【単独インタビュー】中国から外資脱走、人民も「裏の手」で資産移転=経済ジャーナリスト田村秀男氏

2024/05/21
更新: 2024/05/28

中国経済の失速が顕在化するなか、外資企業の国外「脱出」が続いている。外資企業による中国への直接投資は30年ぶりの低水準となり、実に8割減となった。米マイクロソフトが中国国内の従業員に対し外国への転勤を検討するよう求めるなど、人的資源の撤退も続いている。

では、中国当局が発表した経済データは信じるに値するのか。中国人や中国資本が大挙して国外に出ている背景にあるのはどのような問題か。中国経済に対する分析で定評のある経済ジャーナリストの田村秀男氏に見解を伺った。

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――コロナ禍以降、外資企業の中国撤退が続いている。

これは非常に大きい問題であり、直接投資ベースで見ると、実に8割減だ。昨年から続くトレンドに変化が見られないため、深刻な影響が出る。外資が投資を減らせば外国人が減り、高級マンションが売れ残る。中国では中級クラスや低級クラスのマンション含めて、大量にマンションが建設されている。これからは幽霊マンションが全国で問題になるだろう。しかし統計では、人が住まない幽霊ビルズになっても投資にカウントされるため、見かけ上のGDPが増える。

――外資が撤退すれば、中国の外貨準備高にも影響するのではないか。

一番の問題は、新たに外貨が入ってこないということだ。外資の引き上げと言うものの、様々な妨害工作もあるそうだ。巨額の資本の引上げは許されないと思う。問題は、新たに入ってくる外貨がないと言うことだ。

――中国当局は統計データを改ざんしていると言われている。

全て改ざんしているわけではないと思う。例えば、物価上昇率にはあまり改ざんの形跡は見られない。中国の統計で一番の問題なのは、やはりGDP統計だ。特に固定資産投資という、一番肝心な部分が非常に不明瞭である。それは、鉛筆を舐めて書き込んだとしか思いようがない。3種類の統計があって、数字が全部違うというのはおかしい。中国当局は各種統計の辻褄を合わせているのだ。

――李克強元首相は政府が発表する統計データを信用せず、自身の経験に基づく「李克強指数」を考案した。

2007年、李克強が遼寧省の幹部だったときのエピソードだ。訪ねてきたアメリカ大使は、中国の統計部門は鉛筆を舐めて人為的に数字を作っているため、中国のGDP統計は信用ならないと批判した。そこで、李克強は「電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資残高」に着目した。なぜかといえば、それらのデータには伝票による裏付けがあり、ごまかしが効かないためだ。それらのデータを参考に中国の経済を見れば良いということが有名になり、2010年にイギリスの「エコノミスト」紙が「李克強指数」と名付けた。

しかし、首相に就任してからは言葉を慎むようになった。習近平がトップの座にいるため、統計データが信用ならないと言ったらおしまいだ。国務院総理は、あくまでも党の総書記の下にいるのだ。

――中国経済の失速は、当局が進める「人民元の国際化」にも悪影響は出るのか。

人民元の購買力とは言うものの、そもそも人民元は国外で自由に使えず、持ち出しが容易ではない。対外的な投資、巨額の投資をする場合には、中央政府の認可が必要となる。

個人ベースでの持ち出し、例えば東京でマンション買う場合には、1人当たり年間5万ドルまでと規定されている。そのため、中国人が東京で高級マンション買う場合には、「裏の手」を使う。つまり抜け道を利用するわけだ。

――どのような抜け道か。

一番大きなお金を動かせるのは地下銀行だ。例えば、日本で1億円のまとまったキャッシュが必要になったとする。利用者はまず、地下銀行に2%ほどの手数料を支払う。中国本土で人民元のキャッシュを用意して地下銀行に入金すれば、日本でそのまま円のキャッシュを受け取ることができる。地下銀行は送金を帳簿上で行い、自ら相殺する。

――チャイナマネーの流入が止まらない。この流れはいつまで続くか。

実態をよく掴めない部分はあるが、中国で不動産バブルが崩壊してから、富裕層は日本やシンガポールなど外国で不動産投資をするようになった。しかし、自国の足元がおぼつかないから、いずれ投資の原資もなくなるのではないか。

中国の不動産市場が活況だったときは、その信用を使って東京などの不動産に投資し、儲けてきた。ところが、本国の不動産価格が下落し、売却しようにも価値が大幅に低下した今、国外投資にも相当ブレーキがかかっているものと思われる。

(了)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。