頼清徳台湾総統の弾劾手続きが始動 台湾情勢と日本との関係

2025/12/27
更新: 2025/12/27

台湾の立法院は26日、野党・国民党および民衆党が提出した頼清徳総統に対する弾劾案について、来年5月19日に本会議で表決を行う日程を決定し、全院委員会での審査および総統本人の招致を行うことを賛成多数で決めた。中央通訊社が報じた。総統弾劾手続きが正式に進むのは中華民国史上初となる。

弾劾案は、卓栄泰行政院長が、立法院で可決された財政収支配分法改正案について、公布に必要な副署を行わないと表明したことを受けて発議された。台湾の憲法追加修正条文では、弾劾成立には立法委員総数の2分の1以上の発議、3分の2以上の賛成決議に加え、司法院大法官会議で現有大法官の3分の2以上かつ9人以上の同意が必要とされており、手続き上のハードルは高い。

立法院では現在、最大野党の国民党が無所属1人を含め54議席、第2野党の民衆党が8議席を占め、与党・民進党は51議席にとどまっている。野党が過半数を握る構図の中で、弾劾手続きが制度に沿って進められることとなった。

こうした台湾内政の動きは、日本とも無関係ではない。日本政府はこれまで一貫して、台湾海峡の平和と安定が日本の安全保障にとって重要であるとの立場を示してきた。防衛省が公表した令和7年版防衛白書でも、インド太平洋地域の安全保障環境の一部として台湾をめぐる情勢に言及し、力による一方的な現状変更への懸念を示している。

経済面でも日台の結びつきは強く、また全貿易量の99%以上を海上輸送に依存している日本は台湾周辺のシーレーンの安定は国民生活と経済の維持に直結している。また経済安全保障の核心ともいえるAIや半導体といった先端技術でも技術協力の深化が期待されている。両国の経済関係は、巨大な市場規模と不可欠な海上交通路の双方において極めて密接だ。

台湾側は、新型コロナウイルス感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻、米中の技術対立などが、世界経済の先行き不透明感を高めている要因だと指摘している。こうした中で、日本は台湾にとって主要な貿易相手国の一つであり、台湾は日本にとって重要な供給先として位置づけられている。

台湾総統弾劾をめぐる今後の審査や表決の行方は、台湾の政治体制にとどまらず、日台関係や日本の安全保障・経済環境とどのように交錯していくのかが注目される。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます