大紀元時報

アングル:イスラム国、「国家喪失」でもまだ脅威か

2019年02月26日 20時00分

[ベイルート 20日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国(IS)」は、最後の拠点であるシリアのユーフラテス川沿岸地域を失いつつある。だが、イラクとシリアの一部地域を支配してきた時代は終わっても、同組織は脅威であり続けるとの認識で世界はほぼ一致している。

●IS支配地域での敗北で何が起きたか

イラクとシリアにまたがる支配地域の存在によって、ISはアルカイダなど他の過激派組織との違いを際立たせていた。

2014年に「カリフ国家」(預言者ムハンマドの後継者カリフが指導する国家)を宣言して以降、ISの支配地域はその使命を達成するための中心的拠点となり、イスラム教の土地と人々すべての支配権を主張してきた。

この「擬似国家」が破壊されたことにより、ISは、兵士の訓練や海外における攻撃計画を担当する後方支援基地だけでなく、最も効果的なプロパガンダと兵士集めの手段を失ったことになる。

また、同組織の厳格な規律に違反したり、一部少数民族や性奴隷、虐殺などにより処刑や厳罰に処されようとしていた人々が解放された。

戦闘で数多くのIS兵士が一掃された。財政的には、この敗北によってISは、住民から徴収していた税金や石油販売による収益など、現代のジハード(イスラム教の聖戦)において最も潤沢だとされた財源を失った。

●イラクとシリアに残る脅威とは何か

ISは10年前、イラクでアルカイダ系組織に偽装し、地下に潜伏。再び立ち上がる好機をうかがっていた。

2017年に支配地域で壊滅的な敗北を強いられると、ISは再びそうした戦術を取るようになった。イラク政府を弱体化するため、同国に潜伏する工作員たちが銃乱射や拉致を繰り返した。

ISはまた、米国の支援を受けたクルド人部隊が支配するシリア北東部でも爆弾攻撃を数多く実行している。1月にはそうした爆弾攻撃により、米国人4人が殺害された。ISの脅威は、依然として存在する、とクルド人と米国の当局者は指摘する。

シリアでは、首都ダマスカスからデリゾールに続く道路付近の人里離れた砂漠地帯で、今なおIS兵士が抵抗している。

●IS指導者や兵士、支持者に何が起きたか

IS指導者バグダディ容疑者の動向は謎のままだ。米国政府の上層部は同容疑者が生きており、恐らくイラクに潜伏していると確信していると、米関係者は最近語っている。他のIS幹部は空爆で殺害された。

IS兵士や市民の同組織支持者の多くも殺害された。さらに多くが捕まっている。シリアとイラクにいる逃亡者も数知れない。

イラクではISの拘束者を裁判にかけ、投獄している。処刑することも多い。米国が支援するシリアのクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は約800人の外国人兵士のほか、IS兵士の妻や子ども2000人以上も拘束している。シリア人下級工作員の多くは解放された。

SDFは、西側諸国が外国人兵士を引き取ることに消極的だと訴えている。外国人兵士は母国で安全保障上の脅威とみなされるが、起訴することが困難な可能性がある。

●海外での攻撃を計画したり、影響を与えたりすることは可能か

ISが最後の一角で抵抗していたさなか、英秘密情報部(MI6)トップはISが「非対称」の攻撃を再び仕掛けてくると警鐘を鳴らした。

軍事的に劣勢になり始めた後も、ISはさまざまな国で発生した攻撃の犯行声明を出した。ただし、その多くは同組織からの指示によって犯行に及んだわけではなく、単独か少数で攻撃を行う「ローンウルフ(一匹オオカミ)」による犯行だ。

組織的支援の下で訓練された工作員が行う攻撃にとどまらず、ISは海外の支持者に対して攻撃を計画するよう数年前から呼びかけるようになった。

ISには回復力があり、「中東地域内外で攻撃を促す能力を今なお保持している」と米中央司令部は2018年に警告している。

●今後、世界各地のジハード主義者に与える影響は

ISの中核領域はイラクとシリアだが、特にナイジェリアやイエメン、アフガニスタンなどのジハード主義者はISに忠誠を誓っている。

こうした勢力がISの後継となるかどうかは、特にバグダディ容疑者が拘束または殺害されている場合は、不透明だ。とはいえ、彼らがすぐに活動を停止する可能性はほとんどないように見える。

アルカイダも世界中に多数の支持勢力を抱えており、他のイスラム系武装勢力も政府が機能していない国々で活動している。

状況の変化に伴い、ジハード主義者のイデオロギーも変異することがこれまで証明されている。しかも、利用できる戦争行為や正義、迫害、貧困、宗派主義、あからさまな宗教的嫌悪には事欠かない。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

 

2月20日、過激派組織「イスラム国(IS)」は、最後の拠点であるシリアのユーフラテス川沿岸地域を失いつつあるが、イラクとシリアの一部地域を支配してきた時代は終わっても、同組織は脅威であり続けるとの認識で世界はほぼ一致している。写真はISの旗。イラクのタルアファルで2017年8月撮影(2019年 ロイター/Thaier Al-Sudani)

 

^