バイデン大統領の経済政策「バイデノミクス」 その特徴と問題点(2)

2023/07/15
更新: 2023/07/16

 

数兆ドルの新規支出

現在までにバイデン政権は4兆ドル(約560兆円)以上の新規支出を主導してきたが、そのうち1兆6千ドルは議会が党派で可決したもの、1兆4千ドルは超党派で可決したもの、更に1兆1千ドルはバイデン氏の大統領令によるものである。このような大規模な支出にもかかわらず、ホワイトハウスは3月、「大統領予算は今後10年間で財政赤字を3兆ドル(約430兆円)近く削減し、財政見通しを改善する」と表明した。

しかし、米議会予算局(CBO)の予想は真逆だ。

CBOは3月に、「大統領の2023年度予算では、10年間で16兆ドル(約2150兆円)、米国民一人当たり5万ドル(約710万円)の債務増加が見込まれる」と報告している。

「CBOの現在の予測では、連邦政府の公的債務残高は現在の31兆ドル(約4417兆1590億円)(GDP比123%)から2033年には52兆ドル(約7409兆1420億円)(同132%)に増加する」

レーガン大統領、トランプ大統領およびサッチャー英首相の元顧問で、経済学者のアーサー・ラッファー氏は、「バイデノミクスの最悪の部分は、莫大な支出の増加であろう」「あんなに使いすぎる人がいるとは想像もできなかった」と述べている。

そのうえで、「国の債務残高の対GDP比やその他の指標を見ると、大幅に上昇している。これは経済の健全性を大きく損なうものだ」とバイデン氏のばら撒き政策を批判した。

バイデン政権下の租税政策

バイデン氏は、「富裕層と大企業に過剰な減税を施してきた40年間は破綻していた」と訴え、バイデノミクスについて「トップダウンではなく、中間層の拡大と低所得者層の押し上げにより、経済を構築する」と強調した。

バイデン氏が要求した増税のほとんどは今のところ議会を通過していないが、それにもかかわらず米国民は大幅な増税に泣かされた。その要因は、バイデン氏の名を冠したもう一つの経済現象、バイデンフレーションのせいであるとの声が高まっている。

「バイデン政権下で起こったインフレは、キャピタルゲイン税率を大幅に押し上げた」とラッファー氏は述べた。 インフレにより、資産の名目価値は劇的に上昇しているが、購買力という点では「変わらない」と指摘した。

その結果、「幻のキャピタルゲインに課税」されることになるという。インフレはまた、賃金上昇が物価上昇に追いつかないことが多いにもかかわらず、米国人の所得税率をより高く押し上げてきた。

「法人税率を見ると、トランプが去ったときのままである。個人所得税率を見ると、37%が依然として最高である」とラッファー氏は語る。「しかし、インフレによる税率引き上げをすべて見てみると、かなり大幅なものだった」

そしてこれは、ドルの価値が下がるにつれて商品やサービスの価格を押し上げる、インフレそのものによる実効税率に加えて行われる。5月に行われたAP通信とシカゴ大学の共同調査では、米国民の76%がバイデン氏の経済政策に否定的な見方をした主な理由としてインフレを挙げている。

「紙幣の乱れと高インフレほど、経済をより早く、より大きなダメージを与えるものはない」とラッファー氏は述べた。

バイデノミクスの下、ホワイトハウスは「米国はパンデミック以降、世界の主要経済国の中で最も力強い成長を遂げた」「インフレ率は11か月連続で低下し、半分以下にまで下がっている」と成果を強調した。

しかし、経済指標を見る上で常識的なことであるが、見る期間によって数字が何を示すかが変わってくる。消費者物価指数(CPI)による公式インフレ率は、2022年6月の9.1%という高水準から現在の約4%まで低下したものの、2%以下というパンデミック以前の水準を大きく上回っている。

価格高騰の原因について、バイデン政権はロシアのウクライナ侵攻によるものだとしているが、石油とガスの生産を抑制する政策に加え、前代未聞の政府支出があり、ガソリンとディーゼル燃料、肥料、食料、輸送コストが上昇したことが原因であるとの見方が多い。

経済成長も同様だ。新型コロナウイルスのパンデミックと当局のロックダウンにより2020年のGDPが2.8%減少した後、ロックダウンが解除され、企業が解雇された労働者の再雇用を急ぐと、2021年のGDP成長率は5.9%とプラスに転じた。

しかし、新型コロナウイルスの感染流行後、米国は他の先進国と比べて経済成長の速度を落としている。世界銀行によれば、2022年の世界平均GDP成長率は3.1%だが、米国のGDP成長率は2.1%と、他の国に比べて停滞気味だ。 「主要経済国」の中で、英国のGDPは4.1%、フランスは2.6%、スウェーデンは2.6%、スペインは5.5%、メキシコは3.1%、カナダは3.4%成長した。ドイツは1.8%で、米国を下回った数少ない先進国の1つであった。

GDPには政府支出も含まれており、これはバイデン政権下で記録的な水準に達している。

(続く)

経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。
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