中国のワクチン外交、年内20億回分提供と発表 専門家「イメージアップに繋がらない可能性も」

2021/08/16
更新: 2021/08/16

中国は最近、今年中に20億回分の中共ウイルス(新型コロナ)ワクチンを輸出すると発表した。しかし、その効果への拭えない疑念、ウイルス起源調査への非協力的な態度によって、「中国がワクチン外交を進めていくことは困難だ」と専門家は指摘している。

専門家、「中国ワクチン外交」の背景に注目

中国は5日、世界各国により多くのワクチンを提供し、今年は20億回分の輸出を目指すと発表した。

中国の王毅外相は最近、オンラインで行われたASEAN(東南アジア諸国連合)との外相会議で、中国はすでに7億5000万回以上のワクチンを提供した、と述べた。

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は15日、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のグローバル・ヘルス・ポリシー・センター長を務めるJ・ステファン・モリソン(J. Stephen Morrison)氏の分析を引用して、「中国は、感染症発生初期の対応や、WHO主導のウイルス起源調査への妨害で国際社会から批判されているにもかかわらず、ワクチン外交を展開している」と指摘した。

中国側が20億回分のワクチン輸出の目標を掲げた3日前(8月2日)、米下院外交委員会の共和党議員は中共ウイルスの起源に関する最新の報告書を発表し、「ウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から流出した」と結論づけた。

バイデン米大統領が5月、米情報機関に90日以内に、ウイルスの起源調査に関する報告書を提出するよう命じた。その期限は今月28日となっている。

中国の「ワクチン外交」は上手くいかない可能性がある

VOAはまた、米ジャーマン・マーシャル財団(GMF)の民主主義保障同盟プロジェクトの中国問題アナリストである白若詩氏の分析を引用して、「中国製ワクチンの効果は戦狼外交と同様、長い目で見れば、中国のイメージを損なう可能性がある」と指摘し、「ワクチン外交が中国のイメージアップに役立つかは、今のところまだ不明」とした。

中国はワクチンの輸出拡大を約束するが、一方でタイやインドネシア、マレーシア、チリなどの国々では同国製ワクチンの使用停止を検討している。これらの国では、中国製ワクチン接種後、感染が拡大しているため、同国ワクチンに対する信頼感が低下している。

タイでは、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製と英「アストラゼネカ」製の二種類のワクチンの混合接種を発表した。また、中国製「シノバック」のみを接種した医療従事者には欧米製ワクチンの追加接種を行うとした。

インドネシアでも、すでに中国のシノバック製ワクチンの接種を終えた医療従事者に対し、米モデルナ製ワクチンの追加接種を実施すると発表した。同国では2月~6月の間、少なくとも医師20人と看護師10人が中国のシノバック製ワクチンを接種後に感染し、死亡している。

マレーシアも、中国のシノバック製ワクチンの(1600万回分)の供給が終了した後、米ファイザー製のワクチンの接種を行うと発表した。 

チリでも中国製ワクチンについて、「発症を予防する効果が低下している」として、11日から新たに欧米製のワクチンの追加接種を決めた。同国ではすでに人口の3分の2が2回のワクチン接種を終え、うち7割以上が中国のシノバック製ワクチンを接種している。

シンガポールでは、中国のシノバック製ワクチンの有効性に関するデータが不十分だとして、接種済みの集計から除外している。

また、中国政府がワクチンの提供に政治的な条件をつけることも問題となっている。

中国当局は6月、ウクライナが新疆の人権状況に懸念を示す声明を撤回しなければ、同国に出荷予定の50万回分のワクチンを差し止めると圧力をかけたという。ウクライナ政府はカナダ、米国など40カ国が参加する同声明からの脱退を余儀なくされた。

今年6月に英国で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、G7は世界に少なくとも8.7億回分のワクチンの寄付を宣言した。

バイデン米大統領は3日、米国はすでに世界60カ国以上に1.1億回分のワクチンを寄付したと発表した。ワクチン提供について、「米国から寄贈されたワクチンは無償であり、いかなる政治的・経済的条件はなく、また見返りも求めない」と付け加えた。

(翻訳編集・李凌)