韓国の英字紙「コリア・ジュンアン・デイリー(中央日報)」は10月1日、韓国の情報機関が半導体と電池分野の第一線の研究者に対し、技術流出のリスクが高まっているとして、中国からの採用の誘いに警戒するよう呼び掛けていると報じた。
業界や学界の関係者によると、韓国の国家情報院は先端技術の流出を防ぐため、中国共産党(中共)政府が採用対象に挙げた韓国の第一線の研究者約80人を注視している。
匿名を希望したある教授は「半導体分野の教授が名簿の中で最も大きな割合を占め、電池など他の分野の教授も含まれていると聞いている。国家情報院は、中国側からの採用の誘いに慎重に対応するよう、彼らに助言し続けている」と述べた。
中共は長年、さまざまな事業を通じて科学者や技術専門家を誘致してきた。中でも特に注目されているのが、2008年に始まった「千人計画」であり、研究費や転居・生活基盤の整備に必要な資金の支給など、優遇措置を通じて海外の人材を誘致することを目的としている。
韓国の研究者によると、中共からの引き抜きの誘いは日常茶飯事となっている。
サムスン電子とIBMで半導体の研究開発に携わった浦項工科大学の半導体工学教授、イ・ビョンフン(李炳勲)氏は「浙江省を含む中国各地から毎週、採用のメールが届く。提示されるのは年俸3億ウォン、年俸と同額の業績賞与、年間約10億ウォンの研究費で、住宅や車まで用意される」と述べた。
イ氏は、情報漏洩の問題を別にして、純粋に研究環境を比較すれば、中共側の研究者優遇策や給与・待遇は、韓国の学界の人々を「引き付けやすい」と指摘した。
ただ、中共側の野心はそれにとどまらない。採用サイト「リンクトイン(LinkedIn)」のプロフィールに、サムスン電子やSKハイニックスでの勤務経験を記載している人は、役職の高低にかかわらず、中国企業や人材紹介業者から大量の連絡を受けるという。
韓国の半導体業界のある関係者は「技術者だけでなく、マーケティングや営業の担当者も対象だ。どの職種にも、中国企業が必要とする経験や情報がある」と述べた。
人材紹介業者は特に、退職を控えた韓国の技術者に注目し、韓国で新たな仕事を見つけるのが難しい人に高給を提示している。
中国で働いた経験のあるサムスン電子の元幹部は、半導体業界の不振で退職する幹部が増えると、中国の人材紹介業者はその隙に付け込むと述べた。幹部は退職後、心理的に弱くなりがちだからだという。
もちろん、外国企業への転職が必ず技術流出を意味するわけではない。問題は、一部の営業秘密や核心技術が、許可なく盗まれ、利用される可能性にある。
韓国産業保安協会会長で、元特許法院判事のカン・ギジュン(姜基重)氏は「すでに法廷で審理された事例を見ると、多くの人は経験を頭の中に収めて退職しただけではない。前の勤務先の資料をダウンロードしたり、複製したり、整理したりして持ち出している」と述べた。
カン氏は、記憶だけを頼りに情報を再現した場合でも、営業秘密の侵害に問われることを免れない場合があると付け加えた。例えば、情報の各部分が公開されていても、それらを組み合わせると、漏洩してはならない情報とみなされる可能性があるという。
韓国警察庁のデータによると、警察は2025年に技術流出事件179件を摘発し、このうち33件が国外への流出に関わる事件だった。国外への流出事件のうち、18件(54.5%)は流出先が中国だった。
報道によると、中国企業が実際に買い取りたいのは、韓国企業が数十年にわたり蓄積してきた製造工程の技術である。同じ設備を使っても、工程の各段階での細かな調整や、不良の原因を追跡する能力によって、歩留まりに大きな差が生じることを、中国企業は認識している。
サムスン電子の創業者で初代会長のイ・ビョンチョル(李秉喆)氏は「技術は数え切れないほどの試行錯誤の結果であり、資金、時間、人材の投入を必要とする。共産主義の中国にとって、重要な人材を迎え入れれば、この過程を省くことができる。そのため、韓国での給与の数倍を支払っても、利益の出る取引となる」と述べた。
さらに、中国企業に引き抜かれた韓国の技術者が、かつての同僚に転職を促す可能性もある。
報道によると、こうした韓国の技術者は、技術や経験を提供すると中国企業内での地位が低下する。そのため、一部は採用仲介業に転じ、元同僚を中国企業に紹介して手数料を得ている。
韓国企業は、従業員宅への立ち入り検査、携帯電話のカメラの使用制限、文書の分類、外部への送信管理などの措置を通じて、情報漏洩を防いでいる。退職する従業員には秘密保持契約への署名を求め、重要な人材には競業避止契約への署名も求めている。一度技術が流出すると、損失を取り戻すことが難しくなる可能性があるためだ。
編集責任者:林姸
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