中国の雪害について

2008/02/23
更新: 2008/02/23

【大紀元日本2月23日】最近の新聞やテレビで中国の雪害の話が報道されている。昔から漢詩でも雪が詠われ古人から毛沢東主席まで雪を題材にした詩も多い。かなり以前の話であるが、筆者が訪中団に参加した節、成田空港が大雪のため離発着が遅延してしまい3時間余り遅れて北京についたことがあった。歓迎の宴で遅刻に恐縮する訪中団に対し中国側要人が、「中国では雪は豊作の兆とされ、むしろ目出度いことである」と演説されたことを記憶している。勿論、訪中団に対する中国式の思いやりだったのだろうが豊作の兆しである雪もやはり程度問題なのであろう。

今年の大雪は50年ぶりとかで折悪しく春節と重なり帰省する無数の乗客が立ち往生したそうだ。石炭の輸送が滞り或いは着氷のため送電線に異常を来し大規模な停電や交通渋滞が発生し経済損失も中国当局の発表ですら1100億元という巨額に上った由である。元々、春節は太陰暦の正月行事であり袁世凱が国家の祝日に定めたのが精々百年程前の由であるが、今や中国最大の祭日であり当局も流石に危機感を抱いたのであろう。国務院の領導達がわざわざ現地にまで出向いて帰省客に釈明慰労した由である。中国当局も必死だったのだろう、除雪には80万人もの人民解放軍、武装警察隊や戦車までが動員され、おそらくは融雪剤の類も相当の量が投入されたのであろう。北陸地方の豪雪地帯の住人から見ると積雪とも言えそうもない僅か数センチの積雪ですら東京の交通網が大いに乱れることもある。まして半世紀も雪害に悩まされることの殆どなかった省市や内陸部では大変な苦労のあったことであろう。お見舞いを申し上げたい。

決して天意だとか一事が万事とこじつける気はないが今回の雪害で改めて中国のエネルギーの石炭への依存度の高さや、高圧送電線網を含むインフラの脆弱性がクローズアップされたのは事実であろう。春節前後の民族大移動のような帰省ラッシュも大なり小なり都市戸籍と農村戸籍のもたらす不合理な経済効率を露呈したものであろう。大都市圏への人口集中は避けられないにしても広州駅だけで一時数十万人もの帰省客が溢れるというのは問題が過ぎよう。顧みれば人口衛星や軍備近代化に巨額の資金が惜しげもなく投入される一方で、中小炭鉱における事故の多発、ダルフールを含めなりふり構わぬ海外からのエネルギー源の調達、三農問題、食品の農薬汚染、人民元の切り上げの速度等々、気の遠くなるほど難問が山積しているが何れをとっても成長最優先が招いた弊害としか思えない。今少し調和のとれた発展が必要なのではなかろうか。胡主席の提唱した和諧社会もモットーだけでなく、本気で調和の取れた社会を目指さないと遅かれ早かれ古人のいう「天網恢恢疎にして漏らさず」式の災厄を招くのは避けられまい。早急に建前ではなく真に強圧政治から親民政策に、人治から法治に移行しないと中国人のみならず、人類全体の災厄となろう。客観的に見ても歴史上一党独裁政治は破綻する。人類史上空前の74百万人という党員こそ擁してはいるが中国共産党は政治組織として最早巨大化した恐竜にも似て適者生存の域を遥かに超えてしまったというのが世界の常識であろう。現に鉄の規律を誇った中国共産党から脱党者の数が32百万人を超えたというのが何よりの証拠であろう。実態では過半数以上の党員が精神的には離反していると思われる。残念なことに中国共産党が自ら上意下達の社会や組織を作りあげた結果、そもそも党内に下意上達つまり民意を汲み上げるシステムそのものが存在しない。その結果として本来の名分や建前とは裏腹に権力が腐敗し中央から地方まで正真正銘の共産党員による貪官汚吏が増殖し今や組織そのものが身動きが取れず立ち往生しているのが実態であろう。早急に抜本的対策が講じられなければ何れは広範囲に混乱を招き、それこそ人類全体の災厄になりかねないリスクを孕んでいる。さりとて現代中国では本来の人民ではなく共産党のみに権力が集中している以上、改革は上からしか出来ないのが実情であろう。従って唯一の方法は共産党中央の英断にかかっている。又、そうしてこそ本来の領導であろう。資本主義と社会主義の優劣は歴史が証明している。既に経済の方は資本主義化したのだから政治の方もマルクス・エンゲルスの生きた時代の古色蒼然とした社会主義から民主主義への移行しか選択肢はない。中国式民主主義なる羊頭狗肉で糊塗するには事が大き過ぎるし民は馬鹿では無い。残された時間はもうない。徒に共産党独裁の延命を図れば迷惑するのは中国の13億の民である。いまこそ領導が権力闘争に熱中するより民主化に努めた方が余程中国の為になり人類の幸福に繋がろう。オリンピックも近い、遅きに失せぬ内に国務院の英断を期待したいものである。

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