空自の緊急発進347回 中国・ロシア軍機に警戒続く 最前線の負担浮き彫り

2026/09/13
更新: 2026/09/13

日本周辺では、北のロシア軍機と南の中国軍機の活動が続いている。航空自衛隊は、領空侵犯のおそれがある航空機に対応するため、緊急発進を繰り返している。

防衛省統合幕僚監部が9月11日に公表した月間緊急発進実施状況によると、2026年度の4月から8月までの5か月間に、航空自衛隊が実施した緊急発進は347回だった。1日当たり2回を超える計算となる。

ロシア軍機と中国軍機への対応が続く中、8月と9月には沖縄で航空自衛隊のF-15戦闘機のトラブルが相次いだ。事故原因は調査中だが、最前線での警戒任務を支える機体や隊員への負担が課題となっている。

8月はロシア軍機への対応が中国軍機を上回る

8月、ロシア機に対する緊急発進は48回で、中国機に対する25回を上回った。2026年度に入ってから、ロシア機への対応が中国機を上回ったのは初めてである。

ロシア機に対する緊急発進は、4月の12回から、5月は10回、6月は20回、7月は38回、8月は48回となった。5月に一時減少したものの、6月以降は増加が続いている。

防衛省によると、ロシア軍機には、核兵器を搭載できるとされるTu-95戦略爆撃機やSu-35戦闘機などが含まれる。

7月21日には、Tu-95などロシア軍機とみられる航空機が、北海道の奥尻島沖から神威岬沖にかけて飛行した。航空自衛隊は緊急発進して対応した。

北海道など北方空域を担当する北部航空方面隊の緊急発進は、6月の4回から、7月は32回、8月は41回に増えた。北方空域でのロシア軍機の活動が増えていることがうかがえる。

中国軍機への緊急発進は累計215回 南西諸島周辺で高水準

8月、中国機に対する緊急発進は25回で、前の月の51回から減少した。

ただ、4月から8月までの累計では、中国機への緊急発進は215回で、全体の約62%を占める。中国機への対応は引き続き最も多い。

 

4月から7月にかけて、中国機への緊急発進は毎月40回台後半から50回を超える水準で推移した。東シナ海や南西諸島周辺を担当する南西航空方面隊は、4月から8月までの5か月間で159回の緊急発進を実施している。

8月の回数が減少したことだけで、中国軍の活動が弱まったと判断することはできない。尖閣諸島を含む南西諸島周辺では、中国軍による海や空での活動が続いている。

中露の共同飛行で増す北方・南西空域の同時対応リスク

ロシアと中国は、日本周辺で共同飛行を行っている。

2025年12月には、ロシアのTu-95爆撃機2機が東シナ海で、中国のH-6爆撃機2機と合流し、四国沖の太平洋にかけて飛行した。この際、中国のJ-16戦闘機4機が、沖縄本島と宮古島の間を飛行する爆撃機に合流したことも確認されている。

ロシアと中国が日本周辺で共同飛行を行う場合、航空自衛隊は北方空域と南西諸島周辺の両方で、同時に対応を求められる可能性がある。

緊急発進は増加傾向

航空自衛隊の緊急発進は、近年、全体として減少傾向にあった。

 

2025年度は595回で、過去5年度で最も少なかった。

一方、2026年度は4月から8月までの5か月間で347回となった。第1四半期に当たる4月から6月までの緊急発進は181回で、前の年度の同じ時期の157回を上回った。

2026年度の数値は、まだ5か月分の速報値である。統合幕僚監部は、今後、数値が変わる可能性があるとしている。年間の回数については、今後の公表を待つ必要がある。

「南の守り」として、那覇基地でスクランブル待機に当たるF-15(航空自衛隊那覇基地ホームページ)

那覇空港でF-15トラブル相次ぐ

沖縄県の那覇空港では、8月と9月に航空自衛隊のF-15戦闘機のトラブルが相次いだ。

8月18日午後、航空自衛隊那覇基地所属のF-15戦闘機が、緊急発進任務から帰投して那覇空港に着陸した際、左主脚が折れ、左主翼を滑走路に接触させた状態で立ち往生した。滑走路は約4時間閉鎖され、民間機40便に影響が出た。

この機体は、対領空侵犯措置の任務に就いていた。那覇基地は武装した状態だったことを認めたが、実弾を搭載していたかどうかについては、「任務上の都合」として明らかにしていない。

9月10日夜には、緊急発進中のF-15に油圧系統の不具合が確認され、那覇空港に緊急着陸した。着陸時には着陸拘束装置が使われ、第2滑走路は約1時間閉鎖された。民間機14便に遅れが出たと報じられている。

2件はいずれも、緊急発進任務中、または任務からの帰投時に起きた。F-15には配備から長期間が経過した機体もある。

事故の直接的な原因は、調査結果を待つ必要がある。ただ、警戒任務が続く中、機体の整備や維持、隊員の勤務への負担を適切に管理していく必要がある。

那覇空港では、民間機と自衛隊機が滑走路を共用している。自衛隊機のトラブルが発生した場合、民間航空便の運航にも影響が及ぶ。

24時間警戒を支える機体整備と人員確保が課題

4月から8月までの公表分では、北朝鮮機に対する緊急発進は0回だった。

ただ、これは北朝鮮による安全保障上の脅威がなくなったことを意味するものではない。北朝鮮は弾道ミサイルの発射などを続けており、こうした動きは緊急発進の回数には表れにくい。

日本周辺では、ロシア軍機、中国軍機、北朝鮮による弾道ミサイルなど、複数の安全保障上の課題が重なっている。

航空自衛隊のパイロットは24時間態勢で待機し、警報が発令されれば短時間で緊急発進する。領空を守るための任務を続けるには、機体の整備、人員の確保、基地の運用体制を維持・強化していくことが重要である。

緊急発進が増加する中、最前線の負担をどのように支えるかが課題となっている。