自衛隊基地周辺の重要な土地は安全保障にかかわる。写真は北海道にある航空自衛隊千歳基地。(Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)

重要土地法は成立したが…更なる国土保全へ向けての政策を各候補者に問う、護る会アンケート

自民党総裁選の投開票日が目前に迫る24日、自民党の議員連盟「日本の尊厳と国益を護る会(以下、護る会)」は4人の候補者に送付していた公開質問状とその回答が全数そろったと公表した。質問状では、先の通常国会で、外国政府の意図を背景にした外国資本による日本の土地取得を防止するための「重要土地調査・規制法」が成立したことを踏まえ、さらなる国土保全の対策に問うた。軍事転用が可能な先端技術の保護に関わる情報管理体制、そして経済安全保障についても候補者に考えの提示を求めた。

重要土地法は成立したが…国土保全について

岸田文雄氏は、有事の際の敵対勢力の妨害活動を想定して「国防上致命的な状況に陥りかねない」と国土保全体制の不備は重大であると指摘。対策として、固定資産税台帳、農地台帳、林地台帳等について、国籍要件を加えるための横断的法制の検討、全国の土地の所有・利用状況を一覧的に把握できる体制の整備が必要だとの考えを示した。

高市早苗氏は、国防上重要な土地について法整備することを野党時代から取り組んできたと強調。外国人や外国法人のみを規制対象としても、帰化や日本法人の買収といった抜け道に対応できないと指摘した。そこで、国籍を問わず、国防上重要な土地の「国有化」を進め、使用の許可制導入を盛り込んだ「安全保障土地法案(仮称)」を提案。有事の人員徴用などを含む中国共産党の国防動員法※1を例に挙げて、危機感を持って日本の資産や施設保護への努力を続けるとした。

野田聖子氏は、「わが国固有の領土を取り戻し、また守り抜く決意は、揺るがず持っている」と意気込みを示した。重要土地調査規制法は、重要な一歩であるが、諸外国による「サイバー、情報戦、世論操作、内政かく乱」など、海外ですでに判明した事例活動が日本でも行われている可能性が十分あると述べた。

河野太郎氏は、護る会による「外国による国土侵蝕を阻止し、国土を回復する」との提案を支持すると前置きした上で、「政府が土地重要法に基づき、具体的な対応が進むことがその第一歩」と認識を示した。

経済安全保障の強化

野田氏は、「情報能力や経済安全保障は、これからの国防、国益の確保を考える上で、喫緊の課題」であるとの指針を表明。日本が自立したインテリジェンス能力を高めることで国益を護ることにつながるとし、情報セキュリティの強化を提言した。

さらに野田氏は、19世紀前半に活躍した英国の政治家・パーマストンの名言「永遠の同盟も、永遠の敵もない。あるのは永遠の国益だけだ」を紹介し、「この言葉を胸に刻んで、国家と国民のために知恵を絞り汗を流す」と自身の考えを語った。

岸田氏は、コロナ禍における医療資源の不足による国の困難を例にして、戦略技術・物資の特定、技術流出の防止等に向けた国家戦略を策定するとの方針を示し、「経済安全保障推進法(仮称)」の制定を掲げた。これにより、重要技術を国内で確保し、海外に依存しない自律的な経済構造を整備することを可能にしていく。

また、2013年に制定された国家安全保障戦略(NSS)※2について、「最近の国際情勢の緊迫化を踏まえた改定を進める」と経済安全保障の側面でも強化を図るとした。そして、セキュリティクリアランスやインテリジェンス機能の強化が不可欠であるとの認識を示した。

高市氏は、経済安全保障の強化について、まず「中国リスク」を掲げた。中国共産党には日本など海外でも党規約に従い共産党組織を設置する規定があることに言及、共産党組織が日本の先進技術や機微技術の流出拠点になる懸念があると指摘した。

こうしたリスクを踏まえて、高市氏は、外国為替及び外国貿易法などの既存の8本の法律を統括し、政令によって対象分野の追加を容易にすることを提言した。また、外資による企業買収・合併や外国企業を買収・合併する場合のルールの策定と、審査体制の強化を行うことを対策として掲げた。日本の学術機関の研究成果の海外転用を防ぐため、新しい包括法により、技術系研究を行う研究機関などを国が把握する法的根拠を作り、関係者の秘密保全義務を課すという。

河野氏は、護る会の掲げるスパイ防止法について「勉強を重ねる」と回答。経済安全保障の面では、日本の戦略的自律性の維持・強化と戦略的不可欠性の獲得を目指して具体策を進める必要があると提示した。

現役の閣僚として、河野氏は「すでに経済安全保障に関する戦略の早期策定、さらには、経済安全保障一括推進法 (仮) の制定に向け、様々な準備が進められている」と紹介した。

(佐渡道世)


用語解説

※1国防総動員法

2010年に施行された中国の法律。中国国内で有事が発生した場合に、全国人民代表大会常務委員会の決定の下、動員令が発令される。国内外を問わず、党・軍が、個人・組織の資産や生産設備を徴用し、管理する。

※2国家安全保障戦略(NSS)

国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策に関する基本方針を定めた国家戦略。日本では第一次安倍政権時代の2013年に初めて設立された。