大紀元時報

アングル:新型コロナが深めた絆、双子の救命医それぞれの最前線

2020年05月05日 10時11分
ニューヨーク市の医療現場、その最前線の緊急治療室で働く救命医マイケル・ダーゾさん(写真)は憂鬱な日々を送っている。同じく救命医の双子の兄デニスさんが良き相談相手だ。4月17日、ニューヨーク市で撮影(2020年 ロイター/Jeenah Moon)
ニューヨーク市の医療現場、その最前線の緊急治療室で働く救命医マイケル・ダーゾさん(写真)は憂鬱な日々を送っている。同じく救命医の双子の兄デニスさんが良き相談相手だ。4月17日、ニューヨーク市で撮影(2020年 ロイター/Jeenah Moon)

Nick Brown

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 新型コロナウイルスと戦うニューヨーク市の医療現場、その最前線の緊急治療室で働く医師マイケル・ダーゾさんは憂鬱(ゆううつ)な日々を送っている。

気管挿管された患者が、あふれかえる集中治療室のベッドが空くのを何日も待たされることがある。安定しているかに思えた患者の容態が突然、急速に悪化することもある。

先日の勤務シフトでは、23人の看護師のうち15人が病欠となった。その多くは、新型コロナウイルスの症状を示していた。残された看護師たちは、急きょ1人で約20名の患者に対応することになった。通常の2倍以上だ。

容赦ないトラウマに襲われるこの厳しい日々を過すうちに、マイケルさんは、彼にしか得られない安らぎを楽しむようになった。双子の兄が、親身になって話を聞いてくれるのだ。彼もまた、マイアミでまったく同じ仕事、つまり緊急治療室の医師として働いている。

兄のデニス・ダーゾさんにとって、マイケルさんの話は明日の自分のことのように聞こえる。デニスさんが働くマイアミの緊急治療室も新型コロナウイルス患者で一杯になりつつあるが、マイケルさんの職場は米国で最もダメージの大きなニューヨーク市にある。マイケルさんは、何週間もその状況に押しつぶされている。

<救命医は「家業」>

救命医は、ダーゾ家の「家業」とも言える。父のジェームスさんはボストン郊外で35年間、救命医として働いてきた。2人の弟である28歳のトムさんも、マサチューセッツ州セーラムのノースショア・メディカル・センター附属セーラム病院で、緊急治療室の検査助手として働いている。

マイケルさん、デニスさんの双子兄弟は、31年間の人生のうち30年をほぼ一緒に過してきた。大学も医学大学院も一緒だった。あえて別々の地域に住もうと試みたことで、独立したアイデンティティを形成するチャンスが生まれた。

ところが、新型コロナウイルスとの戦いの最前線で医師としての技量を磨いていくなかで、2人の間に新たな親密さを生まれた。

マイケルさんはブルックリン・メソジスト病院に所属しているが、今は4週間の任期付きで近くのブルックデイル大学附属病院メディカルセンターで働いている。

病院内があふれかえるなかで、マイケルさんが担当する患者が何日も緊急治療室で生き延びる場合がある。家族の面会は認められないし、医師が忙しすぎて家族への説明も十分にできないことが多い。

マイケルさんによれば、すでに死亡した患者について遺族が最新の情報を問い合わせてくることもあるという。先日の夜には、問題なさそうに思えた患者3人が前兆なく死亡した。

「手の施しようがない患者を担当していると、ひどく気持ちが落ち込むことがある」とマイケルさんは言う。

マイケルさんにとって特に大きな打撃だったのは、気管挿管をした体重過多の女性患者だ。彼女の酸素飽和度が危険なレベルまで低下していた。気管挿管はそうした患者の容態を安定させるための処置だが、この患者の症状は悪化し続け、1時間もしないうちに亡くなった。

「本当に辛かった」と、マイケルさんは言う。「気管挿管をしたのは私だ。そのときは、命を救っているという実感があったのに」

ある深夜、勤務を終えて午前2時ごろ自宅まで歩いて帰る途中、ふだんなら静まりかえったブルックリン地区で、2人の男がマイケルさんに飛びかかり、地面に押し倒すと、金目のものを奪おうとポケットを探った。

マイケルさんは「私は医者だ、コロナウイルスに感染するぞ」と叫んだ。

今となっては笑い話だ。噓ではあったが、効果はあった。男たちは慌てて離れた。マイケルさんは無傷で逃れた。

 

<マサチューセッツ州の現場>

ニューヨークと同様に大きなダメージを受けているマサチューセッツ州。検査助手として働くトム・ダーゾさんは、緊急治療室のなかで働くスタッフとして最初に患者を目にすることも多い。

トムさんによれば、彼が働く病院では、新型コロナウイルス患者に対応するため、集中治療室の収容人数を3倍に拡大した。出勤すると、多ければ3人の患者がすでに人工呼吸器につながれているのを目にすることもあるという。容態が悪化していた高齢の女性は、「気管挿管はしないでくれ」と以前にお願いしたことは無視してほしいと頼んでいた。

「死を恐がっていた」と、トムさんは言う。「彼女の顔には恐怖の色が浮かんでいた」

この女性患者が助かったかどうか、彼は知らない。

デニスさんは兄2人の話を聞き、自分もまもなく同じような試練に直面するかもしれないと考えている。

双子の兄であるデニスさんが働くマイアミのジャクソン記念病院では当初、新型コロナウイルスの患者は担当医が治療をしていた。不足する防護具を節約するために研修医に関わらせることはしなかった。だが、今や患者が増え、状況は変わったという。

不安は高まっている。デニスさんによれば、同僚の研修医も含め数人の医療従事者が新型コロナウイルス陽性の診断を受けたという。医師たちは常に防護具を着用している。

「マスクをしていて誰が誰だか分からないから、同僚なのに名乗り合っている」と、デニスさんは言う。

同僚のなかには、患者に気管挿管する際、口のところだけ穴をあけたゴミ袋を被せれば感染拡大防止に効果があるのではないか、と考えている者もいるという。

 

<父の願い>

双子の母親であるリンダ・ダーゾさんも、2人が感染を恐れていることを感じ取っている。リンダさんは記者との電話で、「今こそ、2人をしっかりハグしてあげることが必要だと思うのに」と涙声で語った。「PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えるのではないか」

夜勤の多かった父ジェームスさんは、シフトを終えた後、息子たちが学校に行く準備をするあいだに職場でのエピソードを語り聞かせていた。しかし、救命医療への情熱をかき立てるつもりはなかった。救えなかった命や無能な同僚への苛立ちについても語るように心がけた。

それでも、ジェームスさんは息子たちが医療の道を選んだ理由は理解している。「やり甲斐のある仕事を探すなら」と、ジェームスさんは言う。「緊急治療室に勝る場所はない」

今のジェームスさんにとって、息子たちを「同志」と思えるのは喜びだ。容態の悪い患者をどう治療したか息子たちが語るとき、ジェームスさんはあれこれと口を挟むのがお気に入りである。彼らが学校でどれほど勉強したのか驚かされる、とジェームスさんは言う。息子たちにとっては、父親が実に多くのことを記憶していることが驚きだ。

ジェームスさんには、息子たちがリスクを負っていることが分かる。子どものころ、マイケルさんとデニスさんがやっていたゲームを思い出す。2人は階段を途中まで登って、そこから飛び降りる。兄弟はお互いに、少しでも高い段から飛ぼうとしていた。

「一方では、止めなさいと言いたくなる。危ないからね。でも他方では、言わないでおこうと思う。息子たちには大胆に人生を送ってもらいたい」と、ジェームスさんは言う。

「息子たちは力を合わせて、1人ではできないことをやってきた」

(翻訳:エァクレーレン)

 

ニューヨーク市の医療現場、その最前線の緊急治療室で働く救命医マイケル・ダーゾさん(写真)は憂鬱な日々を送っている。同じく救命医の双子の兄デニスさんが良き相談相手だ。4月17日、ニューヨーク市で撮影(2020年 ロイター/Jeenah Moon)

 

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