黎智英氏に禁錮20年の重刑 「香港民主主義にとって最悪の日」との声

2026/02/10
更新: 2026/02/10

2月9日、香港のメディアグループ「壱伝媒(ネクスト・デジタル)」創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏ら9人の被告に対する判決が言い渡された。黎氏には禁錮20年という重刑が科され、他の8人には6年3カ月から10年の禁錮刑が言い渡された。

黎氏ら9名と『リンゴ日報(アップル・デイリー)』関連の3社は、昨年12月にいわゆる「香港国家安全維持法」下の「外国勢力との結託」などの罪で有罪判決を受けていた。判決は本日午前10時、西九龍裁判所(地裁)で行われた。

量刑の内訳は以下の通りである。

黎智英(ジミー・ライ)氏: 禁錮20年

羅偉光(ライアン・ロー)氏(元総編集長): 禁錮10年

林文宗氏(元執行総編集長): 禁錮10年

馮偉光氏(元英語版執行総編集長): 禁錮10年

李宇軒氏(「重光團隊」メンバー): 禁錮7年3カ月

楊清奇氏(元論説主筆): 禁錮7年3カ月

陳沛敏氏(元副社長): 禁錮7年

張剣虹氏(元CEO): 禁錮6年9カ月

陳梓華氏(元弁護士助手): 禁錮6年3カ月

また、起訴されていた『リンゴ日報』関連の3社には、それぞれ3百万4千500香港ドルの罰金が科された。

早朝から裁判所周辺には多数の警察官が配備され、厳戒態勢が敷かれた。現場には約100人の記者が詰めかけたが、警察によって取材エリアが制限され、自由な移動は禁じられた。

刑務所の車両が裁判所に入っていく(余鋼/大紀元)
警察は秩序維持のため多数の警官を派遣した(余鋼/大紀元)
裁判所に入る刑務所車両(余鋼/大紀元)
対テロ特殊部隊が銃を持って待機(余鋼/大紀元)
香港カトリック教区の退任司教ジョセフ・ゼン枢機卿(左)とジミー・ライ氏の妻リー・ユンチン氏(吳銳略/大紀元)
数名の外国領事館職員が審理を傍聴するために出席した(余鋼/大紀元)
数名の外国領事館職員が審理を傍聴するために出席した(余鋼/大紀元)
数名の外国領事館職員が審理を傍聴するために出席した(余鋼/大紀元)
数名の外国領事館職員が審理を傍聴するために出席した(余鋼/大紀元)
陳培敏氏の夫は、元立場新聞編集長の鍾培川氏(余鋼/大紀元)
社会活動家のレイ・ユリアンさん(余鋼/大紀元)
社会活動家のレイ・ユリアンさん(余鋼/大紀元)

法廷の内外で流れる涙

本日の傍聴席には、多くの市民が列をなした。その中には、陳沛敏氏の夫で元「立場新聞」総編集長の鍾沛権氏、香港教区の陳日君(ジョセフ・ゼン)枢機卿、元民主党主席の劉慧卿氏、元記者協会主席の陳朗昇氏、さらには各国領事館の代表者の姿もあった。判決結果が伝わると、外で待機していた支持者たちは涙を流した。

オンラインメディア「法庭線(The Witness)」の報道によると、判決を聞いた黎智英氏は歯を見せて笑いながら手を振り、拳を包むジェスチャー(抱拳礼)を見せた。張剣虹氏や林文宗氏は傍聴席に向けて頷き、李宇軒氏は時折、傍聴席に視線を送っていた。かつての「リンゴ日報」社員の多くは法廷内で涙を流し、閉廷後も裁判所の外で抱き合って泣き崩れた。鍾沛権氏は冷静さを保ちつつ、妻の陳沛敏氏をじっと見守っていた。

黎氏の妻である李韻琴氏と陳日君枢機卿は共に裁判所を後にしたが、記者からの刑期への感想や控訴の有無に関する問いかけには無言を貫いた。

元社会民主連線メンバーの曾健成氏は、「黎氏らが持ちこたえてくれることを願う」と語り、高齢の黎氏の健康状態を深く懸念した。

著名な民主活動家の唐柏橋氏は、X上で「今日は香港の歴史において最も暗く、最も恥ずべき日だ! 香港がいずれ中国本土よりも暗く、人権のない場所になると予言していたが、今日の判決がその証明だ。団結して暴政を覆そう」と投稿した。

ロイター通信は複数の欧米外交官の話として、黎氏が控訴するかどうかが前提となるが、判決が出たことで黎氏救出に向けた交渉が本格化する可能性があると報じている。

台湾・国際社会からの非難

これを受け、台湾の「大陸委員会」はプレスリリースを発表し、中国共産党と香港当局が国家安全の名の下に自由と人権を抑圧していることを厳しく非難した。政治的迫害を停止し、黎氏を即時解放するよう求めるとともに、極権主義を輸出する中国共産党のリスクに対して国際社会が警戒を強めるよう呼びかけた。

大陸委員会は、黎氏への重判について、「個人の自由や報道の自由を奪うだけでなく、市民が権力を監視・追及するという基本的な権利を否定するものだ」と指摘した。また、「一国二制度の下では、基本法が約束した自由は有名無実化しており、司法が政治的弾圧や異端者排除の道具に成り下がっていることが再確認された」と述べた。

さらに、日本や世界の国々に対し、香港の悲劇を教訓に自由な生活を守り、中国による人権侵害への警戒を怠らず、自由民主主義の防衛線を守り抜くよう訴えた。

「自由の殉教者」への懸念

現在78歳の黎智英氏は、2020年8月10日に逮捕された。一時期保釈されたものの、同年12月からは5年以上にわたり拘束が続いている。その後、「リンゴ日報(アップルデイリー)」は廃刊に追い込まれた。黎氏はすべての起訴内容を否認し、法廷では自らを北京による迫害を受けた「政治犯」であると主張してきた。

2014年の雨傘運動から2019年の逃亡犯条例改正反対デモまで、黎氏は常に街頭の最前線に立ってきた。国家安全維持法の施行後も香港を離れることを拒み、「香港は死んだが、私は最後まで戦う」と言い残していた。

黎氏の娘、黎采(ジェイド・ライ)氏は昨年、父親の爪が変色して剥がれ、歯の腐敗が進むなど健康状態が悪化していることを公表し、父が獄中で「自由の殉教者」になることを深く危惧している。

黎氏の事件は国際的な関心も高い。2025年12月4日には、米連邦議会の超党派議員11名が、黎氏の誕生日である12月8日を「ジミー・ライの日」と定める決議案を提出。報道の自由や民主主義への貢献を称え、即時無条件解放を求めた。

また、2025年12月10日の世界人権デーには、「国境なき記者団(RSF)」や「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」が報告書を発表し、黎氏の解放を要求した。米議会・執行部中国委員会(CECC)の年次報告書でも、黎氏を含む数百人の政治犯の収監や民主派団体の解散など、香港の人権後退が指摘されている。

トランプ米大統領も黎氏の事件に注目しており、習近平に対し「黎智英の解放は米中関係の改善に繋がり、中国の国際的イメージ向上にも寄与する」と伝えたと報じられている。

唐正
夏荷