備を世界市場で購入する際には、依然としてドルへの依存度が高い。

中国は、国民一人あたりの資源保有量が比較的乏しい国である。中共は安価な工業製品を輸出することで、ドル建ての外貨を獲得してきた。その外貨は、戦略的な原材料を購入し、備蓄するために使われている。そして、それが国家運営やインフラ整備を支える原資となっている。

四、国内の巨大な生産能力を吸収し、経済内部の連鎖崩壊を避ける

中国は、世界でもっとも裾野が広く、巨大な生産能力を持つ工業体系を有している。もし生産された商品を輸出によって世界市場に売ることができなければ、それらはすべて国内に積み上がることになる。

深刻な過剰生産は、国内企業による生き残りをかけた自殺的な価格競争を引き起こす。その結果、業界全体の赤字、企業倒産、さらには銀行の巨額の不良債権につながる。最終的には、金融システム全体を揺るがす危機を招く恐れがある。

輸出は、国内の過剰生産を海外に逃がす巨大な「安全弁」となっている。

西側諸国の政治家や一部の学者は、このようなモデルをしばしば「採算を度外視したダンピング」だと批判している。

米欧企業にとって、目の前の競争相手は単なる一企業ではない。中共が国の力を総動員して支える一つの産業そのものである。通常の企業間競争としては、欧米企業が不利に立たされるのは避けにくい。

米欧で関税障壁が高まるなか、中共は「補助金に頼り、採算を度外視して商品を売る」段階から、「技術と資本を背景に、採算を度外視して海外生産拠点を広げる」段階へと移行しつつある。生産ラインを海外に移し、新たな形のグローバル化を進めようとしているのである。

こうして見ると、先進国がどのような措置を取ったとしても、中共の支援を受けた企業が世界各地の市場で存在感を強めていく流れを止めるのは容易ではないように見える。

2000年以前、国際市場の扉が中国に対して閉ざされていた頃、各国の製造業はなお活力を保っていた。しかし、中共の経済体制をグローバル市場に受け入れて以降、欧米先進国の製造業は次々と衰退していった。

現在、中国経済は輸出に大きく依存する構造から抜け出せずにいる。その影響は中国国内にとどまらず、世界の産業秩序にも及んでいる。EUとアメリカには、関税措置だけではない、より長期的で総合的な対応が求められている。

王至清