大紀元時報

インド、ロシアに「インド太平洋戦略」への参加を要請、中露関係が微妙に

2020年09月01日 20時29分
インド太平洋地域に配備されている米海軍の空母セオドア・ルーズベルト(U.S. Navy via Getty Images)
インド太平洋地域に配備されている米海軍の空母セオドア・ルーズベルト(U.S. Navy via Getty Images)

中印関係が悪化する中で、インド政府が8月初め、ロシア政府に対して、日米豪印によるインド太平洋戦略に参加するよう要請したことが注目された。中印領土問題と同様に、ロシアと中国も領土紛争などを抱えるため中露関係は強固ではない。

ロシアと中国の両指導部は緊密な関係を持っている。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は2013年以降、30回以上会談した。昨年6月、習近平氏がロシアを訪問した際、両首脳は「両国の全面的な戦略強調パートナーシップを発展させていく」ことで合意した。

しかしその一方で、プーチン政権はインドへの武器売却を加速し、S-400地対空ミサイルシステムの供給を積極的に行っている。

今年5月と6月、中印両軍が国境地帯で衝突したのを受けて、インド国防相は7月初め、ロシア製ミグ29(MiG-29)戦闘機21機とスホイ30MKI(Su-30MKI)戦闘機21機を購入すると発表した。さらに、インド空軍がすでに保有しているミグ29戦闘機59機の改修を承認した。

今年8月初め、インドのニュースサイト「The Print」は同国のヴァルマ(D. Bala Venkatesh Varma)駐ロシア大使がロシアのモルグロフ(Igor Morgulov)外務次官に対して、米政府の中国共産党政権に対抗するインド太平洋戦略に加わるよう要請したと報道した。

台湾のシンクタンク、台湾智庫の董思斉・副会長は「米国ではトランプ政権になってから米露関係は良好となったが、米政界のロシアへの信頼感は低いままだった。インド太平洋戦略の理念は「自由で開かれた」にあるため、米国が自ら権威主義体制のロシアに対して同戦略への参加を要請するのは考えにくい。しかし、インドなどの参加国はロシアに要請できる」と述べた。

インドへの武器供給

近年、ロシアは、2014年S-400地対空ミサイルシステムを購入した中国当局に対して納入を延期した。ロシアは2018年、中国に第1搬入を行ったが予定より大幅に遅れた。これに対して、ロシアは同年、同システムを5セット購入したインドへの供給を早めた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト6月29日付はロシアメディアの報道を引用し、プーチン政権がインドへのS-400ミサイルシステムを2021年1月までに納入することを認可したと報じた。引き渡しの予定を1年前倒ししたという。

インドメディアの報道によると、同国が保有する武器の約7割はロシアから購入したものだという。

在米中国人学者の陳奎徳氏は、ロシアが中国よりインドに優先的に武器を売却したことは「プーチン政権のインドへの強い信頼感を反映した。逆に中国に対しては根強い不信感がある」と指摘した。陳氏は、1962年に起きた中印国境紛争において、共産主義陣営のソビエト連邦が中国と同じくインドにも武器を供給したことを挙げた。

董思斉氏は、「ロシアがインドに優先的に武器を供給したことは、中国とロシアが同じ仲間ではないことを示した」との見方を示した。米国が中国共産党政権への締め付けを強めている今、中国とロシアがより緊密な連携関係を結ぶことは難しいという。

董氏によると、現在中国当局とインド政府はそれぞれ、武器の国産化や他国への依存度を低下することを強調している。「この流れの下では、両国間の武器売買は、同盟関係あるいは外交的立場の表明のようなものだ」

中露「一心同体になれない」

2014年、ロシアがクリミア半島に侵攻したことで欧米諸国から経済制裁を受け、国際社会において孤立した。中国当局は当時、中立的な立場をとっていた。

陳奎徳氏は、中国当局とロシア政府はイラン問題に関して共通利益を持っているため、近い関係を維持しているが「中国とロシアは根本的に同盟国になれない」とした。

中露両国の間には長い国境線があり、歴史的な領土問題を抱えている。ウラジオストク市(中国語は海参崴)は今年5月に開基160周年を祝うため、在中国のロシア大使館がSNS微博(ウェイボー)に映像を投稿した。中国当局は同市について「帝政ロシアの不平等条約により奪われた」と見なしており、ロシア側の開基動画についても中国人ネットユーザーから非難が集まった。

また近年、中国当局がシベリア地域で経済的な影響力を拡大しており、中国人移民が増加した。これについてプーチン政権は警戒している。

「ロシアは、西側陣営への復帰が最も国家利益に一致すると考えている。トランプ米大統領はロシアをG8サミット(主要8カ国首脳会議)に招待すると発言したことがある。ロシアとヨーロッパ諸国の対立が深いため、反対された」

陳氏は、「長い目で見ると、中露両国は一心同体の同盟関係にはなれない」と語った。また、中国・インド・ロシアの3カ国の関係と比べて、中国・米国・ロシアの3カ国の関係の方が国際社会に及ぼすインパクトが強いため、「今後も中国、米国、ロシアの動きに目が離せない」と話した。

冷戦時、中国共産党政権と旧ソビエト連邦(旧ソ連)は手を組み、欧米諸国に対抗した。しかし、60年代後期、中国当局と旧ソ連は共産圏強国の座をめぐって争い対立を強めた。1969年、旧ソ連は中国当局の核施設を攻撃しようとして米国に打診した。いっぽう、1972年、当時のニクソン米大統領が中国を訪問した後、米国は中国を味方につけて旧ソ連への対抗を強化した。

オフショア・バランシング(Offshore balancing)を外交原則にする米国が、中国当局の経済的・軍事的挑発に対して「ロシアと連携を強め、ロシアに中国との間のパワー・バランスを保たせる意図がある。これはトランプ氏が大統領当選後に実現したいミッションの一つだ」と陳氏は述べた。

(記者・林岑心、翻訳編集・張哲)

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