玉城デニー氏の再選 危惧される沖縄の中国接近 米軍基地問題の国連提起も

2022/09/16
更新: 2022/09/27
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沖縄県知事選は11日投開票され、現職の玉城デニー氏が再選した。台湾海峡の緊張が高まっているにも関わらず、玉城陣営は福建省と琉球との歴史的なつながりを元に中国との友好を訴えていた。さらに、米軍基地問題を国連に提起する動きもある。地域の専門家は、沖縄の抱える問題の複雑化を危惧している。

日本EEZミサイル着弾も…「信頼醸成」要請

令和4年版防衛白書に「強い懸念」と記された中国に宥和的な玉城県政は、南西諸島を含む日本の防衛体制に影響をもたらすかもしれない。

沖縄県知事選を翌月に控えた8月4日、中国共産党政府はペロシ氏の台湾訪問に対抗して弾道ミサイル9発を発射し、うち5発が波照間島の南西の日本排他的経済水域(EEZ)に着弾した。

このミサイル発射について日本政府は中国を非難し、抗議するとともに「軍事訓練の即刻中止」を申し入れた。防衛研究所のNIDSコメンタリー8月30日付によれば、「公示された軍事訓練区域内とはいえ、日本の事前の同意を得ることなくEEZ内に中国が弾道ミサイルを落下させたことは、国連海洋法に照らして不当」だと指摘している。

沖縄近海の軍事訓練は漁業や海運関係者ら県民の安全を脅かす危険行為だが、沖縄県は岸田文雄首相に対して、訓練の停止および「緊張緩和と信頼醸成」を要請した。

選挙期間中、玉城陣営からは中国との友好に関する言及があった。仲里利信後援会長は応援演説で、沖縄と福建省が25年前に友好姉妹都市締結をしていることを強調した。「25年前の太田県政時、(締結)10周年で福建省に訪問した際、盛大な歓待を受けた。当時の省長は今の習近平主席だ」と述べ、今後も友好構築の必要性を内外に発信していくとの考えを示した。

地元紙・沖縄タイムスはミサイル発射事案から約3週間後、駐福岡中国総領事館の律桂軍総領事の寄稿文を掲載。軍事訓練を含む「一連の措置は、沖縄県民の皆さまに危害を加えたり、傷つけたりするつもりはなく、主権と領土保全を守るため」と正当性を主張した。さらに律氏は、台湾統一について「武力行使の放棄は約束しない」「最後のオプションだ」と武力を使った侵略を否定しなかった。

軍事活動はできない…「先住民族の土地」

沖縄県に向けられた分断工作に長年、警鐘を鳴らしてきた日本政策研究フォーラムの仲村覚氏は、革新系に傾く県政によって、さらに沖縄問題はもつれていくのではないかと危惧する。

「玉城氏が再選すれば、米軍基地の問題を国連に訴えるだろう」。選挙結果が発表される数日前、大紀元のインタビューに応じた仲村氏はこう答えた。

仲村氏の予想通り、再選後、琉球新報の取材に答えた玉城氏は「沖縄県民がなぜ、(反対を)訴えているのかを、国連や国際社会の場で語っていく」との考えを明らかにした。

米軍基地の撤去を目的とした政治家や社会運動家からの訴えは、累次に渡って国連人種差別撤廃委員会などで取り上げられており、日本政府は国連から是正勧告を受けている。直近では、沖縄県知事として2015年9月に翁長雄志氏が国連人権理事会で演説し、米軍基地がもたらす住民負担の継続は「人権侵害にあたる」と主張した。

仲村氏は、国連勧告のなかで沖縄の人々が「先住民族」と定義され、その権利保護を求める内容があることを特に問題視する。なぜなら、2007年に採択された「先住民族の権利に関する宣言」30条には、「先住民族の先祖伝来の土地では軍事活動は行われない」との条文があるためだ。

「沖縄の人々が米軍や自衛隊活動に異を唱えた場合、国連の条文に則るなら、米軍や自衛隊は沖縄県民の権利を犯しているということになってしまう」と仲村氏は指摘する。

沖縄米軍基地移設により、名護市辺野古の埋め立て工事が行われている。工事に抗議する人々がカヌーに乗り、抗議現場に接近する。海上保安庁のゴムボートが巡視する(JIJI PRESS/AFP via Getty Images)

仲村氏は今後、オール沖縄(辺野古移設反対で一致する革新派政治勢力)県政が、米軍基地問題を「少数民族の差別問題」との主張を国連で高めて、東京と沖縄の溝を深めようとするではないかと見ている。また、台湾有事の危機が迫っても「沖縄を戦場にさせないために」と中国との友好関係の強化を求める声が高めるだろうとも予想する。

2018年10月に発表された、国連人種差別撤廃委員会の日本に関する定期報告には「琉球・沖縄が先住民族として認められていないことを懸念する」「締約国が琉球を先住民族として認める立場を再考し、彼らの権利を保護するための措置を強化することを勧告する」と記されている。

「沖縄ではどの議会でも先住民族の権利を求める陳書も請願も議会で扱われたこともない。なぜ国連は突然、沖縄の人々を『先住民族』と認識し勧告を出したのか。議会制民主主義の崩壊ではないか」と仲村氏は非難する。

こうした「先住民族」認定の国際運動が展開していることに、多くの県民、国民は認知していないとも指摘。国連による沖縄の「先住民族」との定義づけの取り消しに、政府や自民党が取り組む必要があると訴える。

台湾有事にも影響する…悪いシナリオ

仲村氏は、悪いシナリオとして、国連の勧告を根拠に沖縄県と中国が何らかの条約の締結したり、中国が琉球国を「国家承認」したりする可能性に触れた。中国は当時署名権がなかったことを理由に、51年のサンフランシスコ講和条約と72年の沖縄返還協定を認めていないのだ。

仲村覚一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラム理事長、ジャーナリストの仲村覚氏(仲村氏動画チャンネルよりスクリーンショット)

「琉球国の国家承認を行える布石は打っている。もし、そうなれば、沖縄における日本の主権があいまいになるため、日米同盟が機能不全に陥る危険性もある」

実際、沖縄拠点の琉球民族独立を訴える団体は今年7月、国際連合人権理事会に出席し、「日米に植民地化された琉球」を訴え、日本からの独立の必要性を主張した。5月、中国共産党機関紙人民日報傘下の環球時報のインタビューに応じた日本人インフルエンサーも同様の主張をしており、中国国内にも拡散した。

昨年、フランス国防相傘下のシンクタンク「軍事学校戦略研究所(IRSEM)」が発表した報告書では、中国共産党は沖縄と日米に対して離間計を施すと記している。

「中国本土にほどなく近い沖縄は、地理的戦略目的が高く、分離勢力を煽って日本の中央政府から引きそらそうとする工作が続いている」。メディアについても、「沖縄の米軍基地に反対する中国メディアの記事が、日本の左翼や平和主義者に共感されることはよくあることだ」と指摘されている。

中共メディア、日本現地紙引用し「反米感情」を扇動か 沖縄米軍基地の感染拡大で

仲村覚

一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラム理事長、ジャーナリスト。陸上自衛隊少年工科学校(横須賀)入校後、航空部隊に配属。退官後、沖縄県の中国浸透工作に警鐘を鳴らす活動を行う。著書に「狙われた沖縄― 真実の沖縄史が日本を救う」(ハート出版)、「沖縄はいつから日本なのか 学校が教えない日本の中の沖縄史」(同)ほか多数。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。コミュニティラジオ天神の番組に定期出演しています。