厚労省がつかう「不可解な日本語」ワクチン安全性をめぐって

2023/02/08
更新: 2023/02/11

厚生労働省厚労省)は、もちろん日本国民の健康や医療に直接関与し、その責任を負う行政機関である。そのため同省ホームページ(HP)等を通じて発せられる情報には、最大限の正確さと、国民の生命に真摯に向き合う誠実な姿勢が求められることは言うまでもない。

「不可解な日本語」は苦心の末の産物か

本記事は、現在も政府主導で進められている新型コロナウイルス対応ワクチンの接種について、その是非を問うことを意図するものではない。

ただし、その責任を負うべき厚労省HPのワクチン関連の記述を見る限り、あまりに意味が不明瞭で、首をかしげたくなるような「不可解な日本語」が存在するため、そのことに焦点を絞って言及するつもりである。

言うまでもなく厚労省は、巨大組織である。それゆえに、同省の文言の各処には、国民からの責任追及を回避するため、言葉に含みをもたせた「安全地帯」が担保されている。そうした組織の都合について、本記事は完全には否定しないでおくが、やはり分かりにくい日本語では困るのである。

確かに、多くの専門家や医系技官を擁する厚労省であるので、そのなかで知恵を搾り、練りに練られた説明文なのであろう。しかし、苦心の末の「不可解な日本語」になってはいまいか。例えば、次に引用するような文言は、どうであろう。

以下、厚労省HPの「新型コロナワクチンQ&A これは本当ですか?」より、原文のまま引用する。各項目に分かれた質問(Q)の後に簡潔な答え(A)があり、その後に「詳細を見る」という矢印があって、比較的詳細な説明が付与されている。詳細な説明については適宜引用する。

Q:新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなっているというのは本当ですか。

A:「ワクチンを接種した後に亡くなった」ということは、「ワクチンが原因で亡くなった」ということではありません。接種後の死亡事例は報告されていますが、現時点で、ワクチン接種との因果関係があると判断された事例はありません。

繰り返したくもないが「ワクチン接種後に亡くなった人は、ワクチンが原因で亡くなったのではない」と、目に突き刺さるほどの冷酷さで断言してしまっている。

もしも遺族であれば「では、ウチの家族はなぜ亡くなったのか!」と厚労省に問い詰めたくなるだろう。しかし同文は、それを遮断するように「現時点で、ワクチン接種との因果関係があると判断された事例はない」というのだ。

このHPの表記は、本当に事実に即したものであろうか。

日本では、2021年2月から医療従事者を対象に新型コロナウイルス対応ワクチンの接種が始まった。同年4月から高齢者を優先してワクチン接種が進められ、6月から一般を対象とする接種が順次始められている。

以来約2年が経過したが、厚生労働省には、新型コロナウイルスのワクチン接種後に死亡した事例の報告が、2022年11月時点までで1900件以上あがっている。

その全てがワクチンの副反応の結果であるか、基礎疾患などによる死亡、つまり「ワクチンとは関係ない死亡」であるかは分からない。しかし「ワクチン接種後に死亡」したことは間違いない。

2023年1月12日に、厚労省は新たに「コロナワクチン接種と死亡の因果関係を否定できない男女5人」の遺族に対し、死亡一時金を支給している。

この新たな5人を加えると、コロナワクチン接種後に死亡し、その因果関係が否定できないため死亡一時金が遺族に支給された人は合計20人になる。つまり「20人の事例」があるのだ。

20人という死亡例が多いか少ないかではない。これは先に引用した厚労省の文言「ワクチン接種との因果関係があると判断された事例はありません」の部分と、明らかに矛盾している。これを「不可解な日本語」と呼ばずして何と言うのか。

「現時点では」は科学の限界を吐露する言葉

科学の意義を否定することを、本記事の目的としてはいない。むしろ、どこまでも誠実で謙虚な科学者や医療従事者のたゆまぬ努力によって、医療も、医療行政も、本当に日本国民に信頼されるものになると信じ、それを願っている。

