中国 現地取材で見えた共通の構図

予告なきダム放流 支援不足 情報統制 中国で繰り返される「天災人禍」

2026/07/25
更新: 2026/07/25

中国ではこの夏、各地で異常気象による被害が相次いでいる。しかし、被害を大きくしたのは豪雨やひょうなどの自然災害だけではない。ダム放流や避難情報の不足、被災後の対応の遅れなども重なり、住民からは行政対応を疑問視する声が各地で上がっている。

本紙が現地取材や住民への聞き取りを通じて確認した各地の実情からは、災害の陰で共通して繰り返される問題が見えてきた。

広西チワン族自治区ではダム決壊による洪水、陝西省や河北省では豪雨とひょう、重慶市では土砂崩れ、そして東北部の吉林省では豪雨にダム放流が重なり、街や農村で深刻な被害が広がった。

陝西省宝鶏市では、わずか30分ほどの豪雨で道路が川のようになり、1階の店舗や住宅は膝の高さまで浸水した。多くの車が水没し、道路やトンネルでは立ち往生する人が続出。救助隊の拠点まで浸水し、救助活動にも影響が出た。

河北省石家荘市や廊坊市、滄州(そうしゅう)市でも街全体が冠水し、道路には動けなくなった車が取り残された。住民は「目の前で車が流されても何もできなかった」「水が引いた後には泥だらけの街だけが残った」と肩を落とした。

陝西省の一部では巨大なひょうが降り、トウモロコシやリンゴなど収穫前の農作物が壊滅的な被害を受けたほか、西安市では暴風で電柱や大木が倒れる被害も相次いだ。

吉林省では豪雨に加え、ダム放流によって下流の村々が広範囲で浸水した。養豚農家では豚800頭以上が流され、農地も水没。今年の収穫を断念せざるを得ない農家も少なくない。住民によると、避難指示は出たものの、水位がどこまで上がるのかなど具体的な説明はなく、多くの人が家財を持ち出す時間もないまま避難したという。被災した養豚農家は、政府に支援を求めても補償の説明はなく、SNSで被害を訴えたところ、返ってきたのは支援ではなく、「動画を削除せよ」という連絡だったという。

今回紹介したのは、海外にも情報が伝わった一部の事例にすぎない。中国では災害に関する情報も厳しく管理されるため、表に出ていない被害や混乱がほかにもある可能性は否定できない。

それでも各地から伝わる映像や住民の声には、共通する光景が浮かぶ。十分な説明のないまま行われるダム放流、避難する時間もない突然の浸水、被災後もなかなか届かない支援、そして被害を訴える声に削除を求める対応。自然災害だけでは終わらない悲劇が、各地で繰り返されている。

中国国内を含む華人圏では、大規模な災害が起きるたび、「天災人禍(てんさいじんか)」という言葉が人々の間でささやかれてきた。「天災」は豪雨や地震などの自然災害、「人禍」は共産党統治下での行政の判断や対応によって被害が拡大することを指す。そして、その言葉とともに、「共産党政権下では天も怒っている。昔の王朝が滅ぶ前もこうだった。共産党政権も終わりが近いのではないか」という声も、人から人へと語り継がれている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!