英で抗議集会「ウイグル迫害の中共高官に英国の地を踏ませるな」欧州訪問は急遽中止に

2023/02/15
更新: 2023/05/26

欧米を中心に、中国共産党政権による新疆のウイグル人迫害への非難が拡大している。そのようななか、新疆ウイグル自治区人民政府主席であるエルキン・トゥニヤズ氏が英・仏・ベルギーなどを訪問することが来週に予定されていた。ところがEU報道官は14日、EU本部のあるベルギーの首都ブリュッセルへの同氏の訪問が「中国側の連絡により、中止された」と発表。また、欧州メディアによると、英仏両国への訪問もすでに中止になったという。

新疆には「巨大な強制収容所がある」

この「幻と消えた欧州訪問」に先立つ13日、英外務省前で、ロンドンの人権活動家や新疆「再教育キャンプ」の生存者ら約30人が抗議集会を行った。

この時点では、まだトゥニヤズ氏の訪英中止は公表されていない。集会の現場には英与党元党首をふくむ議員も駆け付け、トゥニヤズ氏の逮捕および起訴を英政府に要請した。

在英ウイグル人の団体 「ストップ ウイグル ジェノサイド (Stop Uyghur Genocide)」の事務局長を務める、在英のウイグル人人権活動家ラヒマ・マハムット(Rahima Mahmut)氏は、米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し「英政府は、トゥニヤズ氏が英国に足を踏み入れることを許すべきではない」と訴えた。

そのほか、新疆での人権問題を指摘したことで中国政府から制裁を受けた英上院のヘレナ・ケネディ議員や与党・保守党の元党首イアン・ダンカンスミス氏らも集会現場にあらわれて、抗議者に支持を表明した。

ケネディ上院議員は「新疆には、少なくとも100万人以上が収監された強制収容所が存在することを裏付ける大量の衛星写真がある。また、収容所で強制労働が行われている証拠も十分にある」と述べる一方、「なぜ英政府は(新疆の人権迫害に)関わりのある中共高官の英国訪問を許したのか」と疑問を呈した。

関係修復したいなら、先に迫害を止めよ

ケネディ議員はまた「中国の習近平国家主席は、パンデミック後における国際社会との関係修復に積極的だ。しかし、もし中国が本当に英国との関係を修復したいのなら、人民を迫害している政府高官を英国に送るのではなく、まず新疆の強制収容所を閉鎖し、ウイグル人への迫害を停止するべきだ」と述べた。

同様に、中国の制裁リストに載っているダンカンスミス氏は「殺人犯とは会談しない」とした上で、「(英国は)中国との外交関係を断つべきだ」と語り、中国政府にウイグル人への人権侵害をやめるよう呼びかけた。

またダンカンスミス氏は、トゥニヤズ氏へ制裁を科すことに加えて、同氏が英国に来たら人権侵害の罪で直接逮捕・起訴するよう英政府に要請しているという。

欧州市民の抗議の力が勝利した

トゥニヤズ氏は英国訪問の次に、欧州連合(EU)本部があるベルギーの首都・ブリュッセルも訪れる予定であった。

ブリュッセルでも同様の抗議デモがあるとみられていたが、14日、EUの報道官は「トゥニヤズ氏のブリュッセル訪問について、中国側から延期の連絡があった」と発表。欧州メディアによると、英仏両国への訪問も、すでに中止になったという。

この急展開により、13日の英外務省前で行われた抗議、およびトゥニヤズ氏が訪問する予定であった欧州各地で湧き上がることが予想される市民の抗議活動を前にして、中国側が先に逃げた形となった。

これは「ウイグル人迫害を許さない」という欧州市民の抗議の力が、中共に勝利したことを意味している。

英国の独立民衆法廷「ウイグル法廷」は2021年末、中国が新疆のイスラム系民族であるウイグル人にジェノサイド(集団虐殺)を行っていることを認定した。

米政府も21年に中国が新疆でウイグル人などに対し「ジェノサイドおよび各種の罪を犯した」と認定し、トゥニヤズ氏にも制裁を科している。

英議会も21年に、米国と同じく「新疆でジェノサイドがあった」と認定した。しかし、英政府は未だに議会の判断を認めていない。

いっぽう中国政府は、新疆地区での人権侵害疑惑をすべて否定している。

試される英新政権の対中姿勢

昨年10月に就任したスナク英首相は、トゥニヤズ氏の訪英(今回は中止)のほかにも「中国のスパイ気球」や「中国大使館の建設」など、英中関係に影響を与えかねない複数の中国関連問題に直面している。新首相の知恵と手腕が試されている、といってよい。

最近話題になっている中国のスパイ気球をめぐり、英国のリチャード・ホールデン(Richard Holden)運輸大臣は「我が国の領空を飛行した可能性がある」と明かしている。

また、英国のタワーハムレッツ区議会が昨年末に全会一致で却下した「大規模な中国大使館の建設申請」が最近、ロンドン市政府によっても却下されたことがわかった。このため、最終的な判断は中央政府に委ねられることになった。

「経済財政を重視する現実主義者」と言われたスナク首相は、昨年の党首選の際に「中国および中国共産党は、今世紀の英国さらには世界の安全と繁栄に対する最大の脅威である」と公言している。

英国にある中共のプロパガンダ機関である孔子学院は30校と、世界で最も多い。

そうした「孔子学院の全面閉鎖」や「中国の産業スパイに対抗する英情報局保安部(MI5)の活動範囲の拡大」、戦略的に敏感な「ハイテク企業を含む重要な英国資産の中国による買収を阻止する必要性の検討」などを公言しているスナク首相の、今後の対中姿勢が注目される。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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