トランプ氏が空母のカタパルトを「電磁式」から「蒸気式」へ 知っておくべきこと

2026/08/28
更新: 2026/08/28

米海軍は、トランプ大統領の指示を受け、新型空母に旧式の蒸気式カタパルトを搭載する方向で正式に検討を進めている。ただ、こうした方針転換は、数十年にわたり取り組んできた空母艦隊の近代化を複雑化させる可能性がある。

トランプ氏は8月13日、建造中の空母「ドリス・ミラー」に搭載予定だった電磁式航空機発艦システム(EMALS)を取りやめるよう海軍に命じた。さらに、電磁式兵器用エレベーターも廃止し、従来型の油圧式リフトに戻すよう求めた。

電磁式システムは、フォード級空母の1番艦と2番艦にはすでに搭載されており、3番艦と4番艦の建造も進んでいる。

フォード級空母の設計を見直すよう求めるトランプ氏の決定は、海軍がすでに艦艇の近代化と建造をめぐって厳しい状況に置かれているさなかに下された。中国共産党政権が艦隊を急速に増強する中、米海軍は対抗するための艦艇を近代化し、計画通りに配備することを迫られている。

電磁式システムを製造する米ゼネラル・アトミックス社はトランプ氏の新たな指示に反発し、設計変更によって「コスト、スケジュール、統合面で重大なリスクが生じる」と警告している。

トランプ氏が8月13日に発出した大統領覚書は、国防総省と海軍に対し、60日以内に電磁式航空機発艦システムと電磁式兵器用エレベーターを従来型に置き換える計画を提示するよう求めている。計画には工程と必要な資源も盛り込むよう指示した。

海軍は今週、エポックタイムズに対し「大統領は将来の空母について設計変更を実施するよう命じた。海軍は大統領の意向を実現するための選択肢の検討を始めている」と説明した。

ドナルド・J・トランプ大統領は2017年3月2日、バージニア州ニューポートニューズで就役前の空母「ジェラルド・R・フォード」を視察した(米海軍写真:マス・コミュニケーション・スペシャリスト3等兵曹 キャスリン・メイ・O・キャンベル)
 

トランプ氏、電磁カタパルトを長年批判

電磁式航空機発艦システムは、旧型のニミッツ級空母に対するフォード級の優位性を支える主要装備の一つだ。しかし、トランプ氏は長年、このシステムを批判してきた。

トランプ氏は2017年、米誌タイムとのインタビューで、電磁式カタパルトについて信頼性が低く、維持・運用が難しいと批判。「理解するにはアルバート・アインシュタインにならなければならない」と揶揄した。

その後も批判を繰り返し、先月の「ペンシルベニア防衛・イノベーション・サミット」でも、「電磁カタパルトに費やした馬鹿げた数十億ドルを、これ以上建造される艦船には使わせない」と述べた。

トランプ氏はさらに、「良くない。蒸気式ほど良くない。複雑すぎる」と指摘。「カタパルトが作動しなかったため、艦船を2度呼び戻さなければならなかった」とも語った。

フォード級の電磁式発艦システムをはじめとする新型装備は、ニミッツ級よりも高い頻度で航空機を発艦、回収、再武装し、再発艦させることを可能にするために導入された。航空機の発艦頻度は「ソーティー生成率」と呼ばれる。

ニミッツ級は1日120回の航空機発艦を継続的に行えるよう設計され、限定的な高強度作戦では最大でその2倍まで増やせる能力を持つ。

これに対し、フォード級は1日160回の発艦を継続し、最大270回まで増強できる能力が想定されている。

電磁式カタパルトには、航空機の発艦時に機体へ加わる機械的負荷を軽減できる利点もある。発艦時の負荷が小さくなれば、航空機の整備負担も減り、任務に投入できる機体数の増加につながる。

米ヘリテージ財団で海上戦力と先端技術を研究する上級研究員ブレント・サドラー氏は、電磁式カタパルトはさまざまな航空機に対応できるよう迅速に調整できる一方、蒸気式カタパルトは「空母から射出できる重量の範囲が非常に狭い」と指摘する。

サドラー氏はエポックタイムズに対し、電磁式カタパルトの調整能力によって、将来配備されるより重量のある航空機、例えば海軍が計画する次世代ステルス戦闘機も、より確実に発艦させられるとの見方を示した。

