「お金を返して!」銀行預金を凍結されて700日 不当監禁される抗議者=中国 河南

2024/01/03
更新: 2024/01/04

河南省の地方銀行で、預金した全額が不当に凍結されてから、すでに700日になる。

その銀行とは、河南省にある4つの「村鎮銀行(禹州新民生、上蔡恵民、柘城黄淮村、開封新東方)」である。これらの銀行で、千人を超える預金者の凍結された預金が、未だに全く引き出せないのだ。

もはや銀行に「お金を奪われた」も同然の状態である。しかし、それでもなんとか預金を取り返さなければ、預金者のほうが生活できなくなってしまう。

警察が「抗議者を拉致、監禁する」という不条理

このほど、預金を凍結された中小企業の経営者たち数十人が、預金の返却を求めるため河南省へ赴いたところ、河南省警察によって駅から拉致され、監禁されたことがわかった。

監禁された預金者たちは、この不当な扱いに対し、ハンガーストライキをもって抗議している。

これらの預金者のほとんどは、河南省以外の省で民営企業をいとなむ経営者である。彼らは、これまでに何回も河南省まで行き、預金の凍結を解除するよう銀行と現地当局に求めてきたが、いずれも誠意ある対応を見せなかった。地元警察に不当拘束されたことは、これまでに何回もある。

今年の旧正月(旧暦元旦は2月10日)が間近に迫るなか、経営上の出費がかさみ、困窮したこれらの経営者は再び河南の地に向かった。

ところが、彼らが乗った列車が目的地の駅に着いた途端、大勢の警察に取り囲まれた。彼らが河南省に向かったことは、チケットを予約した時点で、警察に察知されている。

その現場を捉えた動画のなかには、複数の女性が地面に座り込んで大声で泣き叫ぶ場面もあった。なかには「河南銀行、私の預金を返して!」と絶叫し、そのまま意識を失って倒れる人もいた。

「みんな楽しく新年を祝っているというのに、私たちにはお金がない。(預金が凍結されて)もう2年になる。私たちは、もう本当に生きていけない」。ある預金者は、そう泣きながら訴える。

預金を凍結された被害者の趙さんは、NTD新唐人テレビの取材に応じて、次のように明かした。

「私たち数十人は、凍結された預金の解除を求めて再び河南省に行った。しかし、列車を降りたとたんに、大勢の河南省警察に取り囲まれ、そのまま拉致された。またもや不当に監禁された私たちは、警察に罵られ、暴力を振るわれた。私たちの中には、人権が侵害され、もう生きる希望がないと感じて、深い絶望に襲われて泣いている人もいる」

「野菜クズ」を拾って、食いつなぐ人もいる

今月2日、不当に監禁されていた預金者たちは「預金を返せ!」というスローガンを叫びながら、ハンガーストライキを行った。「絶食」という究極の手段に訴えてでも抗議する彼らは、すでに「命懸け」の闘いになることを覚悟している。

これまで、預金を凍結された預金者たちは、何回も河南省へ赴いて「預金を返せ!」のスローガンを叫び、横断幕を広げるなどして、地元当局と銀行に対し預金の返還を求めた。しかし、いずれも河南省警察によって逮捕され、不当監禁されてきた。

新年の元旦である今月1日、ある預金者の母親が重病にかかり、病院に救急搬送された。しかし、中国の医療は原則「前払い」である。銀行にお金を奪われたままの「預金者」は、母親のために出せる治療費がない、と訴えている。

当局による厳しい弾圧のなか、それでも抗議をする理由について、預金者の1人は「私たちは預金を凍結された。そのため、生活が窮乏しているからだ」と明かす。

なかには2年近く、預金を一銭も引き出せない人もいる。そのために困窮し、今では市場で捨てられる菜っ葉などの「野菜のクズ」を拾って食いつなぐ人さえいるという。

また、預金を引き出せないために、ガンの母親の治療費が払えず「母親が死んでゆくのを、ただ見ているしかなかった」という人もいる。

預金凍結の被害を受けた人のなかには、中小企業の経営者も多い。そのため「預金を引き出せないことで資金難に陥り、倒産する企業も少なくない」という。

当局からの「容赦ない弾圧」

河南省と安徽省の複数の銀行は2022年4月中旬以降、顧客の全ての預金を凍結した。預金者が受けた被害の規模は400億元(約8172億円)。影響は約40万人に及んだ。

この問題をめぐり、これまでにもたびたび預金者が集まって抗議活動を行ってきた。しかし地元当局は、抗議者への暴力をふくむ逮捕や不法監禁、抗議活動の妨害など、容赦ない弾圧を行っている。

中国のSNS上に拡散された抗議現場とみられる動画の中には、当局が手配したとみられる男たちが、こん棒を振るって殴りつけるなど、妊婦や体の不自由な抗議者にも容赦なく、無差別に暴行している場面があった。

被害に遭った預金者によると、河南省政府は他省の公安部門に対して「(預金を凍結された)預金者が、預金の引き出しを要求するため、河南省へ行くのを阻止するよう」求めていたという。

預金者は、自身の車に追跡装置が付けられたり、自宅前に「見張り要員」が待ち伏せたりしている。なかには、警察から脅迫電話がかかってくるケースもあるという。

預金を凍結される被害を受けた孫さんは「銀行保険監督管理委員会(銀保監会)に何度も掛け合ってきたが、いくら助けを求めても、全く対応してもらえない」という。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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