科学とは、段階的に発展していくものである。そのため科学者は「現時点で分かっていることは、ここまでです」という認識を、努めて謙虚な態度とともに、常に座右の銘とすべきであろう。

ところが、その言葉の使用法を根本的に間違えている例が、先ほどの引用部分にも見られるのだ。

同文は「接種後の死亡事例は報告されていますが、現時点で、ワクチン接種との因果関係があると判断された事例はありません」という。

しかし、現時点で「ない」からといって、本当にワクチンを原因とする死亡の全て、または大部分を否定できるものではない。これも「不可解な日本語」の実例である。「現時点ではない」は、決して科学者の謙虚な態度ではなく、見苦しい開き直りなのだ。

これと同様に、誤った使用法による「現時点では」の例が、この厚労省HPには実に多いのである。

「ワクチン接種が原因で超過死亡が発生したという科学的根拠は、現時点において確認されていません」「こうしたことをまとめると、日本において、現時点で、新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなったということはありません」等々。

いずれも「現時点で、確認されてない」のだからワクチンは安全だと結論づける、あまりに強引な論法である。

新型コロナウイルスによる病禍は、いま目に見える各種の現象が主であるが、大規模なワクチン接種が後世にもたらす影響(つまり後遺症と呼ぶべきもの)の大小は、それこそ「現時点では、まだ誰にも分からない」のではないか。

そうした意味で「現時点で科学的に分かっていることは、ここまでです。だから将来において、ワクチン接種の影響がないとは言い切れません」とするのが、科学に対する誠実かつ謙虚な態度と言えるだろう。厚労省HPには、その姿勢がない。

妊娠中の女性も「ワクチン接種は努力義務」

同HPには、このようなQ&Aもある。

Q:私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。

A:妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方も、ワクチンの接種勧奨の対象としており、妊娠中の時期を問わず接種をお勧めしています。

ひと頃より落ち着いたとは言え、今も日本はコロナ禍のなかにある。そのような不安な時に「妊娠中」「授乳中」「妊娠を計画中」である日本全国の女性に対して、上に引用した厚労省の文言が「本当に安心できる言葉」として届くだろうか。

これに続く「詳しい説明」の部分は、以下のようになっている。

接種が開始された当初は、妊娠中の方に対する科学的知見が限られていたため、努力義務の適用除外とされていましたが、現在、高い有効性を示唆するエビデンスがあり、安全性に関する特段の懸念を示唆するエビデンスもないことから、令和4年(2022年)2月21日より、努力義務の適用除外を解除しています。

ここで「努力義務」という言葉を目にして、腰をぬかすほど驚いた。「努力義務の適用除外を解除」ということは、つまり妊娠中の女性も「ワクチンを接種するよう努力しなさい」と厚労省は言っているのか。

確かに、妊娠中の女性にとってコロナに感染することがどれほど恐ろしいことか、その不安の大きさは察して余りある。

しかし同様に、ワクチンを接種することも胎児に影響するのではないかと心配するのが、懸命に我が子を守ろうとする「母親」の偽らざる心情ではないか。

もっと丁寧に、本当に妊婦さんの身になって、ワクチンそのものの安全性を説明すべきところであろう。しかし厚労省は「エビデンスの有無」だけをあっさりと述べ、それに続く文章では、以下のように「コロナ感染の恐ろしさ」だけを煽るのである。

国内の研究において、妊婦が新型コロナウイルスに感染した場合、ほとんどは軽症ですが、中等症Ⅰが16%、中等症Ⅱが15%、重症が1.9%という結果も得られており、中等症Ⅱ~重症例では早産率が増加したと報告されています。産婦人科の関係学会も、妊娠中の時期を問わず接種を勧めています。

繰り返すが、妊娠中の女性にとってコロナ感染による発症を避けたいのは言うまでもない。しかし妊娠中の女性は、たとえ我が身がどうなろうとも、胎児への悪影響を絶対に防ごうとする。それはワクチン接種に関しても、全く同じである。

厚生労働省は、まさか約60年前のサリドマイド薬害事件を忘れたわけではあるまい。ましてや、たとえ数万分の一の確率であっても「ワクチン関連死」の可能性を否定できない事例があるならば、なおさら慎重であるべきだろう。

「胎児にも安全で有効」とは何か?

