「食糧券を買いましょう」計画経済時代に逆戻り? 中国で国営食堂広がる

2022/11/15
更新: 2022/11/15

「今日は開業したばかりの『国営食堂』に入ってみましょう。食糧券を買ってみましょう。肉料理はたった15元(約300円)、野菜料理は2つで19元(約380円)、果物つきですよ…」

雲南省にオープンした「国営食堂」を紹介する動画が最近、オンラインで流行した。快活な女性が食券を掲げ、賑わう食堂で食事をとる様子が収められている。

動画は同省拠点の国営投資会社が運営するレストランの宣伝であり、実際の国営食堂とは異なる。しかし、中国共産党が厳しい封鎖措置を伴うゼロコロナ政策や強硬な対外政策を推し進めるなか、「食糧危機の備えか」などの憶測を呼んだ。

国営食堂に関する関心の高まりは、中国政府が先月31日に発表した通知が発端だ。国営食堂の規模を拡大し、全国で試験運営を開始すると記されていた。計画経済時代の遺産である国営食堂の再拡大について、専門家は、経済不況や西側諸国からのデカップリングに備えているのではないかと推測している。

先月末に閉幕した第20回中国共産党大会では、今後の中国経済の展望について、自給自足および経済安全保障の確保が掲げられた。近年中国の農村では、すでに農作物の流通を管理する販売組合「供銷合作社(以下、供銷社)」も立ち上がり、都市部における国営食堂の運営開始はこれに続く形となった。

中国国務院(中央政府)住建部と民政部は10月31日に発表した合同声明によれば、各都市の「社区(住民の基層生活区画)」のうち、3〜5つに国営食堂を設置し、2年を試験期間として運営を開始する。国営食堂のほかに、保育所や託児所、衛生センターなどを備えた「複合型住宅エリア開発」も進めていくとしている。

供銷合作社や国営食堂はかつて中国の計画経済時代に整備されたシステムで、市場経済の浸透に伴い、あまり目にしなくなった。北京や上海、杭州、ハルピンなど一部都市部には高齢者向けの公営食堂が今なお存在する。

中国メディアの財経新聞3日付によれば、取材に応じた住建部と民政部の当局者は大掛かりな食堂建設や、国営食堂拡大を否定。住宅開発は高齢者支援サービスを重視した開発計画の一環であると釈明した。

内部循環強化…西側諸国とのデカップリングを覚悟

中国公安大学法学部の元講師である趙遠明氏は6日、大紀元の取材に対して、中国共産党は内循環、つまり中国経済のコントロールを強化していると語った。食糧を含め国有企業の市場占有率を高め、生産、供給、販売を掌握させる狙いがあると指摘した。

中国指導部は2020年5月の会議で、欧米の経済的デカップリングを想定し、内循環(国内経済)を柱とする新発展モデル「双循環」を提唱し、改革開放から大きな路線転換を図っている。

「市場経済を推進する西側諸国とは相反する方向に向かっている」、そう語るのは、米トリニティ・カレッジの文貫中経済学教授だ。文貫中氏によれば、中国共産党は西側諸国との関係悪化を見越し、自由主義的な市場経済ではなく、供給と消費を党のコントロール下に置くシステムを構築するつもりだとしている。

他の専門家は、ロシア寄りの中国は、食糧・エネルギー安全保障において危機的状況を迎えると指摘する。中国が現在、米国、カナダ、オーストラリアなどの主要な穀物輸出国と緊張関係にあり、供銷社を通じた中国国内の物流コントロールは、外国との経済的なデカップリングおよび国際情勢の悪化に備えとも分析する。

中国は世界有数の穀物輸入国であり、その量は年々増え続けている。その一方で、主要な穀物輸出国であるウクライナの輸出を不安定化させたロシアに対し依然として態度が甘いと、西側諸国は中国に対して不満を募らせている。

また、米サウスカロライナ大学の謝田教授は、こうした中国共産党による物流統制の構築を台湾侵攻への備えだと警戒している。

「中国共産党は武力で台湾侵攻をする野望を持っており、その実行はそう遠くないかもしれない。一度戦時経済に突入すれば、彼らにとって、このような国営食堂や供銷社を通じ、社会の物資や食糧供給を統制するのは最も良い手段となる」

計画経済で生活水準に悪影響

専門家の間では、中国政府が供銷社や国営食堂の規模を拡大することで、民間経済が抑圧されかねないと懸念されている。

供銷社は1950年代の計画経済時代につくられ、中国政府の厳しい管理下に置かれた。市場の独占や物資不足、サービスの質の低さから、当時の評判は悪かったという。1970年代に入り、鄧小平の行った「改革開放」を経て徐々に姿を消したが、完全に消滅したわけではなかった。

謝田氏は、そうした国家主導の経済システムは市場経済の活力を失わせ、人々の生活水準に悪影響を与えると指摘する。

「当時(計画経済時代)の大食堂や供銷社のように、計画経済に逆戻りしたのちは、市場経済の活気を持続することはできない。供銷社や大食堂で提供される品物や料理の種類は限られたものとなり、最終的に質素な料理、あるいは主食と最低限のサービスしか提供されない、低い生活水準となるだろう」

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
王天雨
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