フォード級のさまざまな設計上の特徴は、ニミッツ級と比べ、1隻当たりの運用期間全体のコストを約40億ドル削減することも狙っている。

第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)所属のF/A-18E「スーパーホーネット」が2026年2月28日、対イラン戦闘作戦を支援するため、空母「ジェラルド・R・フォード」の飛行甲板から発艦した(米海軍写真)

電磁式の信頼性に疑問も

米議会調査局(CRS)が2025年12月に公表した報告書によると、フォード級1番艦「ジェラルド・R・フォード」は初の実戦配備で、指揮官から与えられた任務を遂行するのに十分な発艦率を達成した。

ただ、同報告書は、同艦が公式に定められた性能要件を満たす発艦態勢と発艦ペースを、なお実証できていないと指摘した。

報告書によれば、フォードの乗組員は各種システムの障害を解決するため、外部の技術支援にも頼らざるを得なかった。電磁式カタパルトについては、信頼性と整備性の問題が「ソーティー生成と飛行作戦に悪影響を及ぼし続けており、運用上の有効性と適合性を実証する上で最大のリスクとなっている」とした。

フォードは2024年1月に初の配備を終え、昨年6月に2回目の配備に出た。

海軍は2月26日の声明で、データの分析を続けているとしながらも、予備的な報告では、電磁式カタパルトなど新型システムの導入により、フォードがニミッツ級を上回る発艦率を達成したことが示されていると説明した。

海軍は「現時点で、これらのシステムは設計通りに作動しており、フォードは予定された任務を継続している」とした。

2月28日、米軍はイランへの攻撃を開始した。フォードは初期の作戦を支援した後、5月に母港へ戻った。これにより、ベトナム戦争以来、最長となる空母の展開を終えた。

この2回目の配備で、フォードは計1万2200回の航空機発艦を実施した。

サドラー氏は、最終的には運用実績がトランプ氏に電磁式カタパルトの維持を納得させるとの見方を示す一方、海軍自身が積極的に説明責任を果たす必要があると指摘する。

「海軍にはデータがある。海軍はそれを根拠に主張すべきだ。データは現行方針を維持することを支持すると確信している」と述べた。

設計変更でさらなる遅延の恐れ

電磁式カタパルトがなお期待された性能を十分に発揮していないとしても、トランプ氏が蒸気式への回帰を進めれば、海軍は難しい立場に置かれる可能性がある。

海軍が電磁式カタパルトを支持するデータを提示したにもかかわらず、トランプ氏が蒸気式への回帰を強く求め続ければ、海軍はトランプ氏の任期が終わるのを待つのか、それとも高額で時間のかかる設計変更に踏み切るのか、判断を迫られることになる。

最後の蒸気式カタパルトが搭載されたのは、20年以上前に就役した「ジョージ・H・W・ブッシュ」だった。アメリカのメーカーが直ちに蒸気式カタパルトの生産を再開できるかどうかは明らかになっていない。

アメリカの産業基盤が現在、新たな蒸気式カタパルトを製造できる能力を備えているのか問われたホワイトハウスは、エポックタイムズに対し、過去に発表したプレスリリースを参照するよう回答した。同リリースは、トランプ氏の指示によって「海洋産業基盤に生産能力と競争を取り戻す」としている。

フォード級空母はすでに建造の遅れに直面している。

海軍は4月、フォード級3番艦「エンタープライズ」の引き渡しが8か月遅れ、2030年7月から2031年3月になると明らかにした。4番艦「ドリス・ミラー」の引き渡しも2年遅れ、2034年2月となる見通しだ。

海軍退役パイロットで民主党所属のマーク・ケリー上院議員は、トランプ氏が求める設計変更に反発している。

ケリー氏は4月13日、ソーシャルメディアへの投稿で、「私は空母の艦首から何百回も発艦した経験があり、航空工学の修士号を持ち、テストパイロットでもある。それでも、海軍に対して艦艇の特定システムをどう設計すべきか指図しようとは思わない」と書き込んだ。

サドラー氏は、トランプ氏が最終的には設計変更の要求を和らげる可能性が高いとみている。

「大統領はこの場合、機能し、見栄えが良く、非常に高い性能を発揮する空母を望んでいるのだと思う。そして技術者からデータを受け取れば……数字が答えを示すことになる」と述べた。

軍事と外交問題を専門とするエポックタイムズの記者