何清漣:中共政権のマフィア化、「正体不明の暴徒」を操作

2006/06/26
更新: 2006/06/26

【大紀元日本6月26日】今月中に中国で発生した数件の人権侵害案件からみると、中共政権のマフィア化が、この国家における人権状況を改善する上で最大の障害となっている。

国内で弾圧を受ける中国人は、直訴する場がない…政府は共産党の機構、メディアは共産党の喉、存在が許され政府に発言できる「非政府組織」、例え「工会」(工人連合会)、「婦聯」(婦人聯合会)などは、実質上、非政府組織と名乗る政府機構である。すると、中国人は、国際社会に期待を寄せ、中共政権が「面子」を考慮し、政治暴挙を少しでも謹慎することを願い、自分たちの活動空間を得て「平和かつ理性的」に政府と対話し、人権を縛る鎖が少しずつでも緩められることを懇願している。

率直に言うと、国際社会は昨年から中共政権に対する態度をすこし変えた。この転換は欧州の政局変化がもたらしたものである。ドイツではシュレーダー元首相が政権から降り、メルケル首相が執政してから、積極的に米国との関係改善に取り組み、中国の人権問題はようやく欧州連合(EU)の議事に上った。5月には米国のブッシュ大統領は中国の民主活動家3人と面会した。欧州議会のスコット副議長は、民主化されていない国家の情況を改善させるために、EUは1・42億ユーロ(約1・6億ドル)の予算を可決したことを公表した。

中共政権も実行動で欧米国家による中国人権への関心に応対した。6月8日、三峡ダム建設で強制移転された農民への正当補償を求める農民代表・付先財氏は、この問題についてドイツテレビ局の取材を受けたため、中共公安当局に呼び出され取調べを受けた後、帰宅の途中で「正体不明の暴徒」に襲撃され、重体に陥り、命が助かっても余生は寝たきりになるとの宣告を受けた。しかも病院側は治療代が払えない付先財氏の手術を拒否したので、付先財氏の命を救うために、ドイツ大使館がその費用を全額出資した。付先財氏の話によると、彼はこれまでに頻繁に同様な騒乱や脅迫を受けてきたという。警察もこのような暴行に直接参加するが、絶妙なのはこれらの暴徒は「正体不明」であることだ。ここ数年全国の民主活動家たちが度々「正体不明の暴徒」に襲撃されている情況と驚くほど合致している。

正体不明な暴徒」を駆使して、民主活動家を襲撃させるのは、中共政権にとって少なくとも2つの利点がある。

①中共政権がこれらの「正体不明な暴徒」を捜査すると承諾さえすれば、いかなる責任も負う必要がない。たとえ世論がこれらの暴徒は中共の指示を受けていると疑っても、証拠はどこにもない。たとえ国際社会が正義感に燃えても、中共政権に対し、これらの「正体不明の暴徒」の代わりに法的責任を背負うことを要求できない。一歩下がれば、国際社会が注目していない案件となると、「正体不明の暴徒」の捜査については中共政権は承諾すらしない。昨年の太石村での土地収用を巡る農民抗争事件で、支援した人権弁護士・郭飛熊氏は、幾度も「正体不明の暴徒」に暴行されたが、中共政権が完全無視し、犯人探しの承諾すらしなかった。

②マフィア勢力の介入を利用して、民主活動家たちに多大な心理圧力を与える。民主や人権のために奮闘するこれらの方々は、政治使命感に支えられ励んでいる。マフィア勢力の行動は最低ラインがないため、手段を構わず襲い掛かってくる。それに加え、自分自身は命を惜しまなくても、家族に被害が及ぶと、勇士たちもさすがに躊躇してしまう。

中共政権が「正体不明の暴徒」を使って、民主活動家たちを痛めつける手法は実にイラクのフセイン元大統領や、北朝鮮の金正日総書記と比べれば、何枚も上手である。フセインは批判者に対し、舌を切断する刑を課したため、国際社会で悪名高いイメージを定着させてしまった。中共政権はもちろんフセインと同類にリストアップされることを望んでいない。そうすると、「正体不明の暴徒」が手を貸せば、中共政権は国際社会を前に、永遠に堂々と政府コメントを出せる、国際世論の口を封じるにはこれが一番良い手段だ。国際社会はたとえどんなに有能でも、「正体不明の暴徒」を前に成す術をなくし、もちろんこのような暴徒を経済制裁することも不可能である。

私は2003年に「権力統治下の中国の現状とその前景」と題する文章で、中国では「公共権力が私物化され、政治暴力が合法化され、政府がマフィア化している」との幾つかの主流情勢について言及した。このような情況において、国際社会では当たり前の人権や、民主、自由価値などの理念を用いて、極道手法で社会を制御する中共政権を拘束することは、木に登って魚を求むことと同じである。

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