自民党総裁選、論戦始まる 安倍首相「臨時国会で改憲案」

2018/09/10
更新: 2018/09/10

[東京 10日 ロイター] – 自民党総裁選の本格論戦が始まった。7日に立候補した安倍晋三首相と石破茂元幹事長は、10日午前に党本部で所信表明演説と共同記者会見に臨んだ。安倍首相は今秋にも召集予定の臨時国会で、憲法改正案を提出したい意向を表明。2019年10月の消費税引き上げは、予定通り実施したいと述べた。

石破氏はアベノミクスの成果を評価しつつも、個人所得の引き上げにつながっていない点を指摘。地方創生や低所得者対策の必要性を強調した。両候補とも北海道胆振東部地震による大停電を重要視し、電力インフラをめぐる政府・与党の議論が活発化しそうだ。

総裁選は7日に告示されたが、北海道地震の影響を考慮し、両候補は9日まで選挙活動を自粛していた。現時点で国会議員票の8割近くを押さえたとされる安倍首相3選の公算が大きいとみられているが、政策論争を踏まえた党員・党友の投票行動によっては、選挙情勢に変化が生じかねず、その点に同党内外の注目が集まっている。

<安倍首相、3年間の国土強じん化表明>

安倍首相は、たび重なる災害を踏まえ「防災・減災でライフラインを維持できるよう3年間国土強じん化に取り組む」と述べた。

また、首相就任後6年間の成果として円高是正や雇用回復を取り上げ、今後も金融緩和と財政、成長戦略による「3本の矢を撃ち続けて行きたい」と述べた。

3年前の総裁再任時に掲げ国内総生産(GDP)600兆円目標は「2020年ごろ実現したい」とした。消費税は「前回の反動減に学んで自動車・住宅投資喚起などの対応を行う」と強調した。

森友・加計問題などを念頭に「様々な批判に対して、丁寧に政権運営を行なう」と述べた。外交では「私自身が、金正恩委員長と向きあう」として、日朝直接交渉による拉致問題の解決に意欲を示すとともに、日中関係の本格的な正常化などへのリーダーシップを発揮していく意向を明確にした。

<「有権者なめてはいけない」「アンダークラスに光を」━石破氏>

石破氏は、劣勢が伝えられているが「有権者をなめてはいけない」と述べ、全国各地で政策を訴え「全身全霊で選挙に取り組む」と強調。「経済再生の核は地方創生」と述べ、アベノミクスで企業収益が改善した一方で「労働分配率と可処分所得が低下しているのが、一番の問題」と批判し、企業の生産性向上を踏まえた賃上げや、農林水産業の収益性改善を重視した。

政府が企業に「賃上げをお願いするのはおかしい」とも述べ、賃上げを企業に要請してきた安倍首相の手法を批判した。

非正規雇用を中心としたアンダークラスとされる人々に「光を当てるのは政治の責任」と強調した。

北海道地震をめぐっては、電力インフラの再点検が必要との認識で両候補の方向性は一致した。石破氏は大規模停電防止のため、分散電源の重要性を指摘。安倍首相も「北海道に限らず、電力インフラの総点検が必要」と述べた。

*内容を追加し、写真を差し替えます。

(竹本能文)

Reuters
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