各地で回復不可能な財政難 「突然の減給」「過去のボーナス返還要求」も=中国

2023/10/02
更新: 2023/10/02

中国経済の急速な衰退に伴い、各地方の財政は逼迫するばかりである。そのため給与削減の対象や範囲は拡大し続け、いまや民間企業だけでなく、銀行員、公立学校の教師、公務員、ひいては医師や看護師など医療界の人員にまで、大幅減給の荒波が押し寄せている。

病院で突然「給与50%カット」の通知

1886年に設立された北京同仁医院は、中国でも歴史ある著名な病院の一つである。ところが最近、その北京同仁医院まで「全医療従事者の給与50%カット」を正式に発表した模様だ。

「減給50%」という突然の通達に、同病院に勤める医師たちは驚愕した。すぐに病院側に抗議し、撤回を要求した結果「100元(約2000円)の夜勤手当は、なんとか支給された。しかし、実績ボーナスは半額を差し引かれた。来月も、差し引かれるかもしれない」という。

中国メディアの取材に応じた同院の医師たちは「もし今回、我われがすぐに抗議しなければ、100元の夜勤手当さえカットされただろう」と付け加えた。

そんな中国の医療界は、昔から濡れ手に粟(あわ)の「ボロ儲け産業」とされてきた。確かに、患者家族の弱みにつけこんで、高額な医療を「売りつける」傾向も一部にはある。

そのため中国の医療界は、近年起きた減給の荒波の影響を受けにくい「最後の業界」とも言われてきた。しかし、ついにその「最後の」砦にも、避けられない運命は襲ってきたようだ。

不動産、ハイテク、金融の各界「総崩れ」

中国経済をけん引してきた不動産業界に暗雲が立ちこめ、不動産大手で経営危機が相次ぐなか、テクノロジーや金融の分野も苦境に立たされている。

ブルームバーグの調べによると、中国の一部の(上級)銀行員は給与を40%カットされている。また、ロイター通信によると、中国国有の中信証券(CITIC証券)は投資銀行部門の基本給を15%カットしている。

中国最大手の人材会社「智聯招聘」がまとめたデータによると、上海と北京における第2四半期の採用募集で示された給与は、それぞれ前年同期比より9%減と6%減で、2015年以降で最大の減少幅となったことがわかった。

中国国家統計局は今年6月の若年失業率(16〜24歳)を「21.3%」と公表した後、失業率の公表を一時停止する「異常事態」まで起きている。停止するまでもなく、政府が公表した数値が本当であるとは、誰も信じていない。

上海を拠点とする技術系人材コンサルタント会社の採用担当によると、実際のところ「減給されても、失業よりはマシ」と考える人は多いという。

つまり、減給などで待遇が悪くなっても、そう簡単に仕事を辞めて転職できるような状態ではないのだ。景気の良い時代であれば、何の義理もなく、待遇の良い職場へどんどん移るのが中国人の常であったが、今は全く違う。隔世の感と言ってもよい。

公務員までも減給の対象に

かつて中国語に「鉄飯碗(割れないメシ碗)」という俗語があった。日本語の「親方日の丸」に該当する概念のことで、例えば公務員であれば「会社がつぶれることはなく、給与も安定している」ことを指す。

中国で、かつて「鉄飯碗」と呼ばれ、給与の支給が比較的安定していた国有企業や浙江省、江蘇省、広東省および上海市など各地方政府の公務員についての減給のニュースも、この一年で相次いでいる。

河北省張家口市尚義県の財政報告によると、同県の推定収入は7.5億元であるのに対し、支出は31億元に上る。その収支の差を見れば、絶望的な財政難であることは火を見るよりも明らかである。

同じく財政難に陥っている北京市の順義、昌平、平谷、門頭溝の4つの区は、公務員の給料を支払うために、同じ北京市の朝陽区に「借金」をしていたことがわかった。情報筋がエポックタイムズに明かした。

習近平国家主席の号令で2017年から開発が始まった未来都市「雄安新区」や、河北省内の保定市以外の地方政府では、公務員の給料を「1カ月遅れ」で支給していることもわかっている。

東北部の黒竜江省、吉林省、遼寧省に至っては、公務員はすでに長い間、ボーナスを貰えていない。また上海市の公務員は、以前は5~6万元(10~12万円)のボーナスが支給されていたが、今では多くて1~2万元しか貰えていないようだ。

江蘇省南京市では、公務員への給料を支払えない状況が今年5月末から始まり、今も続いているという。

「過去のボーナスを返還せよ」

驚くことに、公務員に対して、以前に支払われた業績ボーナスの「返還」を求める地方政府も出てきた。

今月27日、江蘇省揚州市当局が出した「公務員に対する、業績ボーナスの返還を求める書類」がネットに流出した。それによると、9月18日付の同市の会議書類のなかで「2024年3月までに、2021年度の業績ボーナス50%の返金を終了するように」と職員に求めている。

この「ボーナス返還指令」は、在職中の公務員に限らず、転職した者や引退者なども対象とされる。

しかし、現実の問題として「過去に支給したボーナスを返せ」と言われて返すことができる職員は、どれほどいるのだろう。言うことが、あまりに荒唐無稽ではないか。

中国経済は、完全に破綻した。起こるはずのない事象が噴出していることが、それを明確に証明している。その病的な状況を回復させる能力も、時間も、財源も、今の中国には全くない。

経済が正常でない国家は、もはや国家とは言えない。そうした意味で、歴史はすでに答えを出している。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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