茂木敏充外相と中国の王毅外相が、フィリピン・マニラで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)関連の一連の外相会議の場で、短時間のあいさつを交わした。日中外相の接触は、両国関係が冷え込んだ昨年11月以降で初めてである。ただし、やり取りは通訳を介さない簡潔なあいさつにとどまり、茂木氏は内容の説明を避けた。冷え込んだ関係を動かす糸口となるかについては、日本政府内でも慎重な見極めが続いている。
通訳なしで交わした短いあいさつ
茂木氏は7月23日、マニラでの臨時会見で、前日22日正午ごろに会場内で王毅外相と短時間あいさつを交わし、二国間関係について言葉を交わしたと明らかにした。詳細については「外交上のやり取り」であることを理由に言及を控えた。やり取りの長さや使用言語について問われると、短時間で通訳を介さずに行ったと説明した。
注目すべきは、今回の接触が正式な二国間会談ではなかった点である。茂木氏によれば、日本とASEANの会合の直前に中国とASEANの会合が設定されていたため、両外相が会場内で「すれ違う」形となり、接触の機会が生じたという。茂木氏は、日本はあらゆるレベルでの対話に前向きであるとの立場を一貫して示してきたと強調し、地域の平和と安定において日中双方が大きな責任を負っている以上、対話の継続は極めて重要であると述べた。
ASEAN会議で確認した協力の方向性
今回の会合では、ASEANとの関係強化も主なテーマとなった。
茂木氏は成果として、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の考え方を示し、ASEAN独自の構想であるAOIP(ASEANが提唱するインド太平洋地域における協力と平和・安定の促進を目的とした外交・経済構想)への支持を改めて表明した。また、エネルギー供給網の強化を目指す「パワーアジア」や、脱炭素の枠組み「AZEC(「アジア・ゼロエミッション共同体」)とは、11カ国(豪州、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム(アルファベット順))のAZECパートナー国が参加し、域内のカーボンニュートラル/ネット・ゼロ排出に向けた協力のための枠組み)」について、協力の方向性を確認したとしている。
さらに、北朝鮮や東シナ海・南シナ海、ミャンマー、イラン、ウクライナなどの情勢について、日本の立場を説明し、関係国との認識共有を図った。
この中で茂木氏は、力や威圧による一方的な現状変更は、いかなる地域でも認められないと強調した。また、南シナ海の行動規範は国連海洋法条約に沿うべきだとの考えを示した。
イラン情勢とホルムズ海峡への懸念
会合では、イラン情勢も議題となった。
茂木氏は、7月初旬以降、アメリカとイランの間で軍事的な応酬が再燃し、民間船舶への攻撃が相次いでいることについて、深刻な懸念を示した。そのうえで、関係国とともに事態の沈静化と、ホルムズ海峡での追加的な費用を伴わない自由で安全な航行の重要性を確認したとしている。
日本は原油の多くを中東に依存しており、ホルムズ海峡の安定は経済に直結する。23日には、国際的な原油価格の指標が1バレル100ドル(約1万5千円)を超えた。
ロシア外相とも短時間接触
茂木氏はこのほか、21日に行われた夕食会でロシアのラブロフ外相とも短時間あいさつを交わし、意見交換を行ったことを明らかにした。
一方、ASEAN地域フォーラム(ARF)には北朝鮮の出席はなく、議席は空席となった。また、茂木氏は就任間もないイギリスのミリバンド外相とも会談したとしている。
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