【プレミアム報道】 米FDA、物議を醸す実験室培養肉を承認

2024/01/22
更新: 2024/01/22

自国の農業と経済、そして国民の健康を守るため、イタリアは最近、培養肉を公式に禁止した最初の国となった。

培養肉はラボグロウンミートとも呼ばれ、動物の幹細胞を複製し、一連のバイオリアクターで増殖させた後、ラボ内でよりリアルな食感を生み出すために添加物を混ぜ合わせるという、5段階の工程を経て作られる。コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、食肉細胞を培養した後、遠心分離機で食肉細胞を遠心分離機で排出し、形成して、包装する。

イタリアの農業大臣・フランチェスコ・ロロブリジーダ氏は11月16日「本日承認された法律により、健康、生産システム、何千もの雇用、我々の文化と伝統を守るため、イタリアは世界で初めて、合成食品の社会的・経済的リスクから安全に守られる国となる」とフェイスブックで書き込んだ。

法案は159対53の賛成多数でイタリア上院を通過し、同国の農業団体が支持した。農業団体は、イタリアの101億ドル規模の食肉加工産業の保護に取り組んでいる。

2023年7月27日、カリフォルニア州アラメダにあるイート・ジャストのタンクで作られる培養鶏肉 (Justin Sullivan/Getty Images)

米国では、ラボで生産された肉を規制する、あるいは消費者が何を買っているのかを確認するための取り組みが行われている。ミズーリ州で、2018年に制定された法律は、植物由来およびラボで生産された食品を “肉”と表示することを禁止している。

この法律は、「家畜または家禽由来でない製品を食肉と偽って表示することをも禁止している」

11月13日、フロリダ州議会のタイラー・シロイス下院議員は、州内での「培養肉の製造、販売、保有、流通」を禁止する法案を提出した。

「フロリダ州にとって、農業と牧畜は非常に重要な産業だ。これはフロリダ州にとって非常に重要な議論だと思っている」

この法案(HB 435)が成立した場合、違反したレストランや店舗には最高5千ドルの罰金が課され、食品の虚偽表示や不当表示を行った製造業者、加工業者、包装業者、販売業者には、違反1件につき最高1万ドルの罰金が課される可能性がある。

フロリダ州農業消費者サービス局のウィルトン・シンプソン局長は、シロイス氏の努力に全面的に賛同している。

「この法律がなければ、未検査の、安全でない可能性のある、ほとんど規制されていない実験室培養肉がフロリダ州で提供されるようになるかもしれない」

「私の最大の責務のひとつは、食品供給の安全性と健全性を確保し、フロリダの消費者を守ることだ」

11月22日、この法案は農業・保護・復興小委員会に移された。

養殖肉市場

今のところ、食用として培養肉を認可しているのは米国とシンガポールの2か国だけだ。

大手調査会社・Research and Markets社は、世界の培養肉市場は2035年までに20億ドル近くに達すると予測している。リサーチ・マーケッツ社は、16の培養食肉会社をリストアップしており、そのうちの5社は米国に、3社はイスラエルに、2社はオランダに、2社はシンガポールに、各1社は中国、インド、英国、スイスに拠点を置いている。

「2025年には、ナゲットセグメントが培養肉市場で最大のシェアを占めると予想される」とResearch and Markets社は1月の分析で述べた。

しかし、2025~2035年までの年間平均成長率が最も高いのは、培養肉バーガーパティだと予測されている。

2022年11月、食品医薬品局(FDA)は、”培養動物細胞から作られたヒト用食品に関する初の市販前協議を完了した “と発表した。

2023年7月27日、カリフォルニア州アラメダにあるイート・ジャストのオフィスで、グッド・ミートの培養鶏肉にソースを塗って焼くシェフのザック・ティンダル。米農務省は6月、カリフォルニア州に拠点を置くアップサイド・フーズ社とグッド・ミート社の2社に対し、研究室の細胞から育てた鶏肉を販売することを許可した (Justin Sullivan/Getty Images)

6月21日、米農務省(USDA)は、米国内の2社、グッド・ミート社とアップサイド・フード社に対し、細胞培養肉の製造を初めて認可した。

グッド・ミート社によると、USDAの承認により、同社初の実験室培養の鶏肉製品が米国で生産・販売されることになる。その4か月前、同社はFDAから食品安全審査を通過したことを意味する「No Questions」レターを受け取っていた。

同社はウェブサイトで、「当社の最初の製品は、複数の形態で調理され提供される養殖鶏肉だった。同製品は2020年にシンガポールで、2023年に米国で販売が承認されたカリフォルニアの放牧牛の細胞を使った培養牛肉や、日本の鳥山牧場の和牛など、他の種類の肉にも取り組んでいる」と述べている。

ワシントンにあるレストラン、チャイナチルカーノは7月にグッドミートの培養鶏を使った料理をメニューに加えた。

グッド・ミートの主な投資家は、UBSアセット・マネジメント傘下のヘッジファンド運用会社UBSオコナー、ベンチャーキャピタル、グラフェン・ベンチャーズとシンガポールを拠点とするK3ベンチャーズだ。

