イタリア・ミラノ大聖堂を訪ねるマスク姿の観光客(Getty Images)

中国当局、イタリア政界をシャープパワーで浸透=最新報告書

チェコとイタリアのシンクタンクはこのほど、中国当局によるイタリア政界への浸透工作について研究報告書を共同作成し発表した。報告書は、中国側は様々な手段を駆使して、イタリアの中央政府や議会、地方政府に対して全方位から勢力浸透を行っていると指摘した。

チェコのシンクタンク、シノペシス(Sinopsis)とイタリアのシンクタンク、法の支配のためのグローバル委員会(Global Committee for the Rule of Law)は20日、研究報告書『主流を乗っ取る(Hijacking the Mainstream)』を公表した。

報告書の作成者の一人であるローラ・ハース(Laura Harth)氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、「われわれはこの報告書を通じて、イタリアがなぜ中国当局に対して曖昧な立場を取り続けているのか、その理由を解明しようとした」と語った。

『主流を乗っ取る』は、中国当局は友好・文化交流活動、ビジネス貿易活動などを通じて、イタリアの政治家、ロビイスト、地方の仲介者を代理人として使い、イタリアの「民主的な制度を中国共産党の政策の道具として利用している」との見解を示した。

これらの活動は中国共産党の対外連絡部(ILD)、中国の対外友好協会(CPAFFC)、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)、情報機関当局など政府組織の対外プロパガンダ宣伝部門によって展開されている。

同報告書は、中国当局は政治宣伝を介して「中国共産党の全体主義的な支配とグローバルな拡張を常態化し」、中国当局の主張と慣行を「新しい常識」として作り上げ、イタリア政府の政策決定に影響力を行使しようとしていると示した。

「イタリアの国会には、中国側の政治的プロパガンダ宣伝を引用して、中国当局の人権問題を美化しようとしている人がいる。地方自治体も積極的に(中国の巨大経済圏構想)『一帯一路』に参加している」と報告書は指摘した。

ハース氏は「イタリアでは、中国当局と長く付き合っているごく一部の人だけが、中国側の勢力浸透に気づいているだろう」とし、「大半の人は、中国当局の対外浸透工作機関に直面していると認識していない」と述べた。

報告書は、「中国共産党浸透工作機関とその戦術を理解していないこと」が、イタリアの政治家が「中国当局のターゲットになりやすい」理由であるとの見解を示した。

イタリアの人権活動家であるパトリツィア・デ・グラツィア(Patrizia De Grazia)氏は昨年、中国当局が台湾への密航を試みた香港市民12人を海上で拘束したことに抗議するハンストに参加した。

同氏は「イタリアの政治家は、香港における人権問題、民主化運動などについて関心を持っていない」と批判し、「保守派側は香港市民への支持を示したが、これは政治利益のための行動に過ぎない。この国で香港問題に注目しているのは一部の議員と活動家、そしてジャーナリストだけだ」と訴えた。

いっぽう、一部の政治家は中国当局の政治的プロパガンダに協力している。報告書は、政党「五つ星運動」の創設者べッぺ・グリッロ(Beppe Grillo)氏がSNS上で中国当局の新疆政策への支持を示していることや、中国の駐イタリア大使との面会を挙げた。グリッロ氏はまた、中国側の主張に賛同する他の政治家を報道するようメディアを動かしているという。

ハース氏は、中国当局の主張や行動を正当化する言論が「イタリアの主流になっている」と批判した。「中国当局の主張を非難する非主流派の意見に耳を傾けようとする人は少ない。このため、人権活動家の訴えは無視されている」という。

中国の信仰や人権問題を取り上げるネットメディア「ビター・ウィンター(Bitter Winter)」の担当者、マルコ・レスピンティ(Marco Respinti)氏は、イタリアの一部の政治家はイデオロギー上、中国当局と同様な考え方を持っていると示した。

同氏は「一部の左派政党、特に極左政党は、中国共産党と同じイデオロギーを持つ。これらの政党は、社会主義、共産党などを信仰している」とRFAに語った。ジャーナリストであるレスピンティ氏は、「さらに一部の人は、中国当局が(米国などと)世界覇権を競って勝利するとの見方を持っている。だから、この人たちは中国共産党を批判するのではなく、友好関係を築きたいと考えている」とした。

昨年、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染拡大でイタリアは大打撃を受けた。ミラノなどの各都市では複数回にわたって都市封鎖措置が実施された。しかし、これは中伊関係に影響を与えていない。

レスピンティ氏は「新型コロナウイルスの発生源を巡って、イタリアでは中国側を批判し追及する人は少ない。これは中国側のプロパガンダ宣伝が功を奏したのでは」と推測する。

『主流を乗っ取る』は、「中国の対外宣伝機関は様々な資源を使って、新型コロナウイルスの感染防止対策に関して、中国共産党を美化する報道をイタリアで展開している」との認識を示した。

ハース氏は、「この報告書を発表した目的は、中国当局がイタリアの政治に浸透している事実を一般市民に知らせ、イタリアの政治家に『知らない』という言い訳で中国当局との付き合いを続けてはならないと警告することだ」とRFAに話した。

(翻訳編集・張哲)