中国ジャーナリズムの悲哀と恥辱 あってなきが如しの「報道の自由」

2024/03/27
更新: 2024/03/26

今月13日朝、北京市に近い、河北省廊坊市燕郊鎮の文化大厦路口において大規模な爆発事故が発生した。この爆発により、現場は一部の柱などを除いて、原形をとどめないほどに吹き飛んでいた。

この爆発により「7人が死亡。27人が負傷した」と公式には報じられている。しかし、ネット上では「本当の死傷者は、もっと多いのではないか?」と疑問視する声も根強い。

流出した動画を見ても、あの大規模な爆発は、ガスもれなどによる単純な爆発事故ではなく、それこそ兵器のような強力な爆発物でも想定しない限り、起こり得ない規模だったからだ。そうしたことから、爆発の真相に関する様々な説も飛び交っている。

さらには爆発の直後、奇妙な現象が生放送で中国全土に放映されてしまった。中国国家テレビ局「CCTV」のリポーターによる現地取材のなかに、黒い制服姿の男らによって「報道が妨害される場面」が映っていたのだ。

放映されたテレビ画面には、ニュースのスタジオでMCを務める「CCTV」の女性キャスターが、顔をしかめて困惑する様子まで映っていた。

(中国国家テレビ局「CCTV」のリポーターが生放送中に受けた、黒い制服姿の男らによる「報道妨害」の場面)

また別の映像のなかには、中国中央ラジオテレビ総局(CMG)の記者・許夢哲氏が、大勢の警察によって囲まれるシーンもあった。

許氏は、記者であることの身分を示すロゴを付けていた。しかし許氏は動画のなかで、黒服の男たちに両側から捕まえられた。現場から強制的に移動させられながら「私たち記者3人は10数人に包囲されて、押されて……」などと訴えていた。

(中国中央ラジオテレビ総局(CMG)の記者・許夢哲氏が、現場取材中に大勢の警察によって囲まれ、強制的に排除されるシーン)

周知のとおり、CCTVもCMGも、中国の体制側のメディアである。しかし、そうであっても、取材や報道にはこのような暴力的な規制を受けるのである。

同日夜、中国ジャーナリスト協会(中華全国新聞工作者協会)は「合法的な報道は記者の権利である。当局はメディア記者の取材を、簡単に、そして暴力的に妨害すべきではない」として、記者が受けた取材妨害に対して抗議する声明を発表した。

ただしこの声明は、翌日午前にはウェブサイトから削除されている。

実際、ジャーナリスト(特に外国人ジャーナリスト)への嫌がらせは、中国ではよくあることだ。しかし中共当局は、それに関して認めたことはない。

また今回のように、中国ジャーナリスト協会が抗議表明を出すことは、過去になかったことである。

在米の時事評論家である袁斌氏は「中国ジャーナリスト協会が、このような声明を出したことは、中国の新聞界にとっての悲哀と恥辱だ」と評した。

他の自由主義国ではありえない中国の実態に対して、中国メディアが抗議を意を示したことは、確かにそれ自体が「悲哀」であり、世界に向けてあえて自国の「恥辱」を晒したにも等しい。

国際ジャーナリストNGOの国境なき記者団(RSF)は、昨年の「世界報道自由度ランキング」において、中国共産党統治下の中国を、北朝鮮に次いで「世界で2番目に自由でない国」とランク付けしている。

また中国は、最も多くのジャーナリストを監禁している国でもある。米国の非営利団体(NPO)ジャーナリスト保護委員会が公表した報告書によれば、中国では昨年、44人のジャーナリストが監禁されている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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