2017年立ち上げられて以来、ビル・ゲイツ氏はアップサイド・フーズの主要投資家となっている。

2023年12月1日、ドバイで開催された国連気候変動会議において、「気候変動に直面した食糧システムの変革」と題されたイベントでスピーチするビル・ゲイツ (Christophe Viseux/COP28 via Getty Images)

アップサイド・フーズ社は、その細胞培養鶏肉は”99%以上が鶏細胞”で構成されていると主張している。

FDAは2022年11月、同社の製造工程とリスク管理に関する自己評価に基づき、その製造を承認した。

アップサイド・フーズ社は、USDAの承認により、同社が養殖鶏肉を生産・販売することが可能になったと発表した。

FDAは承認の中で、「我々は、記載された製造工程が、食品を不純物とする物質や微生物を含む食品をもたらすと予想されると結論づける根拠を特定しなかった」と述べている。

「現在、Upsideの培養鶏細胞を使った食品は、他の製法で製造された同様な食品と同じく安全だという結論に疑問はない」

培養肉擁護派

人工肉の支持者らは、実験室培養の肉は、人間にとってより健康的で、動物にとっても優しく、環境にも良いと主張している。

ニコラ・トレイシュ氏はフランス国立農業・栄養・環境研究所の客員研究員で、トゥールーズ・キャピトル大学トゥールーズ経済学部のメンバーである。

2021年に『Springer Nature』誌に発表された報告書の中で、トレイシュ氏は従来の畜産のマイナス面を主張し、「家畜の扱いによる重要な道徳的懸念 」があると述べた。

「毎年、700億頭以上の陸上家畜が食用として飼育され、殺されていると推定される。食用として飼育される家畜は通常、非常に若いうちに屠殺される」

「世界中の抗生物質の約70~80%が家畜に使用されていることを考えると、家畜の食料生産は抗菌剤耐性の培養器でもある。

トレイチ氏の結論によれば、従来の食肉生産は「気候変動に大きく寄与し」、「大量の水と土地」を必要とし、「森林破壊、生物多様性の喪失、伝染病」の主な原因となっている。

「実験室で培養された肉は食肉生産と消費がもたらす有害な影響を大幅に減らすことができる、おそらく最も深刻な、重大な代替案を提供する」

培養肉批判派

実験室培養肉は、環境に悪く、経済に悪影響を及ぼし、人体に健康被害をもたらすと批判している。

従来の牛肉飼育よりも環境に優しいと宣伝されているにもかかわらず、4月21日に発表されたカリフォルニア大学デービス校(UC-Davis)とカリフォルニア大学ホルトビル校(University of California-Holtville)の研究者による研究は、それが正反対という結果を示唆している。

この研究では、実験室で生産された食肉は、1キログラムあたりかなり多くの二酸化炭素を排出する可能性があることがわかった。

研究者らはこのように述べた。「私たちの分析で用いられたシナリオと仮定に基づき、原材料の取得から製品の完成までのプロセスを見ると、動物細胞ベースの食肉生産は資源を大量に消費するように見える」

「我々のモデルは、培養肉の環境負荷は、従来の牛肉システムよりも高い可能性があることを示唆し、これらの先行研究と概ね矛盾している」

「この製品が牛肉よりも環境に優しいというテーゼのもと、この分野に特別に投資資金が割り当てられていることを考えると、これは重要な結論だ」

「食品システムの変革を目指す者にとって、これらの潜在的に破壊的な技術をシステムレベルの視点から評価することが不可欠なものだ」

2022年12月時点の米国農務省のデータによると、米国の畜産物および畜産物の受取額は合計1958億ドルで、そのうち729億ドル(37%)が牛と子牛によるもので、2021年の農場の現金受取額の最大の部分を占めている。これは2015年に報告された現金収入782億ドルから減少している。

米国の牧場主にとっての大きな課題は「安価な輸入牧草牛」、牧草のみを与えられて育った牛。2017年にストーン・バーンズ・センター・フォー・フード&アグリカルチャーが発表されたした研究によると、この輸入草飼育牛肉は、アメリカの草飼育牛肉の総販売量の約75%から80%を占めていると推定された。

サラディーノ博士は、実験用の肉は「自然の中で牧草を食べて育った牛の肉に比べ、栄養素が劣る」と述べた

UCデイヴィス校の研究主幹であるデリック・リスナー氏は、「私が懸念しているのは、あまりにも急速に規模を拡大し、環境に有害なことをしていることだけだ」と語った。

リスナー氏は9月14日、X(旧ツイッター)の動画では、「実験室で培養された肉は本物の肉ではない」「研究室の細胞培養で作られたものだ。自己免疫の問題、腸へのダメージ、あらゆる種類の問題がシャーレで培養された肉から発生する可能性がある」と語った。

また精神科であり、また食や健康について発信している米国のyoutuberのサラディーノ博士によれば、実験室で作られた肉は、「自然の中で草を食べて育った牛の肉に比べて、栄養が劣る」としている。

受賞歴のある米国の調査記者。20年来の経歴を持ち、これまでYahoo!、U.S.News、The Tampa Free Pressなどのニュースメディアで活躍した。エポックタイムズでは社会面、選挙、教育、保護者の権利などを取り扱った調査記事を執筆し、国際的に活躍の場を広げている。
関連特集: プレミアム報道