大紀元時報

アングル:再燃した米中対立、台湾TSMCのしたたかな戦略

2020年05月18日 19時55分
半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は15日、米アリゾナ州に新工場を建設する計画を発表した。写真は従業員に秘密保持の重要性を訴えるTSMCのパンフレット。2018年8月、台湾の新竹市で撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)
半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は15日、米アリゾナ州に新工場を建設する計画を発表した。写真は従業員に秘密保持の重要性を訴えるTSMCのパンフレット。2018年8月、台湾の新竹市で撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

Josh Horwitz Yimou Lee

[上海/台北 15日 ロイター] - 半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)<2330.TW>が、再燃した米中通商戦争の中で、絶妙な立ち回りをみせた。同社は15日、米アリゾナ州に半導体製造工場を建設する120億ドルの計画を発表。これは米商務省が華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]への半導体輸出規制の強化案を公表するわずか数時間前だった。

規制が強化されれば、ファーウェイ向けのTSMCの販売も縛られる可能性がある。しかし米商務省当局者によると、米国内に工場を移すというTSMCの判断は、省内で好意的に受け止められた(編集部注:日本経済新聞電子版は18日、TSMCは米の規制を受けてファーウェイからの新規受注を停止したと報じた)

アナリストによれば、TSMCの判断は、中国の通商慣行や同国政府の新型コロナウイルス対応を巡り批判を強める米政府側のベンチに座りつつ、中国でのビジネスも守るという、TSMC一流のデリケートなバランス感覚を示す。

台湾経済研究所のアナリスト、 Liu Pei-chen氏は「TSMCとしては米中関係の緊張をいかに最大限に利用し、いかに最大の利益を手に入れるかについて、理解していなければならない」と指摘する。

同氏によると、TSMCが両国の緊張から逃れることはできない以上、米工場の建設でできる限り良い条件を米国側と交渉するしかない。アナリストの推計によると、TSMCの売上高は米国から約60%、中国から約20%を得ている。

Liu氏によると、トランプ米大統領は11月の再選を狙って世界のハイテクのサプライチェーンを中国から取り戻したいと望んでいる。そうした中で機敏に動いたTSMCは、先行組ならではのメリットを得られるだろうという。

今回の投資計画でTSMCがファーウェイ向けの供給ライセンスを得られやすくなるかについて、米政府当局者はコメントを避けた。

<微妙なバランス>

半導体は民生用電機製品と軍事装備品の双方で重要な役割を担う。最先端の半導体の大半はアジアで製造されており、米中の戦略的対立が深まるにつれて米当局者の懸念を引き起こす結果になっている。

シティは顧客向けノートで「TSMCにとって米国に回路線幅5ナノメートルの生産ラインをつくることは、最もコストの低い選択肢ではない。しかし、知的財産権や技術剽窃(ひょうせつ)を巡る米国の懸念を解消するには役立つ。一方でTSMCは中国での操業を継続し、台湾やほかの顧客への供給を続けることもできる」と指摘した。

米国の新工場が稼働しても、生産はTSMC全体の3-4%に過ぎず、収益率には重しになるかもしれない。しかし、この大型投資は、米中2大市場の顧客基盤を守るためには、TSMCがこれほど多額であっても喜んで支出しようとすることを浮き彫りにする。バーンスタインのアナリストは、TSMCが過去に中国で行ってきた工場進出でも同様の戦略が取られていたとし、今回の投資決定と合わせ「米国と中国の間で同社が、バランスを取ろうとしていることを示唆する」と指摘した。

<情勢変化にも備え>

一方で、TSMCの新工場計画は、米国への外国投資の金額という点では巨額だが、工場の規模は同社としては小さい。投資も9年かけて行うとしており、市場の状況によってはその間に投資を下方修正できるようにしている。

台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)<2317.TW>はトランプ氏が大統領になった2017年、ウィスコンシン州に100億ドルを投資し1万3000人の雇用を創出すると約束した。しかし、雇用目標はまだ達成されておらず、同社は計画を見直していると表明している。

ポンペオ国務長官は今回、TSMCの新しい米国工場が生産する半導体は人工知能(AI)から第5世代(5G)移動通信基地局、戦闘機まであらゆるものを動かすと豪語した。だが、一部のアナリストによると、同工場が稼働する24年までには、5ナノメートル半導体は最先端技術ではなくなる。

ICワイズのチーフアナリスト、Gu Wenjun氏によると、TSMCの米工場は米政府からの要求に対し同社が政治的に応じたという側面が大きい。TSMCはロイターに対しては、工場建設はあくまでビジネス上の判断だと述べた。

一部アナリストは、新工場は経済効率から見て小規模過ぎるとし、利益が出るかどうかは米政府からの補助金の規模と、米国産の製品を好む顧客が実際にどれだけの金額を払ってくれるかによるところが大きいだろうと指摘する。

ただ、中国政府がTSMCの米工場の発表を歓迎するとは考えにくい。米政府がファーウェイへの重要なサプライヤーへの支配力を強めようする試み、と受け止めるだろうからだ。

それでもインターリンクのスチュワート・ランドール氏は「中国政府が台湾ないしTSMCを罰すると考えるのはばかげている。あまりに多くの中国企業がTSMCに依存しているのだ」と語る。

「ファーウェイは全ての高性能半導体でTSMC製品を使い続けるだろう。一方で、中国は国内企業への投資を続け、ある時点で自給できるようにするだろう」と予想した。

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