中国共産党、アフリカで「党校」設立 独裁体制モデル輸出との批判

2022/07/01
更新: 2022/07/01

アフリカで影響力を拡大している中国は6月初め、タンザニアで開設した政治塾でアフリカ6カ国の若い政治家に対し研修を行った。米国の専門家は、中国がアフリカに一党独裁体制を植え付ける狙いがあり、各国で言論の自由などが後退する恐れがあると懸念した。

安全保障に介入

中国の薛氷特使は6月22日、エチオピアの首都アディスアベバで開かれた「安全・ガバナンス及び開発に関するカンファレンス(Conference on Security、Governance and Development)」に参加した。同会議には「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸東部に位置するソマリア、ジブチ、ケニア、ウガンダ、スーダンの政府高官も出席した。

中国外務省によると、薛特使は会議で、中国は将来アフリカにおいて「貿易や投資だけでなく、平和維持と発展分野でより重要な役割を担っていく」と述べ、同地域での紛争を仲介すると示した。

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、英国の外交政策シンクタンク「LSE IDEAS」の研究員の話を引用し、中国政府はアフリカ各国の安全保障に干渉を強めているとした。その目的はアフリカにおける中国側の投資プロジェクトと軍事的利益を守るためにあると、英国の専門家は指摘した。ジブチには中国軍初の海外軍事基地が設けられている。

アフリカで党校

中国共産党はアフリカ各国の内政と安全保障への介入を強めると同時に、各国にその独裁体制の統治モデルを輸出しようとしている。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、中国は4000万ドル(約54億円)を出資し、タンザニアでムワリム・ジュリウス・ニエレレ・リーダーシップスクール(Mwalimu Julius Nyerere Leadership School)を設立した。

駐タンザニア中国大使館は今年2月、習近平国家主席が同スクール宛てに設立を祝う書簡を送ったことを明らかにした。

同スクールでは5月25日~6月初旬にかけて、タンザニア、南アフリカ、モザンビーク、ジンバブエ、アンゴラ、ナミビアの6カ国の与党幹部と党員、総勢120人が研修を受けた。

VOAの報道では、研修後にジンバブエ与党の民族同盟愛国戦線の幹部、テンダイ・チラウ(Tendai Chirau)氏は「中国の発展の道のりを知り、貧困撲滅の経験を学んだ。非常に大きな意義があった」と述べた。

習近平氏は6月8日、この6カ国の若い政治家宛てに書簡を公開した。同氏は書簡の中で、「中国とアフリカの友好関係をさらに深め、中国・アフリカの運命共同体を築いていこう」と呼びかけた。

いっぽう、専門家は同スクールについて、中国共産党がアフリカで設置した「中央党校の分校」にほかならないと批判した。中国政府がアフリカ各国の政党と関係を強化し、さらに各国に「一党独裁」「党が政治を凌駕する」などの統治手段を植え付けようとしている。

米ジョージ・ワシントン大学のデービッド・ハミルトン・シン(David Hamilton Shinn)教授は、研修に参加したタンザニアなど6カ国の与党も中国共産党と同様に、長く政権を握ってきたと指摘した。

シン氏は「研修を受けたのは各国の政党メンバーであり、各国の大統領府や財務省などの政府機関幹部ではない。したがって、これらの政治家は長期政権を握ることを目的に研修を受けた」とし、研修自体は各国の経済発展とほぼ無関係だとの見方を示した。

また、同氏は、アフリカ大陸54カ国の経済・政治体制がそれぞれ違い、中国モデルとも大きく違うとした。

「中国側の研修内容は将来、様々な分野に広がるかもしれないが、アフリカ各国が中国の発展モデルを真似ても、実際にアフリカの人々の生活を改善できるかは依然として疑問が残る」

台湾・政治大学国際関係研究センターの厳震生研究員は、中国共産党はムワリム・ジュリウス・ニエレレ・リーダーシップスクールという「海外の党校」を通して、アフリカの独裁政党を抱き込み「独裁体制連合を作ろうとしており、アフリカにおける中国共産党の発言権を強める狙いだ」とVOAに語った。

張哲
張哲
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