日米共同開発の港湾クレーンに脚光 米大統領令、中国製の置き換え命じる

2024/02/22
更新: 2024/02/22

港湾施設に対するサイバー攻撃が激しさを増すなか、米国は信頼性の低い中国製クレーンを日米が共同開発した製品で置き換えることを、21日の米大統領令で発表した。米国のサプライチェーンにおける日本の役割が一段と高まる。

米国政府は今後5年間、助成金を含む200億ドルを投じる。対象となるのは、三井E&S株式会社の米国子会社であるPACECO(パセコ)だ。本格的な生産開始に向けて、パセコは信頼できる製造会社と提携する予定だ。

パセコはコンテナ海運業界で長い歴史を持つ企業で、1980年代後半まで米国を拠点としてクレーン製造を行ってきた。中国製品について様々な欠陥やリスクが指摘されるなか、米国は30年ぶりに港湾クレーンの製造能力を取り戻すこととなる。

遠隔操作で貨物の積み下ろしを行う中国製クレーンには情報漏洩のリスクがあると一部の批評家は指摘する。米国港湾で使われるクレーン製造世界大手の中国ZPMCのクレーンには、内蔵センサーによって荷物のルートを追跡できるため、軍備品のような機密情報が中国側に渡る恐れがある。

大統領令では、海運等に関する国土安全保障省の権限を強化し、港湾施設の事業者に対して、サイバー攻撃を受けた際の報告を義務付けた。

中国製クレーンの使用を継続する場合には、システムの安全対策を強化し、脆弱性を排除することを求めた。

ラーム・エマニュエル駐日大使は「日本との提携により、ホワイトハウスはサプライチェーンを確保し、産業基盤を強化している」と取り組みの意義について説明した。

港湾などの重要インフラは日々脅威に晒されており、サイバーセキュリティの強化が不可欠だ。日本では昨年7月、名古屋港のコンテナターミナルでサイバー攻撃に起因する大規模なシステム障害が発生し、およそ3日間にわたってコンテナの積み降ろしやトレーラーへの積み込みができなくなった。

米国の海上輸送システム(MTS)は、毎年5.4兆ドル相当の経済活動を担っている。米国に輸入される貨物のおよそ95%を取り扱っており、3100万人以上の雇用を生み出している。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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