このほか、同HPには以下のような説明もある。

「国内外の研究において、ワクチン接種を受けた妊婦やその新生児に対して有害事象の増加はなく、ワクチン接種を受けていない妊婦と比べて、流産、早産、新生児死亡の発生率に差はなかった、と報告されています」

「妊娠中に接種したワクチンによってつくられた抗体は、臍帯を通じて胎児へ移行し、生まれた後に新生児を感染から守る効果が期待されます」

「ワクチン自体が母乳に移行する可能性は低く、万が一mRNAが母乳中に存在しても、子どもの体内で消化されることが予想され、影響を及ぼすことは考えにくいと報告されています」

「妊娠を計画している方には、現時点では生殖器に悪影響を及ぼす報告はなく、ワクチン接種を受けるために妊娠のタイミングを変更する必要はないと考えられています」

「報告されている」「期待される」「考えにくい」「報告はない」「考えられている」等々。

こうした日本語の言葉は、いかに文法的な間違いはないとしても、その状況によっては軽々に使ってはならないということを、厚労省は今一度、考え直しては如何だろう。

文章の一部を切り取ることは本意ではないが、この引用部分を見る限り「妊婦がワクチン接種した場合、流産や早産につながることはない。むしろ、抗体が臍帯を通じて胎児へ移行し、出産後の新生児をコロナ感染から守る」と言いたいらしい。

日本語のみを見るならば、科学に基づく文章ではなく、商業的な販促チラシに近い。

ワクチン接種が関係することが否定できない死亡例が存在するにもかかわらず、胎児に安全で、臍帯を通じて移行した抗体が新生児に有効にはたらくとは一体どの口が言うのか、理解に苦しむばかりである。

いずれにせよ、国の政策として今日も行われている新型コロナワクチン接種について、その効果および安全性に疑問が呈されている現状がありながら、厚労省HPの文言を見る限り「問題はないことにしている」ようにしか見えないのだ。

また、このようなQ&Aもある。

Q:通常の臨床試験(治験)のプロセスが省略されているのは本当ですか。

A:新型コロナワクチンは、医薬品開発に必要な臨床試験(治験)のプロセスを経て有効性と安全性が示された結果、世界中で承認されています。開発開始から一年足らずで実用化された新型コロナワクチンに対して、「臨床試験(治験)のプロセスが省略されているのでは?」という誤解がありますが、今回の新型コロナワクチン開発において臨床試験のプロセスが省略されたという事実はありません。

「相手の誤解のせい」にするのが適切であるか否かはともかく、事実として「一年足らずで作られたワクチン」であることは間違いない。

そこから今後どのような副反応が生じるか、長期にわたる後遺症が残るか否かは、それこそ現時点では全く分からないのだ。

厚労省HPによると「米国FDAのガイダンスでは、安全性について、大規模な臨床試験を基にした緊急使用を許可するために、接種後観察期間の中央値が2か月間あることを一つの要件としました」という。

つまり厚労省は、米国の基準にならい「ワクチン接種後2か月間」は観察期間とするが、それ以後については「より長期に有効性や安全性が認められるかどうかについて(日本でも)引き続き情報収集が行われている」としている。

なるほど、長期に有効性や安全性が認められるかどうか、先々のことは「厚労省も分かりません」と吐露している。その通りであろう。それこそ厚労省には「情報収集」を懸命にやっていただきたいものだ。

