カナダ国際関係省、中国警察の「海外派出所」設置疑惑調査へ=下院委員会

2022/10/15
更新: 2022/10/21

中国当局がカナダで非公式の「海外派出所」を設立しているという疑惑について、現在調査が進められている。

10月4日、カナダ議会下院のカナダ・中国委員会で証言した国際関係省の北アジア・オセアニア局長、ウェルドン・エップ氏は、この疑惑が事実と証明された場合、両国間の「正当な治安機関間の捜査協力に関するいかなる条約からも逸する」ことになり、カナダ政府は中国政府に対し「厳重な声明」を表明すると話した。

「問題視されている活動は、完全に違法で、不適切であり、非常に厳重な声明と外交的な追及の対象となる」とエップ氏は述べた。

非公式の海外派出所の存在は、スペインを拠点とする人権団体「セーフガード・ディフェンダー」が9月15日に公表した報告書「海外110番:中国警察越境弾圧」で指摘され、国際社会から懸念の声が広がっている。

報告書では、中国の警察当局が30か国で50以上(トロントには3か所)の非公式の事務所を設立していると明らかにされた。これらはすべて、中国公安部の福建省福州市公安局および浙江省青田県公安局の管轄下に置かれているという。

セーフガード・ディフェンダーズの創設者兼ディレクターで、報告書の共同執筆者であるピーター・ダーリン氏は、大紀元に対し、海外派出所の設立数について、トロントのマーカムに2か所、スカボローに1か所ある以外にも、まだ未確認の事務所がある可能性があるという。

ダーリン氏によると、自身の組織が特定の調査を行っているなか、2018年7月5日に新華社通信が発表した報道を偶然見つけた。試験的に10の省が同様の海外における警察活動を開始すべきと記載されていたという。

2015〜19年まで在上海カナダ総領事を務めていたエップ氏は、中国警察がカナダに居住し、カナダ国内に派出所の設立を許可する二国間条約はないと強調した。

主権侵害

カナダ議会下院で外務・国際開発常任委員会の副委員長を務めるマイケル・チョン議員は、質疑においてエップ氏に対し、「海外派出所」設立疑惑について、国際関係省が「在カナダ中国人を脅迫し、中国へ帰国するよう強要することにさえある」と述べ、中国政府に対して許し難い活動として厳重な抗議を行ったかと質問した。

エップ氏は、「報告された内容について事実確認を取るため、現在関係機関と緊密に連携している」としたうえで、国際関係省がカナダおよび中国の両政府の幹部職員に対して中国による「他国干渉が強まっていることを示す証言が増えていること」について定期的に懸念を伝えていると明かした。

またエップ氏は、国家安全保障・情報委員会により連邦政府機関に提出された一連の報告書について言及し、外国の国家主体によるカナダへの干渉の最大の容疑は中国であることを示唆していると話した。

チョン議員は、国際関係省が中国大使館などの在外公館に勤務する外交官の「海外派出所」への関連についての調査、また同派出所が所在している地域への現地調査が行われているかと質問し、「違法であるだけでなく、主権侵害、国際法違反、あらゆる外交規範の違反である」と訴えた。

エップ氏は「質問の筋を折るつもりはないが、重要で期待される外交的な対応をとる前に、ここで緊要な捜査の役割を果たすことがかなり重要だという事実を強調しておきたいだけだ」と答えた。

保守党のラクエル・ダンチョ議員は、国際関係省が調査を実施するうえで連携している関係機関の名前を問うと、エップ氏は作戦をつまびらかにするのは適切でないとして回答を拒んだ。

「ビザを取り消すべき」

カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)の社会・一時移住局長のグレン・リンダー氏も委員会に出席した。チョン議員はリンダー氏に対し、「IRCCは疑惑の海外派出所に属する人物の身分確認を行ったか」と質問した。

チョン氏は「今、彼らの出入国管理に関する調査が行われているのか?彼らが偽って中国から来たとしたら、そのビザは取り消されるべきだ」と強調した。

リンダー氏は「国際関係省の同僚が言った通り、我々はこの問題を非常に真剣に受け止めており、関係機関との協議が行われている」と答えた。

自由党のジーン・イップ議員は、「カナダ人、特に非公式の海外派出所が存在するスカボローとマーカムに住む人々を安心させることが重要だと訴え、またエップ氏に対し「もし、市民が派出所から嫌がらせや脅迫、強要を受けた場合、どのような調査が行われるのか」「彼らの対応法は?地元の警察に行くだけなのか」と問いかけた。

エップ氏は、「国際関係省が中国政府と適切なやり取りを行えるよう、同省に知らせていただくだけでなく、警察に通報していただくようお願いしている」と話した。

新民主党(NDP)のヘザー・マクファーソン議員は、市民の国際関係省への連絡について、国際開発部門で数年勤務したマクファーソン議員自身がまだ国際関係省に連絡する方法を見つけていないことを考えると、「無駄」だと述べた。マクファーソン議員は、連邦政府部門は地元の警察サービスと交流があるのか、警察はそのような要求に対応する訓練を受けているのかと質問した。

エップ氏は、情報共有はカナダ王立騎馬警察(RCMP)を通じて地元警察と行い、国際関係省はRCMPやCSIS、その他の情報機関と非常に緊密に連携しているとし、外国からの干渉に関する情報についての他機関と連携していることを強調。さらに、「具体的な運用訓練については、警察庁がその情報をどのように扱い、具体的な(対応に)反映させるか、私の専門を超えている」と付け加えた。

また「これを経験し、それに対処する方法を知っている個々のカナダ人との間の連携することに関して議論されている」とし、「これは非常に重要なことだが、私が強調したいのは、作戦の主導権は依然警察でなければならないとういうことだ。十分ではないが、最初の一歩」と述べた。

団長から「疑惑が事実となった場合、国際関係省は公表するのか」と問われると、エップ氏は「RCMPの判断に委ねる」と答えた。捜査期間に関する質問については明言を避けた。

在外警察活動を抑止する法律がない

英人権団体「香港ウオッチ」の共同設立者兼評議員であるアイリーン・カルバリー氏も中国政府による非公式の海外派出所の設立疑惑に触れ、「非常にショッキングだ」と述べた。

カルバリー氏は委員会で、「彼らは公然とそれを行っている。なぜなら法律がなく、彼らを抑止し、罰することがないからだ」とし、「海外派出所」は中国共産党に反対する発言をする人々を脅迫するためだとの見方を示した。

「彼らは我々のような人々を脅かすことができる。私は何十年もカナダに住んでいるが、今、恐怖を感じている」とカルバリー氏は述べた。

カルバリー氏は、カナダが新たに法整備を行い、関係者を外国代理人として登録するよう義務付けるべきだとの考えを示した。

カルバリー氏の証言について、レオ・ウサコス議員は当日夜、ツイッターで「中国の共産主義政権に物申した」として、称賛した。「両院の議員が私の外国代理人登録法案を支持する期限は過ぎている。カナダ国内における外国の干渉や脅迫に真に取り組むべき時が来たのだ」と述べた。

Isaac Teo
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