中国企業、カナダのリチウム資源会社に出資 安全保障上の懸念も

2022/04/19
更新: 2022/04/19

化学品メーカーの四川雅化実業集団は17日、子会社の雅化国際投資発展を通じてカナダの資源開発会社ウルトラリチウムの株式13.2%を500万カナダドルで取得すると発表した。中国企業によるカナダ企業の買収は国家安全保障を脅かしかねないとの指摘がある。

両社が締結した取引により、雅化国際投資発展はオンタリオ州で2つのリチウム鉱山プロジェクトを有するウルトラリチウムの子会社の60%の株式を取得することになる。四川雅化実業集団によると、合弁事業により年間20万トンのリチウムを生産する能力を持つリチウム精鉱と加工工場が建設される予定だ。

1月には中国の国有企業・紫金鉱業集団がカナダの資源企業ネオ・リチウムを買収している。カナダでは買収が国家安全保障を脅かす可能性がある場合45日以内に審査を開始することになっているが、当局はネオ・リチウム買収案の審査を見送った。カナダ野党の保守党は、国家安全保障上の見直しをトルドー首相率いる与党・自由党に求めていた。

保守党のガーナー議員らは自由党政権あての声明のなかで、紫金鉱業集団による買収は「国内の鉱物資源の安定供給という戦略的利益のさらなる弱体化を招く」と指摘したほか、カナダ経済に打撃を及ぼしている半導体不足を例に挙げ「鉱物の不足は、サプライチェーンに悪影響を及ぼす」と主張していた。

トルドー首相は、昨年12月シャンパーニュ・イノベーション科学・産業相宛の委任状で重要鉱物の確保を重要な目標とし「鉱物加工、セル製造、ゼロエミッション車の部品・組立製造」への投資誘致に努めるよう記している。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所のジェーン・ナカノ氏は昨年11月のウェビナーで、クリーンエネルギー技術は中国と西洋の地政学的競争の最前線になっていると述べた。クリーンエネルギー技術に必要な重要鉱物の中国での需要の高まりにより鉱物の輸入に依存している欧米諸国は、サプライチェーンを確保する必要に迫られていると指摘した。
 

米国をはじめ国際関係担当。
関連特集: 北米・中南米