「中国共産党は中国を滅ぼし、世界を破滅に向かわせている」=米学者新著

2011/06/14
更新: 2011/06/14

米著名経済学者ピーター・ナヴァロ氏の新著『Death by China(中国が[世界を]破滅に向かわせる)』の出版記念会が7日、カリフォルニア大学アーバイン校で開かれた。同著は、中国共産党が世界を危険な境地に陥れている状況を力説した上、この「悪龍」たる共産党と対抗するよう世界に訴え、さらに、米国を代表とする西側世界が共産党政権に示した軟弱政策に異を唱えた。

 同著は、カリフォルニア大学アーバイン校の経済学教授のピーター・ナヴァロ氏と、実業家兼作家のグレッグ・オートリー氏の共著。ピーター・ナヴァロ氏は、CNNなどのビジネスニュース番組のコメンテーターとして出演したり、経済専門チャンネルCNBCのレギュラー出演者としても活躍している。

「ビンラディンを追いかけている間に『悪龍』を野放しにした」

「真相を伝えることは中傷ではない」と冒頭でこうつづった同著は、繁栄の中国の「舞台裏」をありのままに伝えた。共産党政権を「悪龍」と例える著者は、2001年9・11以降、米国はテロとの戦いに追われ、中共という「悪龍」を野放しにしたと指摘。同著ではその中共の「悪龍」ぶりをあるゆる角度から論究した。

 最初に取り上げたのは中国に氾濫する「毒食品」。「毒食品」を直接生み出しているのは悪徳業者であるが、そのような悪徳業者がはびこる背景には、共産党政権の儒教思想に対する破壊によりできた「道徳の空白」がある、と著者は指摘した。さらに、この「道徳の空白」により、中国は世界に対して、資源の略奪や、知識財産権の侵害を恣意に行い、環境や水資源を憚らずに破壊してきた。中国はいま、その自らの行為で、「世界の工場」から「世界一の公害国」に成り下がり、さらにその公害により世界が蝕ばれているという。

 また、経済について、「中国は共産主義式の『国家資本主義』を推進し、自由市場と自由貿易の代わりに、政府をバックとする国有企業を発展させることで重商主義貿易保護主義の政策を展開させている。これらの『武器』により、米国のすべての業界は徐々に、1つずつ滅ぼされていく」。特に著者は「グリーンエネルギー」の分野に危機感を示した。「政府の手厚いガードのもとで、中国の企業は、電気自動車や太陽光発電、風力発電などといった『グリーンエネルギー』市場への独占を進めている。この分野はまさに我々の政治家たちが、今後の米国の働き口として期待している分野だ」と警告する。

 2008年ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマン氏はかつてニューヨーク・タイムズにこのように語っている。「中国は重商主義政策を追求しており、貿易黒字を人為的に高い水準に維持している。そして、現在の世界経済の低迷の中、その政策は、率直に言って、略奪的である」。また、米ビジネス産業評議会のイアン・フレッチャー氏は著書『自由貿易はうまくいかない(Free Trade Doesn‘t Work)』の中で、中国のような主要な貿易パートナーが自由貿易のルールを守らないことが、自由貿易がうまくいかない理由だと主張している。「彼らは重商主義政策のもとで貿易保護主義を実行し、自身の利益のために(世界の)仕組みをもてあそんでいる」とフレッチャー氏は批判し、中国は「世界最大の重商主義の国」だと指摘した。

 さらに、軍事において、著者は、共産党政権は経済成長でもたらされた財で「軍事大躍進」を図り、緊張を高めることにより相手に譲歩を迫る「瀬戸際戦術」を用いてアジアの近隣諸国に挑発を繰り返している、と分析した。

 出版記念会にパネリストとして参加した米国在住の中国経済評論家・章家敦氏はこの点について、中国の軍部の指導者らはすでに中国の外交政策を左右する力を持っているとし、「共産党政権は米国と世界にとって脅威をなしている」という現実に米政府はもっと直視すべきだと指摘した。『Death by China』は、世界が中国に感じる憂慮を形あるものとして明確にした、と章氏は評価した。

 中国が仕掛けたサイバー戦争を例に、著者は中国のグーグル社に対する攻撃行為を挙げた。さらに、共産党政権が自身に都合の悪い情報にアクセスできないように構築した「グレート・ファイア・ウォール」を世界に輸出している、と指摘した。また、サイバー上のネットワークのみならず、人的にも、世界で巨大なスパイ・ネットワークを築いているという。「国家間の諜報活動は多くの国が行っているが、中国はとりわけルールを守らない」。記念会のパネリストの1人、中国国家安全部の元諜報員・李鳳智氏はこの点について、「中国の諜報活動は国家間に止まらない。彼らは海外にいる中国人をもターゲットにしている。ときに彼らは海外の政治勢力を動かし、その力を利用して海外にいる中国人に圧力をかけ、間接的に自身の政権の「安定」を図っている。これは共産党政権の独特なスパイ活動の形式となる」
 

出版記念に出席した100人超の学界と経済界の人たち(劉菲=大紀元)

「中国共産党は中国を滅ぼす」

同著の著者の1人であるグレッグ・オートリー氏は本紙取材に対し、「ほとんどの場合はわれわれが言う『中国』は『中国共産党』を指しており、『中国共産党』こそが世界にとって脅威である」と語った。「中国人も同じ脅威にさらされている。冷酷無情な集権政府が問題の根源だ」と氏は強調した。

 同著にこのような記述がある。「(世界と)同じく危険に迫られているのは十数億の中国人である。共産党政権の環境汚染型経済発展モデルや、階級関係が緊張した共産党の強権政治、さらにジョージ・オーウェルが描いた「全体主義」までも、中国人の生存を脅かしている」

 中共政権は少数民族の居住区を「自治区」と謳いながら、民族文化を徹底的に破壊している。西側世界に「五つ星工場」を見せびらかしながら、チャールズ・ディケンズが描く「血汗工場」や、「労働教養所」などに存在する奴隷工を搾取している。政府公認の「愛国教会」を建前に、「地下教会」の信者を恣意に逮捕する…。さらに著者らは、中共政権の法輪功に対する残酷でありながらも計算外れの弾圧についても言及した。「法輪功学習者はたびたび精神病院に入れられている。彼らの身には、あらゆる洗脳方式が使われた」。著者らは、コロンビア大学のイサン・ガットマン博士の国会での証言を引用し、中国の労働教養所に監禁されている法輪功学習者は50万から100万人に上り、全体の収監者の15~20%を占めていることを明らかにした。この数は、同迫害が毛沢東時代以来最大規模の迫害であることを物語っている。

 「『憲法』第35条、中国公民は言論・出版・結社・行進及び示威行動の自由を享受すること…」。記念会で著者が読み上げた中国の『憲法』に聴衆らから笑いがもれた。「天安門事件は中国の9・11である。その違いはテロリストは外在する者ではなく、中国共産党自身だ。自国民を泥落としマットとしか見ていない政権がどうして外国の商人に約束が守れるだろうか」と著者のオートリー氏は聴衆に問いかけた。

 同出版記念会は16日に、ワシントンの国会記者クラブでも開かれる。

(記者・劉菲、翻訳編集・張凛音)
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