「これは本当ですか?」は巨大ブーメラン

2022年11月25日、衆議院第一議員会館で、ワクチン接種後に死亡した家族をもつ遺族3人と厚労省職員が対面する初めての機会が設けられた。

出席した遺族はいずれも「全く健康上の問題がなく元気だった妻や夫が、ワクチン接種の2日~12日後に死亡する」という、家族として到底承服できない最悪の結果を突き付けられた。

遺族は、その怒りをストレートに厚労省にぶつけたが、厚労省職員の答えは全く要領を得ない不誠実なものであった。

この日、同席した京都大学名誉教授で医師である福島雅典氏は「1年足らずで安全なワクチンができるはずがない」と断言した上で、目の前に並ぶ厚労省職員に対し「直ちに全例検査をせよ!」と厳しく求めた。

「本来、厚労省の評価委員会がなすべきは、評価不能などという不誠実な評価ではない。ワクチン接種と死亡との因果関係が否定できない以上、接種を中止し、すぐに全例検査をするべきだ。それをしないのは科学的怠慢である」

福島氏の厳しい提言は、すでに複数の死者や深刻な健康被害を受けた人々が出てしまった後の、つまり「すでに取り返しのつかない事態」に至っていながら今なおワクチン接種を国民に「お勧め」している政府の現状に対して、その根幹に問いかけるものとなった。

それは福島雅典氏が、誠実な科学者であり、背骨のまっすぐな医師であるからに他ならない。

この日は、福島氏だけでなく、同席した高知大学特任教授の佐野栄紀氏、名古屋大学名誉教授の小島勢二氏も同様に、それぞれ視点から厚労省に対して問題の指摘と改善への提言がなされている。

いずれにせよ、厚生労働省HPに掲載されている説明の多くが、いかに信用のおけない不誠実な日本語であるかが分かる。

そこには国民をワクチン接種へと向かわせる、不気味で、強引な力が隠されているからだ。

本記事は、同省HPのうち、厚労省が「これは本当ですか?」という小見出しをつけて国民の疑問に答えるQ&A形式のうち、その一部分について日本語表記の検証を試みたものである。

しかし、その「一部分」のなかにさえ、多くの疑問点や矛盾点が発見される。それが単純ミスなのか、厚労省の意図なのかは分からない。

明白なことは「これは本当ですか?」という小見出しそのものが、厚労省HPの新型コロナワクチン記事の全てに関係する、巨大ブーメランであったことだ。

今こそ国民は、問わなければならない。「厚労省は、ワクチンは安全だと言うけど、本当ですか?」と。

それでも「5回目」を勧めるのか

首相官邸HPによると、令和5年2月3日までに接種された新型コロナウイルス対応ワクチン(オミクロン株対応ワクチンも含めて)の総数は3億7960万9927回であるという。

そのうち、1回以上接種者が81.4%、2回接種完了者が80.3%である。

当初から、ワクチンは「2回接種することで効果が期待できる」という触れ込みであったためか、3回接種完了者になると68.1%と急に接種率が落ち込む。

考えるべきは、当初は「2回接種」であったものが、いつの間にか、ブースター接種と称して3回、4回、さらには5回になろうとしていることだ。このまま行けば「6回目」をお勧めすることにもなりかねない。

巨額の国費を投じて外国製ワクチンを買ったのか、買わされたのかは分からない。我が国の政府は、すでに契約して大量に買い付けたワクチンを、なんとか国民に使ってもらわなければ困るのか。本末転倒という日本語が、喉から出かかる。

ワクチン接種は、現時点での個人負担は無料であるが、すでに国民の税金が投入されていることは言うまでもない。ワクチンも、タダではないのである。

では一体、何がそれらを動かしているのか。コロナの後遺症やワクチン接種の長期的影響とともに、その政治的背景もふくめて今後明らかになる真実は少なくないだろう。しかし、厚生労働省という役所が自浄作用でそれを明らかにすることは、おそらく期待できまい。

鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。