ロシア軍、東部転進でも劣勢なら大量破壊兵器の使用も=参議院参考人

2022/03/31
更新: 2022/04/02

参議院外交防衛委員会では29日、ウクライナをめぐる諸問題について3名の参考人の意見陳述が行われた。元駐ロシア大使館公使の河東哲夫氏は、ロシア軍はウクライナ東部に軍事力を集中させているが、劣勢に陥れば大量破壊兵器を使用する可能性があると述べた。

北大西洋条約機構(NATO)は24日、ブリュッセルで臨時首脳会合を行った。ロシアが生物化学兵器や核兵器といった大量破壊兵器をウクライナで使用した場合の対処について協議されたという。

参考人として出席した慶應義塾大学の鶴岡路人准教授は「NATOが介入すれば全面核戦争になる」との議論に疑問を呈し、ロシアによって一方的に抑止され続ければ核兵器保有国を抑止できなくなるのではないかと危機感を示した。

ウクライナ出身の国際政治学者グレンコ・アンドリー氏は、ロシアの戦争を止めるにはその財力を止めなければならず、他国の暮らしが厳しくなる代わりに人命が救えると強調した。

大量破壊兵器使用なら「局面の変化」

ロシア軍は27日、ウクライナ東部に戦力を集中させると発表した。背景には複数の将校の戦死と侵攻作戦の頓挫などがあるといわれている。米国防総省は29日、首都キエフ周辺の拠点からロシア部隊の少数の移動は確認できるが、戦争からの撤退ではなく再配置であり「脅威が去ったわけではない」と発表した。

河東氏は、もし米国がウクライナに関与すればロシア国内はわき立ち、「大祖国防衛戦争」とみなす可能性があると述べた。「プーチンは絶望のあまり核に手をかける可能性がある」と付け加えた。

米国およびNATOは今までウクライナに軍事介入しない姿勢を一貫して示してきた。いっぽう鶴岡氏は、もし化学兵器などの大量破壊兵器が実際に使用されれば「局面が大きく変わる」と指摘。ウクライナ防衛の範疇を越えて「国際社会・国際規範の中において大量破壊兵器が使われてそのままでいいのか」との議論になると述べ、NATOは抑止の主導権を取り返すことに努めているとした。

鶴岡氏は「NATOが介入すれば第3次世界大戦、全面核戦争になる、だからロシアを刺激すべきでない」といった議論に疑問を呈した。

「核兵器を持っている国を相手にした時、あらゆるこちらの行為(介入)が第三世界大戦、全面核戦争に直結するとすれば、核兵器を持っている国を抑止することさえできなくなってしまう」とし、介入と全面核戦争の間にはさまざまなステップがあると指摘した。日本周辺にも核保有国があることを踏まえ、日本の抑止力も問われると述べた。

戦争をどう止めるか

参考人のグレンコ・アンドリー氏は、ロシアの戦争を止めるにはその財力を止める必要があると主張。「他国が派兵して一緒に戦うことは難しい」としつつ、民主主義国はより即効性のある制裁として「ロシアのエネルギー資源を買わない、貿易取引を停止する」ことの実施を提案した。

資源や食糧の制裁は西側経済にも影響する。「日本や他の国の暮らしもちょっと苦しくはなるだろう。しかし、理解いただきたいのは生活が苦しくなることと大量に殺されることと、どちらが辛いかという問題だ。少し我慢することでウクライナ人の命を救える」と語気を強めた。

また、民主主義国が最大限の制裁を課すことでロシアは早い段階で財政破綻に陥り、戦争を継続する能力を失う指摘。「侵略戦争が成功するという悪しき先例を作ってはいけない。自由民主主義諸国が人権と平等、法の支配といった価値観に基づいて動く時期だ」と述べた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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